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企業ブランディングの会社が、自分たちの「行動指針」をつくってみた

セイタロウデザインでクリエイティブディレクターをしている原田です。今回は、弊社で「行動指針」をつくったお話をさせていだだきます。

企業ブランディングを多く手がけるセイタロウデザインでは、これまで数々の企業理念やMission、Value、そして行動指針の開発をお手伝いしてきました。

どれだけブランドをきちんと整理しても、社員が同じ価値観を共有し、一定の基準を持って行動できるようになっていなければ、そのブランドはすぐに崩壊してしまいます。ですから、理念やVisionに合わせて行動指針を設定するということは、ブランディング案件では、ほぼマストな要件であると言えるでしょう。

ところが、私たちの会社は創業から12年が経ったにもかかわらず、実はこれまで、一度として自社の行動指針を定めたことはありませんでした。まさに「紺谷の白袴」というやつです。

ひとつ言い訳をさせてもらえば、セイタロウデザインではこれまで、多い時でも社員が十数名しかおらず、しかもみんな年齢なども近かったこともあり、行動指針がなくても、基本的な価値観を共有できていたということがあります。

しかし近年、会社の支社を金沢や海外につくったり、社員の年齢層が広がってきたりしたことで、少しずつ状況が変わってきました。そんな中で発生したのが、このコロナ禍です。弊社でも、リモートでの業務が余儀なくされ、社員全員が同じ空間を共有することができなくなってしまいました。

正直なところ、リモートであっても業務はそこそこ回せます。けれど、この状況が続けばやがて、十数年に渡って少しずつ築き上げてきた“セイタロウデザインらしさ”というものが失われてしまうのではないか。そんな危機感から、私たちは、今こそ自分たちの思想や価値観をきちんと言語化して、社員全員と共有しあう必要があるという結論に至りました。

さて、そんなわけで、12期目にしてようやく、セイタロウデザインの行動指針が完成しました。本来、行動指針とは、その会社で働く人々が共有できればそれでよく、外部の方々に公開する必要はないのかもしれません。けれど、創ったからには、ちょっと自慢したい。自慢させていただきたい。ということで、私たちの行動の基準となる9つの項目を紹介しつつ、その項目が生まれた背景を簡単に解説していきます。

セイタロウデザインの9つの行動指針

[1]領域横断
本当はやるべきだけど、できないから、やったことがないから提案しない。その選択は、私たちにはありません。メンバーひとり一人が、複数のクリエイティブ領域をカバーできるよう、好奇心に素直に従い、幅広く学び、挑戦しつづけることで、既存の枠組みにとらわれない提案を可能にします。

▼セイタロウデザインの制作領域は多岐に渡ります。グラフィックやWeb、Movie、プロダクト、建築などのデザイン領域から、企業の理念やキャッチコピーといった言語領域まで。それは、あらゆるコミュニケーションを点で打つのではなく、線でつないでいくことが、本当のブランディングだと考えているからです。ですので、ひとりのクリエイターが複数の領域をカバーできるということは、私たちの会社を特徴づける生命線でもあります。

[2]社会性と時代性
すべてのクライアントにとって、対等なパートナーであることを大切にしています。だから、クリエイターやアーティストであると同時に、ちゃんとしたビジネスパーソンでありたい。クライアントと同じ情報、同じ感覚、同じ言語を共有し、その上でクリエイティブな視点と感性で、時代のちょっと先を見据えた解答を提示していく。それが、私たちの役割です。

▼経営数字を読み解けるクリエイターって、少ない。そう感じています。けれど、クライアントの経営戦略を一緒につくっていけるパートナーになるためには、ビジネス上の共通言語で会話ができるようにならなければいけません。クリエイティブの最新の潮流を追うのはもちろんですが、新聞などの情報もきちんとインプットしておくというのも、会社として常日頃心懸けていることです。

[3]本質思考
クライアントから提供された情報だからといって鵜呑みにしない。与えられた指示であっても、一度立ち止まって考えてみる。「なぜ」という単純な問いこそが、ものごとの本質につながる唯一の入口です。「なぜ、なぜ、なぜ」と問い続け、やがて一度の「なぜ」で本質に辿り着けるようになれば、その思考はもう自分自身の立派な武器になっています。

▼「本質思考を持て」といきなり言われて、本質が何かを見極められなければ難しい。結局、それを見極められるようになるためには、いつも「なぜ」という疑問符を頭において、思考を止めない癖をつけるしかないかなと思っています。

