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たまに恋しい母の味

私の母は、あまり料理が得意ではない。
週2はカレー、残りはだいたい野菜炒め、みたいな献立で育ってきた。

学生の時、毎朝6時頃に出発する私は朝ご飯を欠かさないことを習慣にしていて、毎朝母が出してくれる朝食を食べていた。

毎日、ご飯、納豆、みそ汁。昨日も一昨日も、そしてたぶん明日も明後日も。
いつしか嫌気が差した私は、トーストを食べるのが習慣に変わった。

お弁当を作ってくれるのは、運動会や遠足などのイベントの時だけ。
学生の時は、初めの1か月は作ってくれていたけど、いつしか学食で食べるのが日常になった。

そのくらいうちの母は料理が得意ではない。


社会人になって、上京して一人暮らしをするようになった。
ずっと実家暮らしだったが、自炊はそこそこできた。たぶん向いているのだと思う。

仕事が忙しくなってくると、自炊をする時間がなくなりコンビニ弁当を食べることが多くなった。

朝はコンビニのパン、昼は職場で頼む冷えた弁当、晩はコンビニの弁当。
そんな生活が2年くらい続いた。

「あ~実家で温かいメシ食いたいなぁ」そんなことをしばしば考えるようになったとき。初めに思い浮かんだのが、ほぼ毎日食べていた野菜炒めだった。塩コショウか、焼き肉のタレで味付けたやつ。なんの変哲もないあの母の野菜炒め。

不思議な気持ちだった。家にいたときは毎日でてきて、美味い!と感動することはなかったし、なんなら「もっと手が込んだやつ作ってよ」くらい思っていたのに、恋しくなるなんて。

そういうもんなのかなぁ。

実家に帰ったときに、この話をすると母は笑っていた。
「うちの家族は野菜炒めばっかり食べとるけん、あんまりよかもんば食べすぎよったら恋しくなるとやろ」と。確かに一理ある。


転職をして時間ができたので、自炊の習慣を再開してみた。初めに作ったのはカレー。それから色々な「手が込んだもの」を色々作ってみた。

ハンバーグ、餃子、キーマカレー、肉じゃが、他にも色々。

自炊は楽しい。家族や、他の人にも食べてもらうともっと楽しいし、嬉しい。

そんな私の得意料理は、「野菜炒め」だ。

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