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収まるべきところ

10代の頃、パズルが好きだった。

大きなピースのスヌーピーから、最終的には2000ピースの超大作まで。普段固くて近づきもしない畳の上に広げて、何度も足や体勢を変えながら。

まずは四隅を見つけて外枠を作る。
完成図を見つつ、色味や柄が似てるもの同士集める。
そして一つずつ、トライ&エラーを繰り返して、ピッタリ相性が合う相手を見つける。

最初は、とにかくどれが合うのか検討がつかない。
色も形もそれらしいのに、当てはまらなかったりして。合ってると思ってても、実はちょっとした隙間があったりして。
そのせいで、中盤からやり直しするハメになったり。

どんなに組み合わせても、何度組み合わせても合わない時もある。1時間くらい粘って、1〜2ピースだけで終わる日もある。

苛立ちを覚えつつ、粘り強く。
少しずつ少しずつ。


そのうちピースが合わさる確率が増えていき、全貌が見え始めると…一気にスピードアップできる瞬間がある。



…この加速感がたまらない。

突然自分が賢くなった気になる。


少し調子にのってくると、私の脳内で、ちょっとした小劇場が始まる。


“CheeCoさんの回答の時間はあと30秒。それまでにピースをはめることができるのか。できればハワイ旅行に大手!…おっと、残り僅か10秒!いけるのか、いけるのか、どうなのかー…?!”
なんてクイズ番組風に仕立てあげ、自分の心の中で盛り上がる。


最後のピースがキレイにハマると、ものすごい充実感と至福感に包まれる。


…最高の瞬間。


やってやった、という満足感。大きな仕事を成しえたかのような、誇らしい気分になる。



今更ながら、パズルを通して気付いた

おそらく私は、このチマチマ小さい作業を積み重ねて大きなことを成し遂げる快感を、身体に染み込ませたらしい。


人生紆余曲折、社会人10年経ってようやく、分析という仕事が好きだと気づいた。
大量の数字を一旦目の前に全部洗い出し、まとめて整理して形にしていく。そこで初めて分かる事実があると、無性に楽しくなる。


そんな自分の性分をもっと早くに知っておけば、文系など選ばず理系に進み、数学をもう少し本腰で勉強したのに。
そしたら今の仕事がどんなに楽になったろう。
なんで就活の時に気づけなかったのだろう。

…なんて後悔しても仕方ない。



人生はきっとパズル。

人はそれぞれ個性があって、同じピースは2つとない。その個性は必ず何処かでピタッと合う場所がある。すぐに見つかる時もあれば、ものすごく時間がかかることもある。合ってると思ってたけど、実は違ってたことに気づき、やり直すことも。

でも収まるべきところに全てが収まると、大きなことを成し得る。
いろいろ試してみたからこそ、完成できる。


だから、何事も焦らない。
じっくりじっくり考えて、ダメならまたいくらでもやり直せばいい。何度も試してみて、そのうち勘が働いて、上手くいく軌道に乗れたりするから。
最後に完成すればいいのだから。




…そんな人生論を、村上龍になった気になって頭の中でナレーションしながら、10代以降ひさしぶりに買ってみたパズルに向き合ってみた。

ピースの形が動物の形をしている美しいパズル。
美しいけど…激ムズ…こりゃ完成までしばらくかかっちゃうなぁ。


たまにはこんな時間も、悪くない。
妄想を膨らます想像力も、まだ健在のようだし。





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