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東京の人口動態を可視化してみる...進学・就職期以外の全年齢層で転出超過が続く

コロナ禍を経て人口増加に転じたとされる東京都ですが住民基本台帳データを元に、転入超過数を全年齢区分別に時系列で視覚化したところ、進学・就職期以外の全年齢層では転出超過が続いていることがみえてきました。

昨年3月に、コロナ禍において東京23区からどこへ人口が流出しているかを視覚化してみました。

すると、隣接県に留まらず、信州、北陸、東北の多数の市町村へ転出先が分布している様子が浮かび上がってきました。

人口動態というと巨視的な視点でしか捉えられないような気もしますが、こうして人解像度を上げて市町村単位でみてみると、ざっくり県単位だけでみみていると相殺されてしまうような細かな人の動きの実態がみえてくるのだなと感じました。

その時から1年ほどたって、東京都の人口がコロナ禍以降、2年ぶりに増加したとの報道がありました。

都道府県別で見ると、人口が増加したのは東京都だけで、1403万8000人となっています。
東京都は、おととし新型コロナの影響で転入者が減り人口が減少しましたが、2年ぶりに増加に転じました。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230412/k10014036451000.html

なるほどやっぱり東京一極集中は止まらない、猫も杓子も東京を目指す時代に戻った、ということなのでしょうか?

そこで今回も、ざっくり都道府県単位でみると東京一人勝ちのようにみえる人口動態を、少し解像度をあげて分析してみることにしました。

Twitter上でLIFULL HOME'S総研のToshiaki Nakayamaさんが、2023年2月の住民基本台帳を元に上記のような集計を行い、ファミリー層が東京から隣接県に出ていっているという指摘をされています。

当研究室では今回、政府統計e-Statで公開されている住民基本台帳の2021年1月以降の全期間のデータを結合し、東京都およびその他の全都道府県の転入超過数を、全年齢区分別に視覚化してみました。

次のヒートマップで、ピンク色はプラス=転入数が超過している、青色はマイナス=転出数が超過している状態を示します。

一見してわかるとおり、東京都の転入超過(ピンク色)が特定の年齢層だけで起き続けていることがはっきりわかりますね。

このピンク色の帯は主に、15歳から29歳の年齢層です。つまり、2021年1月以降の東京都への転入超過は、ずっと、ほぼ高校生、大学生、若手社会人といった人々「だけ」で起きていて、その他すべての年齢層ではほぼずっと転出超過が続いている、ということになります。

一方隣接県に目を向けてみると、東京都とはかなり違ったヒートマップとなっています。

特に埼玉県、千葉県についてはやや東京都と逆のような転入超過状況が続いていることがわかります。他の人口統計も勘案すると、東京都から転出した高校生、大学生、若手社会人「以外」の人々…つまり0歳から14歳までの子ども、30歳以上の中高年は、こうした隣接県へ転居しているケースが少なくないとみられます。

それでも直近の統計では東京都は2年ぶりの人口増となったわけですから、東京都は、進学と就職のために転入していくる人々の数「だけ」が非常に多く、それ以外の年齢層の転出分を補って余りある状態となっているわけですね。

興味深い実態です。

このような状態にある都道府県は、他には無いのでしょうか。愛知県や大阪府といった大都市はどうでしょうか。そこで47都道府県まで視野を拡げてみたいと思います。

まずは東日本から。

ご覧のように、東京都と同じようなパターンを示している県は一つもないことがわかります。

愛知県がやや近いようにもみえますが、よくみると、進学・就職期間年齢層で青色の流出超過となっている月がちらほらあるのと、80歳以上の年齢層でピンク色の転入超過となっている月が多いなど、やや異なっています。

次は西日本です。大阪府はどうなっているでしょうか。

大阪府は東京都とやや近いパターンを示してます。共通しているのは進学・就職期にある15歳から29歳の年齢層で転入超過となっている月がほとんどであることですが、それ以外の年齢層、特にシニア層でちらほらピンク色の転入超過がみられます。

大阪府へは子育て期にあるような年齢層の人々の流出超過が続く一方で、
進学・就職期にある人々の流入超過が起きている。加えて80歳以上のシニアの人々の流入超過が起きている点が東京都にない動きですね。

そしてひときわ明るいヒートマップを示すのが福岡県です。

福岡県で青色の転出超過の月が多い年齢層は就職期にあたる20〜24歳際を中心にした年齢層くらいで、他のすべての年齢層はピンク色の転入超過となっている月が多いです。

就職に際しては東京や大阪などに転居する人が多いのかもしれませんが、その他のすべての年齢層を惹きつけているいる点に、福岡の勢いが表れているようです。

同じ大都市なのにちょうど東京都のヒートマップの裏返しのような形になっているのも興味深い!

以上、東京を始めとしていくつかの都道府県の人口動態を、年齢層別、時系列で眺めてきましたが、東京都では、進学・就職期の人々の人口だけが転入超過とっており、その他全ての人々は転出超過であるという、非常に特殊な人の移動が起きていることがわかりました。

こんなにはっきりとしたコントラストが存在していたとはちょっとびっくりです。

トータルで人口は増えていても、その内実は一様ではなく、「14歳以下」と「30歳以上」という大半の年齢層はほぼ一貫して転出し続けているわけです。

これは表面からみると同じ水のようにみえても、その内側では盛んに水が入れ替わっている川の流れのようです。

ゆく川の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず ...都道府県単位の合計値や平均値だけではみえてこない動態です。勉強になりました。

このような実態は、東京都心の飲食店業態などにも影響を与えそうです。ファミリー層向けというよりは、学生さんや若手社会人が数人のグループで使いやすい空間、メニュー、価格帯…

一方アパレルでは郊外に増加しつつあるファミリー層を念頭に置いた新しい業態が登場しているようです。

東京都心部のマンション価格の高騰などもあり、進学・就職期にある年齢層の人々のみの転入超過が続けば、都心と郊外で異なった、新たな業態が登場を呼び起こことになるかもしれませんね。

以上、徒然研究室でした。Twitterでもオープンデータとプログラミングで関心あることを分析してツイートしております。どうぞご贔屓に。

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