ステージ
僕はその時まで気づいていなかった。自分が客席から観ていた時は輝いて見えたステージの背景が、立つ側になったら観客の方を見ながら踊らなければいけないということ、
そして観客の方を見ながら同時にステージ上の自分を上から俯瞰して見る感覚も、アイドルの瞳がキラキラしているのはペンライトの光であるということも、
星空というよりは街のネオンみたいで、欲を含んだ感情をのせたそれはぎらぎらと輝いて不思議と僕の活力となった。
ステージの幕が降りた瞬間の体力が尽きながらも高揚して、アンコールを叫ぶファンの声が が遠くなっていく感覚が好きだ。
衣装を脱いでシャワーを浴びたらまたさっきまでの歓声と眩しい光たちがトンネルの向こうにうっすら見える光のように遠ざかっていく。
寂しさと少しの安堵で送迎バスの中で眠りにつく。
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