鳩さんと宮田
春は出逢いの季節と言い出したのが誰かは知りませんが、僕にとっての出逢いの季節は秋でした。
い駒さんとびめしの出逢いから1-2週間が経過した週末、いつものようにびめしから釣りに誘う連絡が来ました。
びめしの交友関係が広いことは知っていたものの、友人を釣りに連れて行きたいとの申し出は初めてだったので、少し驚きました。
まあ断る理由はないし、もしかしたら新しい釣りの扉が開けるかもしれない。
いつもの急な展開に少し苦笑しながらLINEを閉じ、はたと思い当たりました。
二人の名前を聞いていない…
当日は秋模様ながらからりとした晴天で、びめしが車に乗ってやって来たのは昼3時ごろでした。
「お疲れ様です!これから五反田で友人と後輩を拾いに行くんで、乗って下さい」
「あ、うん」
言葉を継ぐ暇もなく車に乗り込み、五反田駅に向かいます。
このとき、実は内心、びめしの友人ということで結構押しの強い屈強な面々なのでは…と戦々恐々としていたのですが。
そこにいたのは、見るからに人の良さそうな、中肉中背を絵に描いたようなお兄さんと、人懐っこそうなひょろりとした黄色いmont-bellのジャケットが印象的な若者でした。
「あ、こんにちはー」
「はじめまして…」「どうも…」
間違いない。この二人もびめしに詳細を知らされないまま連れて来られている。
二人のどこか困惑した反応から、即座に状況を理解しました。ただ、少なくとも悪い人たちじゃなさそうで良かった。
「あの、びめし、」
「ああ、こっちが後輩の宮田で、こっちが鳩さんです。で、これが言ってたJBさんね。二人とも後部座席に乗って」
なろう系小説のオープニング並に端折った人物紹介を済ませ、プリウスの後部座席に二人を押し込んだびめし。
………
「で、今日どこ行きます?」
ノープランかいな。
(続く)
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