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《あなたは大丈夫》 ACIDMANが一貫して歌い届け続ける渾身のメッセージについて。

【10/30(月) ACIDMAN @ Zepp Tokyo】

「This is ACIDMAN」。これぞ、ACIDMAN。

2021年10月、結成25周年・メジャーデビュー20周年のアニバーサリーイヤーに突入したことを記念して開催されたライブ「This is ACIDMAN」は、その後、年に一度の恒例企画となり、今年で3度目の開催となった。

そのタイトルが象徴するように、このライブでは、ACIDMANの真髄を凝縮した特別なセットリストが展開される。歴代の代表曲たちが次々と披露された今回のライブを観て改めて感じたのは、彼らがリスナーに向けて送り届けるメッセージの揺るぎない一貫性であった。


まず、全編を通して、緻密にして豊かなアンサンブルと圧巻のスケールを誇る3人のロックサウンドに、何度も何度も心を熱くさせられた。生命の躍動を伝える激烈なロックナンバーがあれば、人類の悠久の旅路を想起させる珠玉のバラード、また、まるでこの星の起源を巡るような深淵にして大長編のインストナンバーもある。改めて、3ピースバンドの表現の可能性を果敢に広げ続けてきた彼らの功績の大きさを思う。

そして、そのロックサウンドに乗せて歌い届けられるのは、デビュー当初から全くブレることのない大木伸夫の哲学や価値観、信念を宿した切実な言葉たちだ。

ACIDMANは、一貫して、生命の輝きについて真摯に歌い続けてきた。そして同時に、その終着点にあたる死から決して目を逸らすことはしなかった。人は誰しも、いつか必ず死ぬ。それは悲しいことではあるけれど、その切なく儚い真実を正しく受け入れた時に、限りある命はさらなる輝きを放つ。

今この瞬間をせいいっぱい生きよう。残された人生を、悔いを残すことなく、自分の旗を掲げて生きていこう。各楽曲に込められたそうした眩いメッセージは、たとえどれだけ年数が経ったとしても、決してその輝きと効力を失うことはない。

いつの日か私も君も終わってゆくから
残された日の全て心を添えておこう
灯る火の果てに

"季節の灯"

世界が終わって  全てが消えて
それでも僕ら  繋がってるだろう
そうやって思える今日の光を
繋いでく  今日の火を

"式日"


またACIDMANは、私たちが生きる世界における不条理から目を逸らすことなく、むしろ、変わるべき・変えていくべき現実とまっすぐに対峙しながら、未だ見ぬ未来へ向けたポジティブなメッセージを力強く発信し続けているバンドである。

この世界には分断や争いが絶えないけれど、それでも彼らは、それぞれの思想やバックグラウンドの違いを越えて、私たちが真に目指すべき理想の景色があることを懸命に伝え続けている。だからこそ私たちは、昨日よりも今日が、今日よりも明日がよいものになると信じながら、この世界を力強く生きていくことができる。

太陽を手に乗せ
最後の鉄を溶かし
老木の声に合わせ
ほんの少し罪を混ぜて

僕らは信じていた
いつだって信じていた
手を伸ばせばすぐに
届きそうなあの光を
光を

その手離さないで
遠くまで  僕ら行こう

"アルケミスト"

絶え間なく流る風
迫る夜に走る声
抱いた一つを手に
未来を描いた

"ある証明"

今回のライブで特に強く印象に残ったのが、これまでに数え切れないほど披露されてきた代表的なライブアンセム"FREE STAR"だった。《月が点火した最後の夜/戦争なんて忘れそうな/ただ綺麗で美しくて》における《戦争なんて》という一節の歌い回しにいつも以上に力がこもっていて、それは、まさに今、海の向こうで悲劇が続いている現実に対する深い憤りの表れだったのだと思う。


中盤のMCで、大木はいつものように、自らが子供の頃からずっと魅了され続けている宇宙について語った。彼いわく、宇宙には、3000億個の恒星の集まりである銀河が2兆個も存在するという。それはもはや私たちの想像を絶するほどのスケールではあるけれど、それでも、この広大な宇宙の中で《君》の存在は唯一無二であり、それはとても奇跡的なことである。

彼が語った宇宙論を要約するとこうなるが、それはまさに、歴代のACIDMANの楽曲たちが帯びるメッセージそのものである。大木は、一人ひとりの《君》が生まれた意味に光を当てるための生命讃歌を、キャリア初期から一貫して歌い続けており、その表現姿勢は現在に至るまで一切ブレてはいない。

その世界の雨は透明で
その未来の果てを祈っている
生まれた意味の一粒も
無くさぬ様に祈っている

"スロウレイン"

一粒の光の欠片
僕らはそこから
生まれたはずだろう
過去が増える程  未来は消えて行く
幼き君も  やがて気付くだろう
胸を焦がす程  求めてしまうだろう
儚く  強き  光を

"EVERLIGHT"

もっと笑ったっていいんだ
もっと泣いたっていいんだ
どんなに汚れていたって
その手で抱きしめるんだ
最初に聴こえてきた
あの音は生命の
たった一つ  君の音だ

"夜のために"


アンコールの最後に披露されたのは、メジャー1stアルバム『創』に収録されている至高のライブアンセム"Your Song"だ。ラスト、何度も繰り返させる《You're okay》のコール&レスポンス。ステージとフロアの境界線が溶けていくかのような熱烈なライブコミュニケーションに合わせて、ステージ上のスクリーンには、その英語詞の日本語訳《あなたは大丈夫》という言葉が映し出される。今回のライブ全体を通して各楽曲が紡いできた一つひとつのメッセージが、最後の最後に、このシンプルな肯定の言葉へと繋がっていく展開は本当に感動的だった。

どれだけ時が経っても、決して変わらないもの。今回、四半世紀以上にわたり一貫し続けているACIDMANの表現の核心に改めて触れたことで、彼らに対する信頼はより深く、揺るぎないものになった。大木が、ライブ中に「まだまだずっと歌い続けていきたい。」と告げていたように、3人の音楽活動はこれからも変わらず続いていくし、これは推測に過ぎないが、彼らの表現の軸は、これから先も決して揺らぐことはないと思う。そして、《あなたは大丈夫》というメッセージを届け続けていく彼らの存在は、これからも、たくさんの人たちの救いになっていくはず。改めてそう強く確信させてくれた本当に素晴らしいライブだった。



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