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ラーメンが並べて食べられたらそれは幸せなのか

働きたくないとか、バカンスに行きたいとか帰りたいとか言いつつ、気づけば今から飲みに行くには遅い時間。

疲れたとグチグチ言いながらいつもの顔ぶれで、もう開いていない受付口を迂回して、小さい通用口から肩を縮こませながらパラパラと出てくるサラリーマン。せめて空腹を満たすためにラーメンでも食べに行きますかと、深夜のデブ活動とも言える午後初めての炭水化物接種をしていたのは既に過去になりつつある。

今後も在宅をふんだんに取り入れた業務形態になりそうな予感がしている現在、もし在宅にならなくても人を誘って食事に行くことへの障壁が1枚増えた今、百害あって一利なしの深夜のラーメンはこのまま消えていくのだろうか。

あ。ラーメンって不思議ですよね。

1杯の単価や食事のスピードを見ると、それは世の中でいうファストフードそのものなのですが、提供時間が短いだけでその実、手間がとてもかかっていて、世の中に掃いて捨てるほど溢れるファンがいて、お店ごとにスープやら麺やら具材やら千差万別で、手軽さを追求したインスタントラーメンや、カスタムできる袋麺、家で調理する生麺、同じ「ラーメン」とくくるには地球と月と他のとにかく遠い惑星くらい離れている。むしろこれは一括りでラーメンと言ってしまっていいのだろうか。今更だけど分けた方が良くないか。

インスタントも袋麺も、つけ麺も博多も家系も二郎系もインスパイアもどれもこれも魅力的で大好きだけど、やっぱり今は、圧倒的にあのお店のラーメンが食べたい。

深夜の仕事終わりに唯一開いている、会社の近くのラーメン屋。

ラーメン屋のラーメンは美味しさはもとより、ササっと食べられる手軽さや、客も店員も相手に興味のない淡泊さが好きだけど、やっぱり一緒に仕事を終えた人たちと並んで食べる、伸びるのも気にせずに愚痴を言いつつ啜る、あのラーメン。

あのラーメン大好きだったけど、でも愚痴なんて言わずにおいしく食べたいと思っていた。普通の時間に食べに来たいよと言い合っていた。なんでこんな時間にラーメン食べているんだろうと悲しくなる時もあった。だけどきっと、悩みながら愚痴を言いながら深夜に食べるスパイスってあったんだな。空腹は最大のスパイスなんていう言葉もあるけど、空腹なんて分かりやすいものだけじゃなくて、いろんなごちゃごちゃしたマイナスな感情もプラスに変わる瞬間があるのかもしれない。なんか文字にして書くととてつもなクサいけど、人と感情を共有できる場所ってそれぞれで、自分を肯定できる時間もそれぞれで、自分にはそれは深夜のあのラーメンなのかもしれない。

その生活に戻りたいかと言われたら、それはやっぱりいやなんだけど、でもあの並んでラーメンを食べている時間は、きっと、きらいじゃなかった。

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