第14回「食べる」を取り戻す

シン・米

この季節がやってきた。新米である。

米は少しかために炊いたのが好きなので、新米を炊くときは水を少な目にするのだが、それでも表面はつやつやと光り、食べると芯までみずみずしい。

ちょうど大相撲秋場所が始まったので、帰宅するとダイジェストを観るのだが、新米と大相撲というのは僕にとって危険な組み合わせだ。

大相撲を観ると、身体が大きくパンパンに張った力士に憧れ自分の肉体が貧相に思えて仕方なくなり、「もっと食べなくては」という思いに駆られる。

また、講談で相撲取りを扱った阿武松(おうのまつ)という話がある。
これがものすごい大食いで、1日に7升食べるというバケモノ。
1升が10合なので、70合食うということだ。
伯山の口演で聞いたのだが、この食いっぷりが気持ちよく、自分も炊きたてのおまんまをもりもりと食べたい気持ちになる。

露店の焼きそば

秋は新米の季節でもあるのだが、同時に祭の季節でもある。
ここふた月くらいで露店がでるような祭に何度か足を運んでいるが、
この間茨城の競輪場で行われた秋祭りはとにかく露店の飯が良かった。

定番で鉄板の鉄板焼きそばなのだが、これがどの屋台も長蛇の列。
大きな鉄板でものすごいソースの良い香りをさせながら焼いているので、それは客も引き付けられるわけだ。

例に漏れず引き寄せられた僕も1皿購入した。
つくば焼きそばと銘打ったそれは太くモチモチした麺を使い、ソースが良く絡んでいる。強火の鉄板で焼いた豚肉、キャベツも甘味が引き出され、フライパン焼いたのとは天と地の差である。

当日は風も強く、ああして外で焼いていては砂ぼこりも何もかも混入するのは必定だろうと思うのだが、隠し味になっているのか格別に美味しかった。

取り戻せた

はやいもので、この連載も14週目となった。
14週というと98日間であるから、僕が某感染症完治から100日近くが経ったことになる。なんとなく、食べることを取り戻せた感じがする。
次週からは『「食べる」を繰り返す』という題で続けていきます。