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仲居もたまには「もてなされたい」⑧〜大天荘〜(長野県 安曇野市)

大天荘」は北アルプスの大天井岳山頂から約5〜10分の場所に位置する山小屋です。
標高は2900m。これまで紹介してきたお宿と異なり完全に登山をして向かう山小屋です。

でも下界の宿に負けないくらい素敵なお宿だったので、こちらのシリーズに組み込みました。

大天荘までの道中については前回の記事で触れています。


大天荘は登山口からですとコースタイムは8時間ほどなので、
歩き慣れている方であれば1日でも来れますが、一般的にはお隣の燕山荘か、常念小屋に1泊してから来るのが普通です。

またほとんどの方は名峰 槍ヶ岳を目指す途中で通過する場所のため、大天井岳や大天荘を目的地として来る方は少数派かと思われます。

今回はサービスに定評がある燕山荘グループの小屋で、山小屋なのになんとメインのお料理が肉か魚で選べてしまうという夕食、山小屋らしからぬインディアン・ランチ等の視察をすべく泊まってまいりました。

大天荘でランチを食べるべく登山口からハイペースで登って12時頃に大天荘に到着。
見出し画像にあるように、2900m地点にある山小屋にしてはずいぶんと平坦な所に立っています。

大天荘までの最後の登りが少し狭くて急だっただけに、たどり着くと安心します。

手前が新館で奥が本館

到着後さっそく宿泊受付、
今回は全国旅行支援の対象であったため、
ありがたく利用しまして
1泊2食付きで14000円のところが9000円
平日のためクーポン3000円分いただきました。こちらのクーポンは全て山小屋にて使わせていただきました。
山小屋の人間としてやっぱり山の経済に還元しないと!ということで。

スタッフさんが案内してくださったお部屋は、
廊下にずらっと並んだ2段ベッドを布団2枚ごとにカーテンと壁で区切った合部屋。
山小屋ではよくあるお部屋です。

その日は空いていたので1人で布団2枚分のスペースを使わせていただきました。
カーテンで仕切ることができるので個室のようなものです。

1区画4枚分のところを
カーテンで2枚ずつに分けています


寝床に荷物を置いたあとは早速ランチをいただきに食堂へ。

インディアン・ランチ1500円

カレー、サフランライス、ナン、チャイ、デザート 
ここは下界のカフェでしょうか?

サフランライスどうやって仕込んでるの?とか、ナンって日持ちするの?とか、食器多くて、水も貴重なはずなのに洗いもの大変そう、とか。
良い意味で突っ込みどころ満載なのですが、
とにかく標高2900mで食べるものとしては
豪華すぎます。
稜線の小屋で昼ごはんにここまで本気を出している小屋には無いのではないでしょうか。


私のいる小屋も夕朝食こそ力を入れていますが、その分お昼は少し簡単にさせてもらっています。
それは山小屋では朝が異常に早く4時台から朝食がスタートするため、昼時にスタッフの休憩を回さないといけないことと、午前中は館内の清掃に人を割くため、
なかなか昼の仕込み全てに全力投球はできないためです。故にこのランチの力の入れ具合は驚愕なのです。

感動の昼ごはんの後は小屋から10分の大天井岳へ。

正面に槍ヶ岳
振り返ったら富士山


小屋から10分でこの景色というのも贅沢です。
槍ヶ岳・穂高岳・富士山、
日本を代表する山々が一望できます。

寒いので長居はしませんでしたが
暖かければずっと山頂にいられたことでしょう。

山頂から戻ってきて夕食までは自分で珈琲を淹れたり、本を読んだり、布団でゴロゴロしたり。
テレビも温泉も無い、
景色以外の娯楽が無いからこそ、
のんびりした時間が流れます。

17:15お待ちかねの夕食。

受付の際に「肉料理か魚料理か」と聞かれたので肉と答えたところハンバーグが出てきました。いかにもなレトルトや冷凍ではない
美味しいハンバーグです。
右手前は秋限定の芋煮。

芋煮の具材はざっと里芋、蒟蒻、肉、ネギ、ナメコ、豆腐…
ふつう山小屋の汁物って具材が1〜2品入った味噌汁なんですが、明らかにおかしな量の具材が入っています。

芋煮

見た目はちょっと豪華な合宿所の夕食かもしれませんが…
いやいやちょっと待ってください、ここは山小屋ですよ。品数や具材多すぎやしませんか。

山小屋の食事事情については以前記事にも書きましたが、ヘリコプターで食材を上げているため仕入れは頻繁にはできないはずですし、
天気によって客数が大幅に変わるため、
食材の種類が多くなるほど、食材が余ったり足りなくなるリスクが高まるのです。

故にこの夕食は山小屋としては信じられないほどの豪華さなのです。純粋に感動しました。

そしてこの感動はまだ続きます。

夕食後、食堂は平日限定でランプの喫茶室になります。

写真は苦手で実際はもう少し雰囲気あります

メニューはこちら

メニュー内容はもう言わずもがな、
黒板を使ったメニューや下に並べられたメニューすらもお洒落。

ケニア深煎りのコーヒーも気になりましたが、流石に就寝前なので自家製ジンジャエールとチーズケーキのセットにしました。

下界のカフェよりよほど美味しい。
そもそもケーキのお皿がちょっとした
高級レストランで使うようなものでないかい?

もう昼間から感動が止まりません。

さらに追い討ちをかけるように
窓の外には安曇野と松本の夜景が光ります。

イメージ(これは外で撮りました)

これまで感動したホテルは数あれど、
ここまで良い夜を演出できた宿はなかったと思います。

もしパートナーができたら、
高級フレンチや高級ホテルでなくて、
ここに来たいなぁ、なんて、
男一人チビチビとケーキを食べながら思いました。

山にいることを忘れてしまうような演出をしつつ、山小屋だからこそ出せる雰囲気をだす。

山に登るための宿、という価値を超えた
新しい山小屋だと思います。


その日は20時に客室消灯のため
夜ふかしせずに寝床に入りました。


翌朝は5時30分に朝食。

スタッフさんは朝食の準備をしなければいけませんから、4時くらいには起きているかもしれません。朝昼夜と本当にご苦労様です。

朝食

朝も豪華。生野菜が豊富なのが嬉しいです。
保存と鮮度の点から山小屋で生野菜を出すのは難しいはずなのですが、一体どうなっているのでしょうか。


下山に備えて朝からたくさんいただいた後は
日の出を見に大天井岳に登ります。

大天荘滞在のハイライトでした。



 

 

このような山小屋こそ、これまで登山をしたことのなかった方に泊まってもらいたいなと思います。

接客もすごく良いというわけではないですし、
部屋は相部屋でwifiが無いどころか
電波もやや不安定です。

設備に関しては高級ホテルの足元にも及びませんが、
ここに来たからこそ見られる絶景と
何よりも自分自身の力でここまで来たんだという達成感。

それは山小屋だから味わえる感動体験です。

大天荘や燕山荘は初めての山小屋体験には良い場所ですが、
逆にここがスタンダードになってしまうと、
他の山小屋に行けなくなってしまうので、

何件か行った後に訪れることをお勧めします。

朝日に照らされた帰り道

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