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感謝の気持ちを表し、平和な暮らしを願うアイヌの儀式「カムイノミ」

アイヌ文化の信仰観の考え方は「人間は環境の恩恵によって生きている」ということが基本となっています。

なので、それを当たり前のことと捉えず、常にその恩恵に対して感謝の気持ちを表します。感謝の気持ちを表す儀式が「カムイノミ」と呼ばれるものです。

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祈りの用具は人間の代弁者

祈りの際にはイナウ(木弊)・イクパスイ (木彫りのヘラみたいな物)・杯が使われます。

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というのも、人間の祈りの言葉はそのままカムイに伝わらないとされています。なので、間を取り持ってくれる伝達者が必要で、その役目をするのがイナウとイクパスイです。

祈りの際には、立てられたイナウに対し、左手でお酒が入ったトッキ(杯)をもち、右手でイクパスイを持って、イクパスイの先に酒をつけ、それをイナウに軽く触れるようにつけながら祈りの言葉を唱えます。

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そうすることで、人間の言葉はイクパスイに伝わり、イクパスイはその言葉をイナウに伝え、イナウは人間の言葉と供物を伴ってカムイの世界に向かいます。

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あて先のカムイの元に着くと、良い心で人間が供物をもたせてくれたことや、人間の感謝の気持ち、願いを伝えてくれます。
そして、受け取ったカムイは他のカムイを招待し、人間の心よさを伝え、それを知ったカムイたちは競って人間界へ行きたがるとされます。

カムイが人間界に来るときは、人間の目に触れられるよう衣装を身に纏うとされています。その衣装とは人間に役立つものの姿、動植物だったり、道具だったりするわけです。

カムイが人間界に訪れるということは、それだけ自然の恵みが豊かになることなので、たくさんのカムイにきてもらうことが必要だと考えられてます。

カムイノミは儀式の前の挨拶のようなもの。アイヌ文化にはさまざまな儀式がある。

カムイノミは神に祈る儀式だと思っていましたが、祈る儀式の前に必ずとり行われるものなんだそうです。

そして、季節や地域によって儀式の内容は違うのだそうです。
例えば、地域によって漁ができる地域、狩猟が盛んな地域とありますよね。そういった環境の違いで儀式の時期や儀式の対象となるカムイが違ってくるということだそうです。

今回、鶴雅グループで行われた儀式は先祖供養(シンヌラッパ)と魔払いの儀式でした。

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祈りの儀式は感謝の意を伝えるだけではなく、その環境に対する抗議もするそうです。

カムイの称号は人間に対する良いものばかりではなく、悪い影響を与えるもの人にもつけられます。その影響度合いによって、いろんな呼び方がありますが一般的にわかりやすいのは、ウェンカムイ(悪い神)という呼び方です。
人間に対し悪い影響を与えるウェンカムイには、「もう来ないでください」というような内容で祈りや踊りを捧げます。

このコロナ禍も、ウェンカムイがもたらしたものかもしれない。
だったら、一日でも早く収まってほしい。
そういう願いを込めた儀式も執り行われました。

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祈る気持ちは万国共通。地域や風習でその対象が変わるだけです。

アイヌの人たちは文字を持たなかったけど、言葉をとても大切にしたと言います。カムイに捧げる言葉は、定番な言葉だけではなく、その人なりの言葉使いが必要だったんだそうです。

アイヌ文化を研究していますが、知っていくと、文化の原点は物事の本質を大事にするということにあるんだなってわかってきました。そして、個性をとても大切にする文化なんですよね。
だから、身の回りのこと全てに感謝できる体質なんだなと。

こういった神事に参加すると敬虔な気持ちになれます。
祈りは感謝。
その気持ちをいつも忘れずにいたいと思います。

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