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現代の美容師こそ、マルクスの『資本論』を読むべき理由

「美容師は給料が安い」と感じている人こそ、カール・マルクスの資本論』を読むべきです。
 
 その分かりやすい理由として、マルクスの「窮乏化法則」を掲げたいと思います。窮乏化法則とは、「資本主義経済では、資本の蓄積が進むに従って労働者階級の生活は困窮化する」という説です。私は、世界規模の資本主義経済が爛熟した現代だからこそ、マルクスの法則が生きてくるのではないか、と考えています。

 たとえば、現代の資本家(GAFAMなど)は、私たちが、パソコンでGoogleやFacebookやInstagramなどのプラットフォームを使うことによって、そのデータが彼らの「商品」になります。彼らはその集めたデータを企業に売ったり、広告を出してもらったりして利益を得ているのです。
 今や世界中の人々が、プライベートな楽しみとして写真をアップして自己顕示欲を満たしたり、欲しいものを調べるために検索したりすることが、彼らが欲しい「データ」という商品を無償で生産していることになるのです。  

 確かに、美容師にとっては宣伝になるような気がする(集客の必要があるから活用してる)し、無料で便利だし、「いいね」をもらえば楽しいのですが、ともすると、彼ら(資本家)のために寝ている以外はほとんど仕事をしていることになるのです。
 
 一方、分業が進んだ現代の労働者が、自分の価値を増やしたいと思ったら、単純に一日の労働時間を増やすことになります。さらに、「自発的に働いている」という自負が、職務を全うしたいという責任感を醸成していくため、制限がなければ労働時間は自ずと伸びていく傾向にあります。
 しかし、それでは可処分時間は増えないため、忙しくて時間が無くなれば、外食という商品が売れたり、家事代行サービスや器具が普及したりするようになります。つまり、労働者自身の価値を上昇させようとすれば(窮乏化)するほど、資本家にとってはビジネスチャンスが広がるのです。
 他方、特に日本においては、ファストファッションやファストフードが普及しており、たとえば、これまでは月に20万円ないと生活できなかったのが、18万円でも同じ生活ができるようになると、資本家は労働者に払う給与を2万円近く下げることができるようになり、それはそのまま資本家の相対的剰余価値となるのです。
 すなわち、「働き方改革」などの法整備が進む一方で、ある面では、トマ・ピケティが証明したように、労働者は現代でも、ますます過酷な労働へ追い詰められていっていると言えるのではないでしょうか。

 美容師はもちろん、介護や看護のように、単純そうに見えて実際には、相手に合わせて細やかな対応を求められる難しい仕事、あるいは生活に必ず必要な、道路の整備、ごみ処理などの労働集約型のエッセンシャルワーカーに限って、長時間労働と低賃金を強いられ不人気であるという現実こそ、マルクスの窮乏化法則が現代に当てはまる、という実態を表しているといえるのではないかと思います。

 美容師という仕事は、その行為そのものが楽しい仕事だと、私は日々感じています。しかし、残念なことに、この楽しさや職場環境に対する感謝を噛み砕いて理解することができない限り、美容師自身も気づかないうちに搾取される時代になってしまいました。(これに関しては次の機会に)
 そういう思いから、マルクスの『資本論』を、ぜひ一度お読みいただくことをお勧めします。


では、続きはまたの機会に。


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