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希望を語る前に、犠牲を数えろ
いよいよ来週開幕!
代表です。
弦巻楽団「秋の大文化祭!」が迫ってきました。その中の『死と乙女』は弦巻が高校生の時に知って、ずっと上演を望んでいた念願の作品です。現在モリモリ稽古中。出演の3人の怨念が立ち込めてきてます。
あらすじ
夫・ジェラルドーは、帰り道で車がパンク。たまたま通りかかった医者・ロベルトが彼を家まで送り届けることになる。ロベルトの声を聞いた瞬間、妻・ポーリナは確信する——この医者こそ、軍事政権下で自分を監禁、拷問し、シューベルトの『死と乙女』を流しながらレイプした医者だ。
復讐を果たそうとする妻、
妻を説得しやめさせようとする夫、
人違いだと無実を訴える医者。
三人による命がけの過去の清算が始まる。
こんな物語です。
高校生の時、このあらすじを聞いて“絶対に上演したい”と強く思いました。戯曲もすぐに手に入れ、夢中になって読みました。前の劇団の稽古場で紛失したり、これまで4回は購入し直しています。そのくらい好きな作品です。30年越しに、その作品を手掛けます。
たった3人の登場人物。
ものすごく個人的な衝動によるシンプルな物語。
なのにそこには彼らが置かれている社会も、彼らが歩んできた過去も、全てが表されてました。
以前の投稿で背景となるチリのクーデター、その後15年以上にわたる軍事政権による独裁についてご紹介しました。もちろんそれは厳然とあります。
しかし、舞台に現れるのはあくまで自分の人生を取り戻そうとする普通の人々です。軍人も、反抗軍も一人も現れません。再びしかし、そこには全てが詰まっています。歴史という縦糸と、社会という横糸の交点に現れた歪み、余計なほつれ。そこに縛られてしまった女性。
『死と乙女』は究極、そんな女性による“復讐の物語”です。
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過去を洗い流すには、何が必要なのか。
どれだけ必要なのか。
流れた血をなかったことにするためには、新しい血が必要なのか。どれだけ。どれだけ。
遠い時代の話ではない。遠い世界の話でもない。
私たち自身のお話だと思う。
私たち自身に今現在、問いかけてくる話です。
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なぜ高校生の自分はこの物語にそんなに惹かれたか?
それは自分が過去を無かったことにするのが苦手な性分だからです。
物語の登場人物、軍部に捉えられ拷問を経験したポーリナの台詞がグサリと突き刺さりました。
自分は「なかったこと」にはできない。許すことも。水に流す、ということが50手前になっても苦手。努力はするようになりましたが。
稽古場で、その「許せなさ」に日々向き合い続けています。
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日頃「進歩」とか「前進」とかに都合良さや苛立ちを覚える人はぜひ見にきて下さい。
舞台には、「進歩」や「前進」「明日」「希望」「生まれ変わり」に取り残され、打ち捨てられた、見返されることのなかった感情がドロリと横たわっています。
日時
12月2日(土) 19:00
12月3日(日) 15:00
※開場は開演の30分前。
※上演時間約110分。
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