窓を閉めるかみちゃまの悩み(『水流苑ジンヂャーちゃんと役立たずなかみちゃまたち』)
窓を閉めるかみちゃまは、悩んでいた。
「『役立たずなかみちゃま』のはずなのに、家人が閉め忘れた窓を閉めると役に立ってしまう。これでは水流苑神社のかみちゃま失格だ」
せめて、閉めたら喜びそうなご家庭の窓だけでも避けられたらいいのだけど、開いている窓を片っ端から閉めるプログラムを書き込まれているため、それも叶わない。
そんなわけで、窓を閉めるかみちゃまは、日々、不本意に人の役に立ち続けながら、己の運命を嘆き、涙を流し続けるのだった。
天からその様子を眺めていた『役立たずなかみちゃまを生み出すかみちゃま』は、窓を閉めるかみちゃまを哀れに思い、新たに『窓を開けるかみちゃま』を作ってやった。
窓を開けるかみちゃまもまた、窓を閉めるかみちゃまと同様、閉まっている窓を片っ端から閉めるプログラムを埋め込まれていた。
かみ生みのかみちゃまの計らいによって引き合わされた二匹のかみちゃまは、出会った瞬間から離れられなくなった。
つまり、そういうことである。
こうして、窓を閉めるかみちゃまは、窓を開けるかみちゃまとの出会いによって、堂々と役立たずのかみちゃまとしてのお勤めを果たせるようになったのだった。
めでたし、めでたし。
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