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TCP2022企画部門2次審査員インタビュー(遠山大輔プロデューサー)

こんにちは!TCP公式note編集員のHikaruです。今回は、先日開催されたTCP企画部門2次審査にて、審査をご担当された遠山大輔(カルチュア・エンタテインメント株式会社)プロデューサーにTCP学生応援団がインタビュー。2015年当初からTCP 立ち上げに携わっておられる遠山氏にTCP2022企画部門や、TCPの成り立ち、込めた思いをお伺いしています。

(以下敬称略・TCP学生応援団取材 & 執筆)

全体:本日はお時間をいただきありがとうございます。TCP学生応援団から、いくつかTCPや映画に関する質問をさせていただきたいと思います。本日はどうぞよろしくお願いいたします。

遠山:よろしくお願いします。

角田:初めにTCPが生まれた経緯について伺えればと思います。プロ・アマ問わず作品の企画を募集するTCPというプログラムが生まれたことには、どのような背景がありましたか?

遠山:まず、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(以下CCC)という会社で展開しているTSUTAYAという事業が、日本のエンタメに寄与できたのではないか?と考えています。レンタルビデオが生活に浸透したおかげで、皆が気軽に映画を見ることができるようになりました。しかし、その後配信という流れが来て、お客様の映画の楽しみ方も変わった。TSUTAYAとしても、お客様により楽しんでいただくために、独自に作品を買いつけるなどしてきたのですが、自分達で作品を作ることはしてこなかった。そこで、映画の「川上」「上流」にも挑戦しようと考えて発足しました。そこでは、CCCが「企画会社」であるという発想もありました。映画もまた企画から生まれる。映画の「川上」「上流」に行くにしても、企画を重視するプログラムとなりました。

角田:応募者のデータを見ると、時間に余裕のある若者が多く応募するのかなと思いきや、比較的30代以上の方の応募が多いです。こうした応募者の傾向をどのように分析されていますか。

遠山:面白い企画なら誰でも応募して欲しいと考えているのですが、「企画を作る」というハードルは、どうしても学生には高いのかなと感じています。20代後半から30代の方達の応募者は、仕事で企画を作ったことがある方も多く、そうしたハードルが低い印象です。また30代の人達は、映像が自分の生活の中心に比較的あるのかなとも思います。若年層になればなるほど、映像視聴以外の時間の使い方をされる方も増えていますし。ただ、総じて自分の考えているものを形にしたい、映画に関わる仕事をもう一度目指したいという熱い思いがある方が多いですね。

川上:企画で応募となると、一つの映画を作るに当たって、自主制作と比べてTCP側の裁量の部分が大きくなると思います。そこで、審査の段階でどこまで先を見据えて審査されているのですか。

遠山:これはプロデューサーによってまちまちだと思うのですが、そんなに変わらないだろうと思うのは、最終的な仕上がり、どういう形でお客様に届けるか?を考えられるかとうことです。どこの映画館でかかるのか、こういうスタッフやキャストと作ったらこういうふうになるなというところを考えています。TCPで受賞した作品は商業映画として製作することが前提ですから、作品としての面白さはもちろん、加えて興行的な成功も不可欠な要素ですので。

川上:そのような商業的な評価の目というのは第一段階の審査から取り入れるのですか。

遠山:カルチュア・エンタテインメントのプロデューサー陣はおそらく、最初からそういった目線で審査しているんじゃないですかね?しかし、面白いけど収益の見込みがたたないものは全て落とすといったら、もちろんそうではないです。両方備えていることに越したことはないですが、商業的には成立しづらいけど、企画が面白いから会ってみたいね、となることも多々あります。企画というのは、例えばこのように話している中で、変化し、広がっていくものです。ですので、そういった話し合いの中で、企画がより良いものになる素養があるか?というのも大切ですね。2次審査が面談なのは、そういった理由もあります。これは他のコンペティションにはないTCPの特徴の一つであると思います。

川上:少し話の前提部分に戻るのですが、企画の「面白さ」、「斬新さ」というのを評価するにあたり、なにか軸や基準はあるのですか。また、本年度の企画部門の企画に関してどう感じられましたか。

遠山:自分だけではなくて、お客さんの目線を持てるかだと思います。自分だけの面白いではあまり意味がなく、最終的に他人に伝わって、他人が面白いと思うかですので。結構、応募の中で多かったのは、自分の手の届く範囲のことについて書かれる企画です。確かに自分にとっての切実な課題であり、リアリティーがあることは分かるのですが、それが受け手に伝わらなければいけないと思います。そういったことをテーマにするのはもちろん良いのですが、どうしてわかってもらえないんだ、ではなく、それが伝わるようにするというのが重要だと思います。

企画書についても同様で、読む人のことを考えたものが良い企画書だと私は思います。自分が思っていることをいかにうまく企画書上で伝えられるか?編集する能力はどの場面においても大切です。

寺園:TCPへの参加を通して素人性に触れる中で遠山さんは何を得ていますか。

遠山:一番はパワーかなと思います。企画書からこの映画を作りたいという情熱や、映画が好きなんだという思いが伝わってくることが多いです。読んでいても、楽しいという気持ちは伝わります。そういうのは、こっちも楽しくなるし、会ってみたくなります。

寺園:若者を中心に、TiktokやYouTube等で映像に触れる機会は増えています。そのような時代の中で映画の作り方はどう変わっていますか。

遠山:どう変わったか明言は難しいですが、映画はiPhoneでも作れる時代になりました。例えばカメラマンが機材にこだわるのは、その通りにした方がよい場合もあれば、コストを考慮して、思い切ってiPhoneで良いものを作る、と考えを切り替えることもできるのではないか?。色んなことがデジタル化し変わってきていますが、より一層そういう変化を受け入れなきゃいけないのではないでしょうか。ご意見は様々あると思いますが、映画が2時間や1時間半であるということも、そうじゃなくなってくるのかもしれないと個人的には思います。特に若者の皆さんがすごいのは、編集能力ですね。短いものをうまく作ることができる感性が敏感に思えます。

寺園:ポリティカル・コレクトネス(以下ポリコレ)(※1)が意識されている中、それが遵守されすぎてつまらないと思われる作品もあれば、守らずに世間から叩かれてしまう作品もあります。ポリコレの守り方と裏切り方について、遠山さんはどのようにお考えですか。

※1社会において特定の属性を持つ人に不快感や不利益を与えないように考えられた政策や対策

遠山:映画全体としてどういう成功のさせ方をしなければいけないのかを考えたときに、キャスティングで誰をどこに、どのように配置するかは大事ですね。ですが、多様性は絶対に必要になります。TCP の企画でもLGBTQの企画が増えているんです。ポリコレに限った話ではないですが、多様性をいかに考えることができるのかということが、映画界には必要だと個人的に考えます。なぜかというと、時代性を考えなければ世間には受け入れられにくいからです。ポリコレを意識してというよりは、時代性を念頭に置いて、多様的にものを作ることが必要だと思いますね。

全体:本日は大変貴重なお話をありがとうございました。