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タンチョウの生態に詳しくなれる「阿寒国際ツルセンター」に行ってきました!

北海道(道東)に生息している鶴は「タンチョウ」なんですって!

正式名称ではタンチョウヅルって呼ばないそうです。
知らなかったー!!

阿寒町にある阿寒国際ツルセンター〈グルス〉ではタンチョウの生態展示や保護したタンチョウの見学、越冬期間(1月〜2月)は野生のタンチョウの観察ができます。

阿寒湖から釧路へ向かう途中によく野生のタンチョウを見かけるのですが、その生態とかをよく知っていなくて。
勉強しに行ってきました!

ちなみに野生の鶴を見学できるのは越冬期と呼ばれる1〜2月の極寒期。繁殖期(春から夏)の子育て期間は湿原にいるそうですよ。

タンチョウはなぜ珍しいの?

日本には3種(ナベヅル・マナヅル・タンチョウ)の鶴が生息していて、一年中いるのはタンチョウだけです。
現在、タンチョウが生息しているのは北海道道東のみなんだそうです。その数僅か約1,500匹。
そうなってしまったのは、明治以降の狩猟や開発によって数が激減したから。タンチョウたちは湿原がないと生きていけません。
一時は絶滅したと思われてましたが、大正時代に再発見され、1952年に特別天然記念物に指定されました。

タンチョウの生活環境

湿原の土壌は泥炭といい、これは低い水温のため枯れた植物が十分に分解しきれず堆積したものです。泥炭は水を含んだスポンジ状で、断熱性に富むため周りの気候に影響を与え、また多くの特有な生物の住処となっています。
湿原は低層湿原と高層湿原に分けられ、低層湿原は地下水位が高く、表面は水に浸され、ヨシやスゲ、ハンノキなどが生い茂り夏は緑一色になります。高層湿原は地下水位より地表面が高く、ミズゴケを主としてイソツツジ、ヒメシャクナゲなど色彩のある植物が生え、季節によってはお花畑のようになります。
釧路湿原の約8割はヨシ・スゲなどの低層湿原で、タンチョウの親子は春から秋までここで暮らします。しかし、湿原の現象とともに、あまり環境のよくない湿地や開拓地にも住処を広げざるをえません。

なぜ湿原が減少するのか?

原因は二つ。
一つは長い時間をかけて湿原が自然に乾燥していくことです。
もう一つは、人が湿地を埋め、蛇行する川を真っ直ぐにし(洪水防止)、まわりの木々を伐採するため、湿原に流れ込む土・水・の量や流れの速さが変わり、湿原に水が溢れたり、乾燥して、湿原の性質が急速に変わることで湿原の現象につながっています。

こんなに広々としている湿原。でも減少しているんですね。
自然を守るということは動植物の生態系を守るということ。そして、我々人間を守ることになるんですね。
目先のことだけではなく、長い目でみてできること、やらなければいけないことを考え実行しないといけないですね。

野外飼育場にいるツルたち

阿寒国際ツルセンターには飼育されている鶴を見学することができます。

まず出迎えてくれるのは、人懐っこいマナヅルの「翔くん」
上野動物園から引っ越してきたそうです。

人の気配がすると柵のギリギリまで寄ってきて、鳴いたりポーズを取ったりと、サービス精神旺盛な子でした。

その隣のケージには今年の春に保護されたタンチョウがいるのですが、奥の方にいて...写真は撮れず。

そして、丘を上がると2つの広々とした飼育場があります。

つがいのアサヒとソラが出迎えてくれます。
この夫婦は押し掛け女房なんだそうです。ソラ(メス)が飼育されていたアサヒ(オス)に恋してケージに飛び込んできたんですって。

タンチョウのオスメスの違いは見た目からはわかりづらいのですが、泣き声が違うんだそうですよ。
縄張りの宣言をする時や、お互いの絆を深めるときに鳴き合うそうで、タイミングが良ければ聞くことができるかもしれません。
ここの子たちも遠くにいて写真がとれず...

