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ヴァンキッシュおじさん


ハゼ、サヨリとすっかり味をしめた僕達が、「浮島つり園、夜ならアジも釣れるのでは!?」と安易な発想に辿り着くのは必然でした。早速、びめしからLINEが飛んできました。

ただし、サヨリ釣行から2日後の火曜日に。

『明日の夜、浮島どうですか?』

『OK、何とかする』

果たして、当時彼以上にとち狂っていた僕は、二つ返事で了承したのでした。

翌日、意気揚々と19時半頃にやって来たびめしの車に乗り込み浮島に向かいます。


到着。夜の浮島は、等間隔に配置された常夜灯が仄かに海面を照らし、昼間とはうって変わって厳かな雰囲気に包まれていました。

しかし何より違っていたのは、やって来ている釣り人の顔ぶれです。昼間のカジュアル層、ファミリー層とは一線を画し、当時初心者だった僕達でもわかるほどに上級者感を纏わせた釣り人達が黙々と竿を振るっていました。


これはえらいところに来てしまったかもしれない…。そんなことを思いながら仕掛けを準備し、周囲に気を配りながら電気ウキを眺めてると、いかにも玄人なおじさんがスタスタと歩いてきました。


「ここ、初めて来たの?」

「え、ええ。アジとか釣れるかなって」

運悪くびめしはトイレに行っており、僕一人でおじさんと立ち話することになりました。

「へえ、ウキ釣り?珍しいね。ほら、夜はここアジングやってる人ばかりだからさ」

「あー…アジング?」

知ったかぶりをしようとしたものの、あまりに聞き慣れない言葉に聞き返してしまいました。

「こういう軽めのロッドとリール使って、ルアーでアジをワームで釣るのよ」

なるほど、まじまじと見るとそれは、僕達が普段使う竿やリールと比べて遥かに華奢な代物でした。

「へぇー…なんか高そうですね…そのリールとか」

「ああ、これ?ヴァンキッシュだよ。まあ軽いからオススメだけどそこまで高くはないかな」

ゔぁんきっしゅ?

人生で一度も聞いたことのない名前にクエスチョンマークが止みませんでしたが、これ以上素人感を漂わせるのは忍びなく、

「あー、ヴァンキッシュ。良いリールですね」

と、中身も何もない返答でその場を凌いだのでした。

「ウキ釣り良いよね。でもアジング、楽しいよ。もし興味湧いたらやってみて」

想像よりずっと気さくだったおじさんは、また堤防の奥の方に歩いていきました。

結局その日、アジを2,3匹ウキ釣りで釣り上げた僕達は、明日の仕事に備えて早々に帰路につくことにしたのでした。

「JBさん、そう言えばガチっぽいおじさんと喋ってましたよね?何話してたんですか?」

「なんかね、あれアジングしてるんだって。アジをルアーで釣るらしいよ」

「へー、そんなんあるんですね。どんな仕掛け使ってるって言ってました?」

「待ってね、確か"バンキッシュ"ってリール使ってたような…聞いたことないから調べてみるわ」

amazonアプリに「バンキッシュ リール」と入力。すると…


「び、びめし!!4万!ヴァンキッシュ、4万円するらしいよ!?」


「はぁ!?!?!?」

思わず車内で大声をあげるびめし。

「リールに4万!?バカでしょ!!?!?」


完全に呆れ返りながら思わず笑みをこぼすびめし。

「いやー、釣り人って本当バカですね笑 アジ釣るリールに4万円掛けるとか狂ってるでしょ笑」


「ヤバいね。遠い世界だわ…ヴァンキッシュおじさん、化け物だわ」


そんなこんなで、釣りという底知れない沼の一端に触れた僕達でありました。




ちなみにトップ画にもなっている下の写真は、現在のびめしが愛用しているヴァンキッシュ×3台です。(ハンドルノブ換装済み)

(終わり)

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