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読書メモ:プラスティックは否が応もなく / プラスチック粒子汚染(PPP)

*ゴンタール・サンジェ(2021)『プラスチックと歩む』原書房、105-112。

プラスチックは大量に生産され、大量に消費され、廃棄されていく。廃棄されたプラスチックはゴミとなり、自然に小さく砕け、空気中に浮遊したり、海中で漂ったり、環境中に存在する「極めて小さいプラスチック」となる。

 極めて小さくなったプラスチックは、あるということが、目でもみえず、身体の皮膚でも感じられない。しかし、大量になると、著者は「細かいプラスチックの粒子で部屋がくもっている」ことにも気がつき、研究する。

プラスチックは生産が始まると、1950年代以降、生産量が急速に増加し、2020年には総量にして90億トン以上のプラスチックが生産されている。このまま行けば、2050年までに生産量は300億トンを越えるだろう。(86頁)

もう一つの問題は、プラスチックの生産を止めたとしても、今までに製造されたプラスチックはすべて数世紀のわたって地球上に残ることが分かっている。残念ながら、子孫へ最も確実に残る遺産である。(86頁)

プラスチックは分解されて人々の中に人知れず侵入してくる。プラスチック粒子汚染(PPP)である。

プラスチック粒子汚染(plastic particle pollution)は想像以上に進んでおり、人間の血液からもマイクロプラスチックが発見されている。*

*Heather A. Lesliea, Martin, J. M. van Velzen, Sicco H. Brandsma, A. Dick Vethaak, Juan J. Garcia-Vallejo, Marja H. Lamoree, Discovery and quantification of plastic particle pollution in human blood, Environment International, March 2022.

マイクロプラスチックの問題が初めて顕在化したのは、2009年である。マイクロプラスチックは衣類、車のタイヤなど生活の中から出てくる。(97-98頁)

このようなマイクロプラスチックのマイクロ粒子は空気に乗って移動し、海や陸、あらゆる所に分散していく。

海では、海鮮商品に入り込み、人々の身体に侵入する。陸では、食用の植物や動物の中に入り込み、人々の身体に侵入する。これは間断なく起こる。

さらに、プラスチックは細かくなってナノプラスチックになる。ナノサイズの粒子は有機体の奥まで入り込み、生体の分子で自らを覆い、生体の侵入者として認識できなくなる。すなわち、ナノ粒子は人間を守る免疫システムに継続的な刺激を与えていき、生体のタンパク質の形を変化させてしまうことになる。また、ナノプラスチックは体内に入り込むと、炎症反応を引き起こす危険性があり、この炎症によって細胞を機能不全にし、深刻な病気を引き起こす危険性がある。(106-107頁)

プラスチックは、発明された当時画期的なものだったが、他方で、遡及できない問題を残してしまった。