そのお隣にいるのはムック(メス)

絶賛お婿さん募集中なんだそうですが...
施設で育てられたせいなのか、飼育員さんに恋しちゃっているそうです。
自分自身のことも人間と勘違いしているんだとか。

この飼育場は天井にネットを貼らず、野生のタンチョウが遊びにきやすい環境にしてあるのですが、ムックはタンチョウが入ってくると追い出してしまって、野生のタンチョウとなかなか仲良くなれないんだそうです。

人工孵化したタンチョウを人馴れしないようコスチューム飼育を試みたけど、病気になった際にコスチュームを脱いで世話をしてしまったことが人間化した原因なんだそうですが、施設の方々のこうした活動がタンチョウを守っていることになっているんですね。

いろんな動物に出会えるビオトープ(自然散策路)

飼育場をでると広場的なところに出ます。


ここはビオトープと呼ばれる自然散策路で、動物観察ができるようつくられています。
(ビオトープとはドイツ語で、いろいろな生き物が暮らせる場所のこと)

ビオトープは野鳥の楽園となっていて、冬はタンチョウが飛来し、夏は様々な種の野鳥がやってきます。またエゾシカやキタキツネ、エゾタヌキ等の動物や、ミズバショウやエゾノリュウキンカ等の野花も見られるそうです。

ビオトープで見られる野鳥リスト

室内からはモニターで観察できるようになってました。


タンチョウの生態に詳しくなれる展示コーナー

室内の展示コーナーにはパネルや映像、模型などを使ったタンチョウの生態や、人との関わりについて詳しく紹介されています。

まずはタンチョウの四季の暮らしを約15分にまとめた映像室があります。 

そして、湿原を再現した床。
知らずに通ると少しびっくりします。

湿原ってこんな感触なんですねー。
タンチョウの歩き方がああなるのがちょっと分かる気がします。

各パネルごとにタンチョウの行動が記されています。

この中で実際に目にするとこができる行動はほんの僅かなんですね。
真っ白な雪の中にいるタンチョウ、今年こそはみようと思います。

私の中にあった鶴のイメージはなぜかタンチョウでして...(これはまんが日本昔話の影響が大きいかと思います...)
鶴にも種類があるっていうことをここにきて初めて知りました。

そして、意外なことに世界中にいるんですね〜、鶴って。

寒いところにしかいないと思ったら、南の方にもいるようですよ。
展示してある世界のツルの分布で一目瞭然でした。

タンチョウと人との歴史と未来

タンチョウを保護する活動は昭和初期に始まったようです。
この年表から様々な活動や出来事が見てとれます。

絶滅しそうだから大切にする。
それも大事なことだと思うんですけど、大切にする仕方に違和感があるんですよね。それぞれの個体の役目みたいなのを知っていれば、もっと前から大切に、そして共に生きていけるんじゃないかと思うんです。
個人でできることは少ないかもだけど、思う気持ちや知ることで出来ることの幅は広がるはず。

北海道の先住民族アイヌの人々は、そういうことを先祖代々伝えてきたんですね。

サロルンカムイはヨシ原(サロルン)の神(カムイ)
アイヌはタンチョウを神の国の使いとして、大切に扱い無闇に捕獲することを禁じていました。自然を敬う心と獲物に感謝する気持ちが、神という言葉に込められています。しかし全く捕獲しなかったわけではなく、江戸時代には松前藩などへ献上していましたが、その数も多くなかったようです。

