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他人と自分

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人生に乾杯 29(ブログを付け続けるのは難しい)

人生に乾杯 29(ブログを付け続けるのは難しい)

ブログを付けることは難しい。付け続けることはもっと難しい。このブログも、前回3月29日からひと月近く経ってしまった。

どうしたら続くかと考え、一橋大学名誉教授の野口悠紀雄さんの本「書くことについて」を買い込み勉強してみるが、IT音痴の自分にはなかなか理解できない。なにせ元官僚、学生時代からコンピュータをいじっていた人が、頭の中に書物用のデータベースを作る解説をしているのだ。

4月14日の受診日

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人生に乾杯 28(治療は次のフェーズへ)

人生に乾杯 28(治療は次のフェーズへ)

「さすがシンガポール、これは日本よりも詳しいかも」とは主治医の田部井医師の言葉。2月3日に「遺伝子のxxxが陽性だから薬が効く体質」と言われたが、「xxx」が聞き取れずしばらく気になっていたところ、3月17日の診察で聞き直した結果、冒頭のように言われたのだ。「いや〜、シンガポールじゃなくて米国なんだけど」とは僕の内なる声。

医師は、写真上オレンジ色部分6行目の「EGFR vIII (+)」という

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人生に乾杯 25(「運が悪い」?)

人生に乾杯 25(「運が悪い」?)

少し前、ある腫瘍専門医が自身のがん体験記を記していた。ご本人は「なぜ自分が?」とか「自分は運が悪かった」と思ったと言う。記事もこの言葉を見出しに取っていた。偽らざる心境だと思う。

本文を読みながら、新聞記者をしていた頃のある場面がパッと思い浮かんだ。20年以上前、内勤の整理記者を経験した時の出来事だ。朝刊番になると最終降版は日付が変わる午前1時ごろなので、そこから小1時間、当番デスク(当時は編集

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人生に乾杯 23(田部井先生のこと)

人生に乾杯 23(田部井先生のこと)

脳腫瘍の主治医は田部井勇助先生。国際医療福祉大学三田病院の脳神経外科医だ。1月6日は今年始めの診察。無事に診断を終え、病棟2階の外来化学療法室という専用室でアバスチン(分子標的薬)の点滴を待っていると、同じ病棟1階にオフィスを持つ田部井先生が駆け込んできた。三田病院は大きいのだ。

ソファに座る僕のところへ駆け寄ってきて「すみません。さっきの話なんですけど…」と切り出した。「さっきの話」で思い浮か

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人生に乾杯 22(腫瘍持ちxコロナx発信力)

人生に乾杯 22(腫瘍持ちxコロナx発信力)

医者の山井大輔から数か月ぶりに電話をもらった。週末の夕方6時ごろで、すでに酔っ払っていた。「今日は半ドンだったんだよ」。この会話から、「ドン」がオランダ語のDay(「デイ」)から来ていること(本当はDagが正しい)、返す自分は「全(半)舷」という言葉が記者時代にあったこと、意味は似ていても海軍用語であること、などを話した。しかし、大輔は話の筋がどうにも収まらない。なにせ酔っているから話題があちこち

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人生に乾杯 21(堅い殻と共感力)

人生に乾杯 21(堅い殻と共感力)

妻から「あなた最近、人への共感力が足りないよ」と言われ、ハッとした。9月の退院後、薄々気づいていたことを言い当てられしまった。心に重石があることは分かっていた。脳腫瘍のこと、肺に転移したがんのこと、頭に着けているオプチューンのこと。知らず知らず、すべてが自分を暗い気持ちにさせていた。日頃は、家族にできるだけ普通に接しているつもりでも妻や子どもたちは見逃さなかった。今回も「言われちゃった…」というの

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