垣花つや子(かきのはなつやこ)

かきのはなつやこの下書き置き場

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編集者 垣花つや子の仕事の一部

こんにちは、フリーランスの編集者・ライターの垣花つや子(かきのはな・つやこ)です。 これまで携わってきた記事をまとめてみました。どれもよい記事なので、よければのぞいていただけますと幸いです。 記事企画の立案・取材・編集 ▲森田かずよさんとキム・ウォニョンさんの対談は韓国で取材を実施。撮影も担当しました。 連載企画の立案・編集 ▲「“自分らしく生きる”を支えるしごと ー介護の世界をたずねてー」は連載全体の企画立案とデスクチェック、一部取材・執筆・編集を担当しています。

    • ある孫の日記 その7

      「高野豆腐の煮物があるからお昼はこちらで食べませんか?」 「⚪︎日か⚪︎日行ってもいい?」とこちらから連絡を入れてやりとりしていたら毎度お馴染み高野豆腐の誘惑。よろこんでのる。小雨が降っていたのであたらしいレインコートとトレッキングシューズを履いて祖母の家へ。なんだかここ1ヶ月半くらい身体がいつもより疲れやすく、きもちもどんより&ぴりぴり&しくしくの波があり、外出の背中を押すきっかけとしてあたらしいレインコートを着た。そんなに雨は降っていなくて早々と手で持つことになった。

      • ある孫の日記 その6

        長年「楽老」と名のつく市営住宅に住んでいたことをふと思い出しながら、祖母の家に向かった。会うのは20日ぶり、家にいくのは約2ヶ月ぶり。もっと早く行きたかったけれど想定よりも長めに体調を崩していて空いてしまった。 最寄り駅から25分くらいかけて歩き祖母の家へ。急な角度の坂道があって、へろへろになりながら辿りついてお昼ご飯。ウィンナー、はんぺん、にんじん、じゃがいも、たまねぎ、ふき、鶏肉など他にもいろんなものが入った煮物とさばの西京焼きと白米。 「煮物には高野豆腐もはいってる

        • ある孫の日記 その5

          坂口恭平さん『自分の薬をつくる』を読んだ感想を祖母がぼそっとつぶやく。そうだね、と返事をするけれど、話は続かない。というよりは、別の出来事が起こって、これまでの話題がぱたんと閉じてしまう。 この日は、わたしの住む家に、祖母と父と母が来た。わたしにとっての子、父や母にとっての孫、祖母にとってのひ孫に会いにきた。なので、子になにやら動きがあると、そっちに関心が向く。一度閉じた話題を再開するにはページが重くて、そうはならない。途中から祖母はソファで寝ていた。 この日この場でこの

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        • ある孫の日記
          7本

        記事

          ある孫の日記 その4

          低温でストレスが積み重なっていく日々だった。おそらくもうすぐ脱する。テンポよく駆け足の速度でしごとをするのが得意じゃない、というか苦手だ。心臓の音がどんどん速くなって、呼吸が浅くなって、視野が狭くなって、身体が硬くなって、思考が偏って、そわそわして、ハイになって、急にやる気が出て、ばたっと意欲を失う。繰り返し経験してきたこともあって、そうなりかけてたらまあ気づくし、意欲を失っても自分を責めることは無くなった。けれど駆け足でしごとをしている状態のときの自分の暮らしぶりは望んでい

          ある孫の日記 その3

          「寝坊したから13時頃に着くよ」「いいよー待ってるよ」 今日のお昼は、穴子、しじみの味噌汁、はんぺんや大根、トマト、ブロッコリーなどぶちこまれている煮物。あと水分多めの白米。 「おいしい?」祖母は、こちらがご飯を口に運ぶまえに聞いてくる。そして、こちらが「おいしい」と伝えると、とびきりの笑顔をこちらに向ける。そしてしばらくすると、「おいしい?」と聞いてくる、お茶を飲むたびに「おいしい?」と聞いてくる。穴子がおいしかったので、ごはんをおかわりしたら、大喜びしていた。 坂上

          ある孫の日記 その2

          「そこにお金を使う余裕がない、1冊2000円くらいするでしょう」 祖母が家にきた。私にとっての父と母と一緒に。栄養バランスを著しく欠いたお昼を一緒に食べた。先週祖母と食べたお昼と大違い。 昨日読み返していた土門蘭さんの『死ぬまで生きる日記』がテーブルに置いてあったので、「これ、いい本だよ」と手渡す。 「今読んでるの?」 「昨日読み返してた」 「読んでいいの?」 「うん」 ソファに座り、眼鏡を外し、すぐに読みはじめる。読みながら「健康な人は死にたいと思わないっていう人い

          ある孫の日記 その1

          「これ、美味しいね」 「ほんとに?よかった、うれしい」と満面の笑みを浮かべる祖母。祖母の家で一緒にお昼をたべた。今日は鍋、具材は、にんじん、たまねぎ、しいたけ、いとこんにゃく、ごぼう、豚肉、高野豆腐。 「(私の名前)は高野豆腐好きだもんね」。わたしが遊びにいくと必ず高野豆腐が入ったなにかしらの料理が出てくる。 「梅干しが入ったおにぎりいる?」「梅が苦手だからいらない」「そうか梅は嫌いなのか」「うん」「あたたかいお茶はいる?」「お茶はすき」「お茶おいしいよね」 そんなやり

