情事迷い妻。

 「だから、君の愛情にはありがとうという気持ちはある。僕はもう君のことを性的には見れないし、そういう行為もできない。でも愛してる。恋人から、家族になったんだ。君が家のことをやってくれるから、働くことができる。君のお陰で幸せなんだ。どうかこれ以上俺に求めないでくれ。」そう、秀夫から告げられた麻美子はクラクラする頭を押さえながら自室に戻り、声を殺して泣いた。麻美子はまだ秀夫のことが男として好きだったからだ。もう女として抱かれることは一生ないのだと悟った麻美子は涙を拭い、あることを決めた。

 それはストリップショーに出演して、チップをくれた男と身体を重ねるということだった。ストリップショーが行われるショーステージのブッキングをしている元彼、鷹人【たかひと】のツテで出演することが決まった。あんな男のことは忘れよう、そう願いながら麻美子は会場へ向かう。大したことないと思っていたのに駅についてライブハウスに向かう途中、心臓がバクバクと高鳴った麻美子は、倒れそうになりながらなんとか到着した。仮面と不埒な、露出の多いドレスに着替える。これをショーの途中脱いで裸になるのだ。麻美子は、秀夫以外の男と身体を重ねたことはなかった。

 大学時代、鷹人と付き合うが彼はアロマンティックだったので2人が抱き合うことはなかった。高校時代、秀夫とは同じクラスになり、惹かれ合い、恋人になった。その頃は秀夫の方から積極的にセックスをしたがっていたのに、人は変わってしまうものだ。麻美子は胸のサイズがFカップもある中々いいスタイルに自信がある方だったので秀夫が何かにつけてセックスを拒むようになって、元々あった女としての自信はみるみる失われていった。仕事が忙しくて精力が遠のいていくのもあったかもしれない。簡単なハグやキス、手を繋ぐなどのスキンシップ以外、彼と触れ合うことはなかった。本番10分前、そんなことをぼんやり考えていた。

 次はわたしの出番である。ヒールをコツコツと鳴らし、まっすぐステージを歩いていく。スーツをきちっと着た会社員や、大学生っぽい男性、サブカルチックなカップルなどがわたしの身体をじっと見つめていた。欲情を孕んだ視線を浴びるのが久しぶりで胸が高鳴った。ショーの中心に着いたので、ドレスを華麗にサッと脱いでいく。自慢の胸や尻が露わになる。誰かがゴクっと唾を飲み込む音がする。会場はとても静かで、落ち着いたジャズミュージックだけが鳴っている。昔習っていたジャズダンスを裸で軽く踊る。ウインクをワインを片手に持ったサラリーマンにしたら、楽屋へ戻っていく。

 そのあと、仮面を外し着替えたわたしは観客に紛れる。先ほどウインクしたサラリーマンがまだ居たので、こっそり話しかける。「このあと、空いてますか?」肩をトントンと叩き話しかける。彼は驚いた顔をして「あなたはさっきの!とっても素敵でした。あなたがいちばん綺麗だった……。」彼は言った。「じゃあ、私がこのワインを頂いたら、ホテルへ行きましょう。」ゆっくり目配せをしながら彼の手を取り手を繋いだ。私がこんなに積極的になるのは生まれて初めてのことだった。

 赤ワインをゆっくりと飲み干し、私達はライブハウスを出て、近くのホテルへ向かい、セックスをした。「夫は私を見てももう反応しないんです……。私物足りなくて!」ため息をつく。彼が困った顔をして眉毛を下げる。なんだか子犬のようで愛おしい。「ですから、浮気をしたい訳ではないのです。まだ愛しているので、本当は彼に抱かれたいの。私、どうしたらいいの….。」彼の胸に泣きついた。メガネを外した彼は目がとろんとして見える。「僕にそれはわかりません。それは、夫さんの問題なので。でも時々こうやってセックスの相手をすることできます。あなたも気晴らしになるでしょうから。」麻美子は彼に思わず抱き付き、それに反応した彼と麻美子は濃厚なキスをし何度も身体を重ね、気づいたら朝になっていた。そうしてそういうことをする友達になった2人は時たまセックスを繰り返した。秀夫は相変わらずだった。それでも麻美子はその友達のお陰で身体の疼きが収まったのだった。

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