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著作権料分配額ランキング可視化にみる優里「ドライフラワー」のおもしろさ

JASRACが公開している「音楽著作権料分配額TOP10」のデータをバンプチャートっぽく視覚化してみました。

過去データも公開されているので興味深いのですが、まずは直近の2021年から。

LiSAさんが歌う鬼滅の刃関連の楽曲や、相変わらずのOfficial髭男dismさんの「Pretender」の強さが目を引きますが、さらに興味深いのはカラオケ部門のランキングです。

10曲中、6曲が、総合ランキングにも配信ランキングにも登場していない曲なのです。

10曲中、6曲が総合ラインキング、配信ランキング両方に出現していない曲です。

インターネットとスマホ、SNSの普及によって、これだけ情報が瞬時に伝播していく時代に、私たちにとっては、

「いま聴いてる曲 ≠ いま歌いたい曲」

というケースも多い...ということなのかもしれません。

とりわけおもしろいのは、

2020年にTikTokからブレイクした川崎鷹也さん「魔法の絨毯」と、

1998年の中島みゆきさん「糸」

が、「22年間」の時間を越えて並んでいる様子です。もう並びすぎて縦の糸と横の糸で魔法のじゅうたんが編めそうです。

ストリーミングとサブスクリプションがある意味で時間を無化していく現代の情報環境を顕著に象徴していますね。

(ちなみに2022年5月31日時点で中島みゆきさん「糸」はカラオケ分配額上位の常連ですが、Spotify、Apple Musicでは配信されておらず、Amazon Musicでは配信されていまます。)

当研究の昭和歌謡についてよヒアリングの際、ある大学生は、

「昭和歌謡は、現代のJ-POPに比べて歌詞がしっかり聴き取れるし、しかも自分で歌えるんです。いま流行りのJ-POPは私たちでも難しいことがある」

と指摘してくれました。

ここで分配額総合ランキングの上位3曲において、どこから分配が上がってきているのかを比較してみます。

JASRACがPDFの中で円グラフとして公開してくれているので、これをツリーマップにして並べてみました。

優里さん「ドライフラワー」は、冒頭のカラオケ部門ランキングでも一位でしたが、ここでも一見してわかるとおり、LiSAさんの2曲に比べて「カラオケ」「通信カラオケ」からの分配の割合が非常に高いのですね。

45%がカラオケからの分配となっており、配信の構成比50%に肉薄する優里さん「ドライフラワー」の構成比。特に「演奏権」が対象となる「カラオケ」が多い。


このことから、優里さん「ドライフラワー」は、他の上位曲に比べて「聴きたい曲」であったことはもちろんなのですが、それ以上に「歌いたい曲」だったのではないか…ということが推察されます。

特にJASRACさんにおけるカラオケに関する著作権料は、通信カラオケ事業者に対しては「複製権、公衆送信権」として課され、カラオケBOXやカラオケスナックに対しては「演奏権」に対して課されるとのこと。

優里さん「ドライフラワー」の場合はピンク色の「通信カラオケ」に対してオレンジ色の「カラオケ」の比重が非常に高いのが特徴なので、実際に営業しているカラオケBOXやカラオケスナックで歌われた頻度が非常に高かったことが推察されます。

そういえばBEGINの比嘉栄昇さんがライブのMCでこんなことを言っておられました。

「みなさん、歌はね、聴くものではなくて歌うものですよ。だから一緒に歌いましょうね!」

ストリーミングとサブスクリプションの普及によって、音楽をモノとして消費したり所有することが私たちの生活から急速に消失していく一方で、「歌う」ことを通じて、私たちはまた別の形で音楽を所有する…ということなのかもしれません。

以上、徒然研究室からでした。あっり、かんぱーい!

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