          なぜペンネームを名乗るのか

          「垣花つや子」はペンネームだ。なぜペンネームを名乗るのか記す。この名前は、わたしにとって大切な人たちの名前をベースにつくった。その人たちは、すでに亡くなっている。ある人は事故死、ある人は自死だった。 自分自身に余裕がなく、なんとか働いていた時期に、大切な人の死が突然やってきた。後悔がたくさんあった。当時混乱してしばらく働けなくなったし、あのときこうしていれば、ああしていればというきもちが、ぐつぐつと沸き上がった。数年が経つ今でもふと揺らいでしまうことがある。 自死を選ばせ

          なぜペンネームを名乗るのか

          新しい住まいは、ほっとする感覚がない

          引越しから19日経つ。なんかしらの予定で外に出て、あたらしい住まいに帰ってくる。ここは自分の住まいなのだけれど、住み慣れたあの住まいに帰ったときのほっとする感覚はほとんどない。 そりゃあ住み慣れていない地域だし、間取りだし、ドアだし、ソファだし、どこに洗濯干すのがよさそうか迷うし、どこの窓を開けとくといい感じかわからないし、ゴミ出しの日程も毎回調べなきゃだし、そりゃあそうだ。 これまでの自分は住み慣れた家のどこにほっとしていたのだろう。 最寄り駅からセブンによって緑豊か

          新しい住まいは、ほっとする感覚がない

          自分にとって大切な話を、いつ誰に語るのか

          ある人とはじめて対面してから18日が経った。 いまの自分が何を感じているのか考えているのか悩んでいるのか立ち止まる意欲はありつつ、目の前の出来事と環境変化量の多さによって、積極的な振り返りはあと回しにしてしまっている。 ソファでぼーっとyoutubeを眺める、ラジオを聴く、睡眠、足りない備品をAmazonで探す、クイックルワイパーで掃除をする、対角線の窓を開けて換気をする、セブンイレブンで買ったお弁当を食べる、エアコンもつけたりけしたり湿気を気にしたり、本棚のにおいを気に

          自分にとって大切な話を、いつ誰に語るのか

          だらだらすることに身を任せて、そこで芽が出たことに水をやる

          祖母とお昼をたべた。高野豆腐がすきだと前から言っていたので、高野豆腐の煮物をつくってくれた。あとは穴子ともち米入りのご飯、味噌汁などなど。 TVを眺めながら、ぽつぽつお喋りする。毎朝、新聞の番組表を眺めて気になる番組には印をつけているらしい。印をつけた番組を一緒にみる。よこはまにあるこどもホスピスについての番組だった。 お茶を飲みちいさいシュークリームを食べる。お茶はいくつかの茶葉をブレンドしてるらしい。缶に入れてしゃかしゃかふって混ぜてるとのこと。 パソコンをひらいて

          だらだらすることに身を任せて、そこで芽が出たことに水をやる

          休みたいのに自分から休みたいと言えなかった時期

          ここで日記を書くのがしばらく空いてしまった。けどそこに対して、すぐ飽きちゃうなこいつ(自分)とかそういうきもちはない。むしろ自分のペースでいい感じじゃないのわたくしったらと思っている。 出張取材に行ったり、原稿の打ち合わせをしたり、パートナーの友人が家に来たり、日帰り出張のはずが帰れなくなったり、原稿の打ち合わせをしたり、定例の打ち合わせにいくつか出たり、構成案を確認したり、仕事の契約まわりの確認をしたり、ずっと真夜中でいいのに。のライブにいって余韻に浸りながらのんだり、そ

          休みたいのに自分から休みたいと言えなかった時期

          知らない人は通過する写真

          午前中打ち合わせ、ご飯、1時間お昼寝、取材依頼と取材準備、打ち合わせ、細々としたタスク、さんぽなどなど。 写真が届く。数ヶ月前にあそんだときのもの。数枚。しばらく経ってから届くのも、限られた枚数なのも、しみじみうれしい。撮られた瞬間をほんのり思い出せる。どんな表情で撮影者が撮っていたのか、すこしにやにやしてた気がする。どんな写りの写真かじゃなくて、誰とどんなときに撮った写真かの味わいうれしい。その文脈や関係性を知らない人からすると通過してしまう写真かもしれないけれど、自分の

          知らない人は通過する写真

          ふとはじまる雑談

          朝ごはんはパン、はじめて使う路線で最寄りの新幹線駅へ。日帰り出張。普段使わない道のりなので若干そわそわした。 新幹線で一緒に出張に行く人とお喋りしつつ、仕事しつつ、トッポ食べてつつ、お喋りしつつ新大阪。そこからさらに移動して、とある「学生街」へ。自分が経験していない暮らしの気配がした。まだ言葉には出てこない。キャンパス内はサークルや部活勧誘のブースが賑わっていて、この光景が存在することに「うおお」となる。 その前には打ち合わせ。明るすぎず、閉じすぎず、ほっと一息つける場所

          力みなく一緒に過ごす

          祖母の家に行き一緒にお昼を食べた。祖母のつくる高野豆腐がすきで、今日も用意していてくれた。ご飯食べつつ、読んでいる本の話やら、仕事の話やら、選挙の話やら、旅行の話やらする。途中で昼寝もする。それぞれ黙って本を読んだり、わたしは仕事をしたり。気楽に一緒に過ごす。 お茶を飲んでいたら、おもむろに机にピザポテトが置かれた。 「それすきって、〇〇ちゃん(わたしの母のこと)に聴いたから」 「ピザポテト、すきすきありがとう」 最近食べていなかったので夢中で食べ切った。 「それちょ