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詩の朗読「灘岡炭鉱炭塵爆発」竹下力

竹下力
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呼吸困難になるほど僕のエンディングは始まっているのに
いつまでも消えさらずに終わらないまま
僕の呼吸が氷になるほど白いケロイドの雪が降って
やってきた道のりを雪で埋めて足跡を消してしまう。
あっけないほどもう誰も僕を見つけられないけど
寂しくはないから灘岡炭鉱の古びた錆だらけのトロッコの中で僕は微笑んで
自分が見つけられることを願う
幸せも満足感もそこにあるはずなのに
坑内の石炭臭い約束に消え去ってしまうけど
たくさんの石炭の粉末が蛍のように舞っていて
チカチカと明滅しながら星屑のように光れば我慢できるよ。
まるで母さんと小学校の担任の三好先生が「ホテル灘岡」でヤっていて
飛び散ったじっとり熟れた汗に怖くなってしまうように
キラキラと凍って腐った牡蠣臭く腐っていけば泣いていられないけど
なんだか寂しさばかりが募ってきたりして
母さんがそうなるのは仕方がないと思うし
父さんが母さんをぶん殴るのが嫌いだから
お互いがお互いの秘密に飽き飽きし始めて
憎悪まみれ母さんの腹を蹴り上げたせいで
弟がグチャグチャになって出てきたんだよ。
どうか、それを持って走って逃げてほしい。
母さんの血まみれのアソコはグチャグチャで母さんは
泣き叫び、父さんはアル中だから惨めに笑い叫び
一方で三好さんは悪魔の微笑みを教室で浮かべ
僕を職員トイレに呼び出してフェラさせて殴って喜ばせた。
僕らは堕胎されるように汚れ切っているのは分かっていたけど
どうしたってナッシングにしかならないすべてがあるなら
僕を満たしてくれるエブリシングが弟にあると願っていたし
僕は雪降る閉坑されたトロッコの揺り籠に揺られながら安堵したくて
思わずマッチに火をつける。
フィラメントの煌めきが連弾しながら爆音と爆発が連なり
僕は激しい爆風と共に吹っ飛んで粉々になって山が揺れ、揺り籠が揺れ
灘岡山脈の山頂で起こった眠りの雪崩が湖の子宮をいっぱいにした。
僕は燃え盛る炎を飲み込みながら凍りつつあって僕は
また堕胎されて父さんと母さんが本当に心の底から
僕を産みたくなかったってことを
密かに愛したいんだよ。
どうか、それを持って戻ってきて僕をエンディングにしないで。
だって僕はまだ弟を見たことがないんだ。

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