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いま普通だと思っていることは、とても幸福なことかもしれません。【#22】

病院の外来には様々な人が来ます。脳神経外科の外来にも多種多様な人が来ます。治療がある程度落ち着いて元気に通っている人がいます。定期的な画像フォローで戦々恐々としながら結果を聞きに来る人がいます。なるべく、楽しく明るく笑顔でいようと取り組んでいます。
脳神経外科外来では、うれしいとかなしい が交差することがあります。

6年前に肺がんの脳転移で手術歴のある70代後半のセガワさん。
定期的に画像フォローをして再発などがないか確認しています。

心房細動やASO(閉塞性動脈硬化症)など他の病気もあり、あたまの手術のあと何度か入院、治療をしています。

ASO(閉塞性動脈硬化症)とは下肢の血管が細くなり閉塞する疾病です。原因は加齢、喫煙、糖尿病、高血圧、高脂血症などです。最近ではPAD(末梢動脈疾患:Peripheral Arterial Disease)と呼ばれています。

セガワさんはASOに対しカテーテルで足の血管を膨らましました。経過は良好で無事退院しました。転移の再発がないか調べるMRIの検査は、退院したすぐあとのことでした。そんな外来での出来事です。

外来診察室に入ってくるなり凄くおびえた様子でセガワさんがわたしに聞きました。

セガワさん「つれづれ先生、足の方が悪くなって手術したんです。だんだん悪くなっていってるんです。どうですか。頭のほうも悪くなってますよね?」
と確信したように聞いてきます

わたし「頭のMRIでは、再発はありませんよ。なにもないですよ。」

セガワさん「え?」

わたし「いや、結論からいうと何もないですよ。今画像見せますね。」
といって画像を見せようとすると

セガワさん「なにもなくてうれしい、すごくうれしい、ありがとう、ありがとう」
と感極まって泣き顔になりながら手を握られました。

わたし「いや、わたしなにもしてないです」といっても【うれしい、うれしい】が止まりません。

クラークのナシモリさんにも「ありがとう」の連呼です

無理やり握手させられているクラークのナシモリさんが「わたしもうれしいです」と、ぼそっとつぶやいていました。

 定期的な画像フォローの患者さんは大勢います。再発がないことがどれだけ嬉しいか、再発の恐怖が患者さんにとってどれほどのものか再度考えさせられる外来でした。
 わたしは患者さんの気持ちを何もわかっていなかったのではないか、と悲しくなった外来でした。

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