きっかけは「まずは形から」でした。
日本でも長年住んでいたヨーロッパでも一度も釣具屋さんになんて足を踏み入れたことがなかった私。
夫と出会ってから初めてチェンマイで、釣具屋さんにいくことになりました。10年以上前は -デートも湖で釣り- などというシチュエーションもあったりしたのですが、イマイチ釣り自体には興味が持てず。釣りに関して全く興味がなかった私にとって、釣り道具や釣具そのものはなんだかよくわからないものばかりでした。その当時の釣り道具や釣具屋さんに入った時の印象といえば、
ギラッギラ、ビカッビカした色や光の魚やちょっと気持ち悪い模様のカエルみたいな塊がいっぱい
ニュルっとしたベタつきそうな虫みたいな形のドス黒い気持ち悪い物体はなんだろう
どれも似たような黒いピカピカの棒
いろんな種類の袋に入った不思議な匂いを放つ餌
「うわ〜!」箱の中で騒いでる虫達はなぜここに
蛍光色の縞縞模様のいろんな大きさの綺麗でかわいい尖ったキノコみたいなもの達欲しいけど、釣り以外で何に使えるかな
子供用のブレスレットにできそうなかわいいプラスチックビーズ。手芸屋さんで買うのと何か違うのかな
「気になるものがあったら買ってみたら?」と夫に言われても、欲しくて”気になる”のではない方向性だったので、何年間もどんなによくよく見ても「ふ〜ん….」と素通りしていました。
と、これが私の当時の釣り道具や釣具屋さんへの印象です。おわかりのとおり、あまり良い印象じゃないですよね。世の中の釣り好きのパートナーさんをおもちの女性達はどのような反応をなさっているのでしょう。私と似たような印象を持っていらっしゃるのでしょうか。それとも、チェンマイの釣り道具やさんがどこもこのような感じのお店で、もしかしたら日本の釣具屋さんは女性にとってももっと楽しい環境なのでしょうか。
実際に初めての自分用の釣竿を買ってみたり、あまりギラギラしていない自分で食べたら美味しそうだなぁと思える塗装のルアーを買ってみたりしましたが、心から惹かれるデザインのものはなかったので、なんとな〜く気が向いたら釣りをして…みたいな心は全くどこか遠くでした。釣りに行ったとしても、どちらかというと、夫や釣り仲間が釣りをしている横でコーヒーを淹れたり、キャンプ飯を作って食べたり、本を読んだり、写真を撮ったり、石を拾ったり、と釣り以外の自分の好きな野外活動を楽しんでいました。
ところが、衝撃的な出会いがありました。
ある日のこと、日本から来た品々を販売するリサイクルストアーの食器売り場をみていたら、なぜかこのルアーが棚の上の食器の横に一つ並んで置いてあったのです。もちろんこれがルアーだということは分かりましたが、とにかく「なんてすてきなの!」と感動しました。古いものだということしかわからず、これがチェンマイの川や湖、ダムで夫が使えるものなのかどうかもわからなかったけれど、夫に知らせて、例え夫がいらなかったとしてもとりあえず買うことに決めました。とにかく私が欲しかったのです。
これがどこ製のものなのか、手作りなのか、何年代のものかは私にはまだわかりませんが、この雰囲気に完全に惚れてしまったのです。
それからというもの、リサイクルストアに行く際には古い釣具のチェックを欠かさなくなりました。私はどうやら古いタイプ、特に60-70年代のものが好みらしいです。もちろん現行のものより性能は落ちるのでしょうが、そしてすでに使用感たっぷりですが、その使用感すらもカッコ良く感じられてしまうほどで、「まずは形から!」です。
そのおかげで、インターネットを使って自分で釣りや釣り道具について色々と調べるようになりました。
『釣りキチ三平』(タイでも知られているアニメだそうです)というアニメーションを見てみたり、Youtubeで他の方の釣り動画を眺めたり、釣り道具の会社のホームページを見てみたり、魚の餌情報を調べては試してみたり(日本とタイでは違うらしいので)と、以前に比べてかなり積極的になりました。まず、自分で実際に手にしたい/身につけたい好みのデザインのものを選び、それからその釣具が今の環境で使えるものなのかを確認して手に入れるようになりました。
さて、実際の私の釣りはというと、決してうまくはありません。
でも、楽しんです。
「どうしたら良いんだろう?」と思うようになりました。
関連することをもっと知りたいと思うようになりました。
そうなると、上記したチェンマイの釣具屋さんでの印象もガラッと変わってしまいました。
私のリールにあう釣り糸はどれだろう。できれば釣竿に合う綺麗な色がいいな。
どのルアーがかわいいかな。よし、アクセサリーにもしてみよう。
どうやらチェンマイの魚は、ココナッツ、バナナ、チョコレートを好むらしい。わかるわ〜!そこにエビパウダーを入れるなんて珍味ね。今度はコンビニのクリームパンを買って試してみよう。
到底、本当の釣り好きさん達とは違うとはわかっています。だから恐らく私がここに書くことに興味を持ってくれる方も至極限られているのかなとも思いました。それでもなんだか楽しいんです。今度日本やヨーロッパに行く際には、釣具屋さんを覗いてみたいと思いますし、会ってお話を聞きたいなと思う人もいます。
もしも嫌いなことだったら、嫌いから好きに変えるのは難しいと思います。でも何も感情が動かないところから、何か小さなきっかけで”好き”を見つけて、そこから広がる世界は以前見ていた同じ日常だったとしても、それが楽しい世界になる可能性がたくさんあるということがわかりました。それには「まずは形から!」はやっぱり大切だったんだなぁとこの件では実感しました。どんなにたくさんの現行のルアーを見てきても何も動かなかったのに、たった一つの古いルアーに視覚で惚れ込んでしまっただけで、その見える世界は変わってしまいました。
最近、この世の中たくさんの素敵なものが溢れていますがその中から本当に”好き”を見つけるのはもしかしたら難しいのかなと感じていました。他の人へのウケがいいから、みんながいいって言っているから、流行っているから、などとは全く関係なく、そして何かを極めるため、お金を稼ぐためではない至って気楽な、心から”これ好きだな”がひっそりと湧いてきたら、その自己流の”好き”を大切にしたいと思いました。
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