りんごほっぺ癖っ毛

 彼女はおべっかを使うのが苦手で嘘を吐かなきゃいけない状況だと、モゴモゴと口篭ってしまうので僕はよく彼女を揶揄って遊んでいた。3年くらいもう会っていない。元気にしてるかなとは気になるけど、自分から連絡を取るほどではない。明るい茶髪の癖っ毛で、丸い頬っぺたが彼女の特徴だ。癖っ毛の髪も丸いほっぺも気にしていて、誰かに揶揄われると頬が真っ赤になるのも可愛らしかった。二軒隣に住んでいるのに、時間帯が合わないのか会うことがなかった。

 6月のある日、雨が降っていた。夕方大学院の実習の帰りに傘を差していると、目の前に品のいいセーラー服を着た少女が前を歩いていた。その子が不意に小さな手帳(恐らく生徒手帳)を落としたので、「あの……落としましたよ。」と話しかけてみた。急いで拾って手渡すと革で縁取られていた生徒手帳は紙の部分がくっついてしまってしなしなになっていた。「あ、りがとうございます。」聞いたことのある声ではみかみ笑顔で振り返った。彼女は知っている顔だった。ほっそりして顔の肉は落ちてしまって癖っ毛はストレートパーマーをかけてしまっていたけど間違いなく彩ちゃんだった。「ひさしぶり、理人だよ。覚えているかな。」落ち着いた声で聞いてみると、泣きそうな声で「覚えてます。忘れませんよ。いっぱい意地悪されたこと!」なんだか愛おしくなってしまって抱きしめたいのを堪えて、「大きくなったね。」と握手を交わした。2人とも傘を差していて、時間が止まったような気がしていた。そのあと微笑みを交わしてそれぞれの家に帰った。うつくしく成長していた彼女に胸をときめかせた自分にやるせなさを覚えた理人は、罪悪感を覚えながらも彩に似たうさぎのような顔立ちのセクシー女優のビデオを抜いて自分を慰めた。絶頂に達するとき、さっき会った彩の顔がよぎり、あの純粋そうな少女とそういうことをしたいと思ってしまった。理人は顔立ちも良く性格も清く気遣いのできるなかなかいい男なので勿論恋人がいた。

 恋人にも彩にも申し訳なくなりながら、同じ女優のビデオをみて今度は鮮明に彩の顔を思い出し、頭の中でディープフェイクを作り出し、快感に浸った。蓋を開けてみれば彼女はまだ15歳の少女で、その桃のような頬も血色の良いやわらかそうな唇も大きくメロンのように膨らんだ胸も、熟しきっていない果実だ。いつか彩を手に入れ性的な交わりをすることを心に決めた理人は、恋人に連絡を入れた。今度いつ会う?といったシンプルな文言だったが、次会うときに別れを告げようと心に決めた。今日は彩の母親に、家庭教師として勉強をみるという約束をつけた。少しずつ、近づく。いつか手に入れる。

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