現在はタンチョウを守るための法律もでき、いろんな努力もされています。

タンチョウを守る法律

・鳥獣保護及び狩猟に関する法律
この法律では鳥獣を守る為に、鳥獣保護地区の制定や、狩猟方法の制限が定められています。この法律でタンチョウは狩猟してはいけない鳥と決められています。
しかし、タンチョウの営巣地や越冬地のうち半分以上は、鳥獣保護地区のして地域外にあります。(1994年現在)また、保護区地域内も立ち入り等の制限がされているわけではなく、十分な保護がなされているとはいえません。
・文化財保護法〜特別天然記念物〜
日本にとって学術上価値の高い動物、植物、鉱物などの自然を記念物として、文化庁が中心となってその保護、維持保存をはかるよう定めています。タンチョウは特別天然記念物として、特に地域を定めずに指定され、さらに釧路湿原も天然保護区域に指定されています。
・絶滅のおそれのある野生動物の種の保存に関する法律
絶滅のおそれのある野生動植物を守り、種の保存を図るために生息地の保護や生息環境の改善、開発行為の規制、人工増殖など体系的な保護を定めています。絶滅のおそれがある動植物の「日本版レッドデータブック」が作成されています。
タンチョウはコウノトリなどと同じく絶滅危惧種に指定されています。
・絶滅のおそれのある野生動植物の国内取引を規制するための法律
国際的には絶滅の恐れがある野生動物を輸出入することを禁止したワシントン条約がありますが、密輸された物や輸入されて国内にあるものについて、国内流通を規制しているのがこの法律です。
・自然公園法〜国立公園〜
釧路湿原国立公園はタンチョウの生息地として重要な釧路湿原の大部分を含んでいます。国立公園は特別保護地区、特別地域、普通地域などに分けられ、特別保護区では枯れ葉一枚拾ってもいけないほど環境保護のための強い規制がなされています。

タンチョウを守る条約

・渡り鳥等保護条約
タンチョウは中国やロシアにも住んでいるので、共同で保護をすすめる約束を両国と結んでいます。
・ラムサール条約
この条約は「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」というのが正式な名前です。1971年、イランのラムサールで開かれた国際会議で採択されたのでラムサール条約と呼ばれています。
湿地は水の循環を調整したり、動植物、特に水鳥の生息地として重要なので、多くの国が協力をして保護をするために作られました。日本は1980年に加入し、北海道では釧路湿原やウトナイ湖、クッチャロ湖、別寒辺(べかんべ)牛川流域、霧多布(きりたっぷ)湿原を登録しています。
・ワシントン条約
「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」が正式名称で、日本は1980年に加入しました。絶滅するおそれがある種の取引を制限し、主に商業目的の取引は禁止されています。学術研究を目的とした場合には、輸出国、輸入国双方の許可があると輸出入できます。
また取り引きを規制しなければ絶滅のおそれが生じる種の輸出入も制限され。輸出国の許可が必要です。

タンチョウを守る努力
タンチョウは少しずつ増えてきていますが、天敵(キツネや野犬)に襲われたり、病気などで死ぬほか、人間の活動が原因で死んだり事故に遭うこともあります。
人間が原因の事故では、電線に触れたり感電して死ぬ例が、以前は多くありました。そこで、電力会社は衝突を防ぐため、電線の一部に黒と黄色の目印をつけたり、電線を地中に埋めたりしました。また、湿原やその周辺の開発工事では、湿原の生態系にできるだけ影響を与えないよう、水を通す資材を使うなどの方法がとられています。
近年、タンチョウや湿原を見にくる人や釣り人が増え、空き缶やビンのふた、釣り針や鉛のおもりの投げ捨てなど、ツルに害を与えるようなことが目につきます。人間が原因の事故は人間の努力や注意で減らすことができます。そうした事故を一日も早くなくしたいものです。

さいごに

じつはタンチョウの生態にあまり興味がなかったんですよね。
今年に入ってから、釧路への移動の際に必ず見かけるようになって(それも雨上がりとか、曇りの日が多い)、だんだんと「なんで?」と思うことが増えていたんです。

そして、あるゲストが「鶴センターに行きたい」という話を聞いて、下見がてら行ってみようと思い立った次第です。

展示物でいろんな勉強をさせてもらいました。
知らないままでいたら、つまんないままだったと思うし、知ってから見かけるのとでは見方が変わってきたりもします。

これだけ盛り沢山で勉強してきた帰り、まさかタンチョウと出会ったらまた面白いよな〜。
なんてことを思いながら走っていたら、まさかの遭遇!
それも2回も!

たまたま雌阿寒岳と阿寒富士が見えるスポットにいました。
大体は牧草地にいるのに、珍しいところにいるものだな〜と。

ちょっと微笑ましい気分になれました。

国際ツルセンター<グルス>は、阿寒湖から車で40分、道の駅丹頂の里の向かい側の道を入ってすぐのところにあります。

釧路空港に続く道沿いでもあって、行き帰りに立ち寄りやすい場所ですので行ってみてくださいね。

道東旅行は鶴雅リゾートへ

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