[4]創造力
これだけは誰にも負けないという分野を、ひとつ。領域を横断するということは、決して器用貧乏になるということではありません。イメージは文房具のコンパス。自分の強みを軸として、そこを中心にできることの円を拡げていく。軸がしっかりと深く刺されば刺さるほど、描ける円は、より大きく、より美しく拡がっていきます。

▼一見、「領域横断」という項目と真逆に見えるでしょうか。けれど、これまでの経験上、絶対に負けない分野を持っている人の方が、そこからの応用で、より多くの分野で活躍できていると感じています。ひとつの分野をモノにするということは、あらゆる物事に共通する「本質を見つける」ということなのかもしれません。

[5]体験主義
とかく、インターネットでなんでも調べられてしまう時代だからこそ。実際に現場に赴き、体験してみることの価値を大切にしたいと考えています。頭ではなく、身体で理解する。その理解の深さの違いが、誰かの心を動かすクリエイティブにつながると信じています。

▼あらゆる情報に簡単にアクセスできるようになった今、「知っている」ということだけでは、他の人と差をつけるアドバンテージには成り得ません。実際に体験してみて、自分が何を感じたか、そこにどんな発見があったか。それを語れることが大きな価値です。ひとつの例として、弊社代表の山崎は最近、Uber Eatsの配達員にチャレンジしていました。

[6]文化人
アートや伝統工芸、文芸、音楽、あるいはポップカルチャーでも。時代や国境を越えて残ってきたもの、拡がってきたものは、必ず人の心を動かす何かを持っています。時代や経済の中で消費しつくされてしまわないクリエイティブ。そのヒントは、さまざまなカルチャーの中にこそ埋まっています。

▼セイタロウデザインでは、会社の会議室を生け花の先生に貸し出すことで、一般のレッスンの生徒さんに混ざって社員が生け花を習えるようにしています。けれど、別に伝統芸能でなくてもいいんです。とにかく、どんなジャンルでもいいから、カルチャーに感動したことがあり、その価値を信じている人と一緒に働きたいと思っています。

[7]他者視点
想像力をフル回転させて、自分ではない誰かになりきってみる。時には子どもに、時には老人に、そして時には、同じチームの誰かに。他者の気持ちになり、その視点で自分の行動を見ることで、新しい気づきが生まれます。その気づきは、クリエイティブの新しい発想にも、チームをひとつにつなぐことにもつながります。

▼この項目、最初は「チームワーク」という見出しでした。けれど、なんだか“仲間内の馴れ合い”のような感じがする気がして「他者視点」に変えました。誰かの目線に立って物事を考えてみるというのはクリエイティブの基本。それを日常レベルまで落とし込み実践できれば、チームの誰かの悩みや困りごとにも、自然と気が付けるようになるのかなと思っています。

[8]主体性
自分で考えたことを、自分で形にして、自分だけではできない大きさで世の中に発信していける。そんなクリエイティブのおもしろさを余すこと無く享受するためには、常に自分自身が当事者であることが重要です。当事者だから感じる苦労も、当事者だからこそのプレッシャーも、すべては当事者だけが味わえる達成感のために。

▼企画書をつくるのって、結構面倒くさい。プレゼンって、すごく緊張する。でも、自分がフロントに立って、それらをやり終えた時の充実感は、単なるプロジェクトメンバーの一人として働いていた時とはまったく違う。それを知っているからこそ、若い社員であっても、積極的にクライアントの前に出て、ぜひ大きな修羅場を経験してもらいたいと考えています。

[9]楽しむ力
楽しいことを、ちゃんと楽しむ。大変なことも、せっせと楽しむ。頭にくることも、なにくそと楽しむ。わけがわからないを楽しむ。できなかったを楽しむ。できるようになったを楽しむ。とにかくなんでも、楽しんでみる。できれば、誰かを楽しませてみる。本当に辛いときは、ちゃんと言う。

▼楽しいと思って創らなければ、決していいクリエイティブなんかできません。けれど、「苦しい」が多い仕事があるのも確か。だからこそ、どんな物事の中からも「楽しいポイント」を見つけ出す能力が重要となります。もともと、超ネガティブ思考の私でも、最近はいろいろと楽しめるようになっているので、この能力って、後天的に鍛えられるものだと思います。



ということで、以上、セイタロウデザインの9つの行動指針でした。
今回、行動指針をつくってみたことで、社員教育という視点よりも、
自分たちの価値の棚卸しができたことの方が良かった点ではないかなと思っています。
もし、会社の方向性などに迷った時には、いきなりMissionやVisionという大上段の価値を見直すのではなく、自分たちの実情にあった行動指針をひとつずつ考えてみるというのも、進むべき方向を見つけるための、ひとつの方法として面白いかなと思います。

〈セイタロウデザインのHPはこちらから〉

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