第七回 前編『アメリカ』フランツ・カフカ/訳 中井正文(角川文庫)
今回はフランツ・カフカの長編小説『アメリカ』を読みたいと思います。カフカといえば『変身』など不条理な短編小説がなじみ深いかと思いますが、この長編『アメリカ』は意外と読まれていないのではないでしょうか。というのも私がそうだからで、カフカの短編小説は何度も繰り返し読む事があるのですが、長編小説はなかなか手を出しにくく、それはなにより未完である事が理由として大きく上げられます。カフカは長編小説を他に『城』『審判』と書いておりますが、全て未完の作となります。未完の長編小説を読む徒労