蛙化現象のお姫さま

 「え?支払いがPayPayだったから蛙化したの?嘘でしょ?だってあんた颯太先輩のこと半年くらい好きだったじゃん。まじか。」友達のマミコは呆れるくらい惚れっぽく飽きやすい。女友達の間でも評判の分かれる部分だった。「だってさ、好きな人にはカードでってスマートにお会計して欲しいじゃん!PayPay⭐︎って鳴るの余りにもカッコ悪い。なんか一気に冷めちゃった。好きだったけどさ。」

 マミコは色素の薄い茶髪でピンクがかった白い肌を持ち瞳も薄いブラウンだった。うさぎみたいで可愛らしい見た目とは裏腹に中々悪女だ。彼女に泣かされた男が何人もいる。しかし、清楚で可愛い雰囲気なので関わってみないとその凄まじさに気づけない。「あーあ夏の予定どうしよ。海とか行きたかったなぁ。」本人はただ呑気にケロッとしている。そうえば颯太さんのインスタのストーリーなんか病んでたなぁ。そういうことか、可哀想に。同情してしまう。「もうあんたはさ空想上の彼と付き合えば? 」皮肉っぽく言うと彼女は「別に私そんな理想高いかなぁ。かっこよくてスマートでお金持ってれば誰でも良いんだよ? 」こっちを見つめる彼女はすごく可愛い。言っている内容は可愛くないけど。「理想高い方だと思うよ。さっさと妥協しないと嫁き遅れるよ。」「えーやだ多絵ちゃん、小姑みたい。」

 マミコと話しているとイライラする。「じゃああたしバイトあるからじゃーね。」待ってーと追いかけるマミコを置いて早足でその場から離れる。なんとかならないかなぁ。ずっとこの調子で話されたら気滅入る。ぼんやり考えている。正直自分の男友達をマミコに紹介したくないし、困ったな。相手を探して落ち着いて欲しい。もう恋バナを聞かなくてもいいような。優しくて大人っぽい男の子どこかにいないかな。そんな人私が付き合ってもらいたいけど。考えていたらイライラしてきたので、煙草を咥え火をつける。バイト先の同僚が隣に来る。「タバコっすか。なんかあったんすね? 」
ーー中々鋭い。そうえばこいつ中々ツラがいい。「ねぇあんたさ、小動物系の可愛い女、紹介してやるよ。」「え?マジっすか。やった!!」話は決まった。日曜の10時新宿で3人で会うことになった。マミコは清楚な印象の白ワンピを着ていて、頬は紅潮していた。ただの清楚な可愛い女に見える。中身はメンヘラだが。

 そのバイト先の男、たくやというのだが、たくやにはシンプルで上品な格好をさせた。
 マミコはコンサルとか外銀勤めてそうな男がタイプだからだ。私の画策は上手くいったようだ。マミコはあからさまにタイプの男が目の前にいる時の態度だ。我々は駅近の雰囲気の良いカフェに入って簡単な自己紹介と雑談をした。大学生の私たちは話すタネに尽きなかった。2,3時間があっという間に過ぎ、映画を見ることにした。たくやが間に座って観た。映画の中の怖いシーンでマミコがたくやの手を握っているのを見逃さなかった。いい雰囲気の2人を残して、映画を見終わった後、私だけ先に帰った。2人が上手くいくといい。

 後日、2人が付き合ったという報告がマミコからあった。マミコはとても幸せそうで、我ながらいいことしたなと思った。しばらくマミコの恋バナはただの惚気になった。マミコには珍しく3ヶ月も続いたのち、プロポーズされたマミコは勿論、OKした。2人は婚約した。幸せそうなマミコを見られるのが嬉しかった。

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