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短編小説【未来人NAO】

ある日_。
知らない誰かから、こんなメールが届いた…。

「この時代の西暦は、いつですか?」

イタズラか新手の詐欺か?
世間は、長引く新型ウイルスで自粛の中、
良春(よしはる)も、在宅勤務していた。
とはいっても、車の営業のため仕事はほとんど無く
暇をもて余していたので、少し付き合ってみた。

「2020年ですよ。」

すぐに返事がきた。
「えっ!?そうですか…。ありがとうございます。」

「どういうことですか?」

「私、2180年から来た者で、本当は10年前の2010年に行く予定だったんです。」

ヤバいと思った!

即ブロックしようとしたら…
こんなメッセージが入って来た。

「あのう…カニ、カニって美味しいんですか?」

「は?」

「私の時代には、海産物が一切食べられないんです。カニやうなぎ…それからマグロ、イカを食べる調査で未来からやって来ました。」

「頭大丈夫?通報しますよ。」

「すみません。この時代には、まだタイムトラベルなんて存在しませんよね。せめてカニを食べるマナーだけでも教えて頂けませんか?」

「その前に、僕のI'Dどうやって知ったの?」

「適当に打ったら、あなたに届きました。ご迷惑おかけしてごめんなさい。」

信じた訳ではないが…
悪い印象を受けなかったので、返信した。

「マナーは、特に無いですよ。殻から身を取って、ポン酢やお好みのタレにつけて食べるだけです。」

「そうですか。でも図鑑でしか見たことないから、食べるのに…抵抗があります…。」

「普段、何食べているんですか?」

「一粒で全ての栄養を補えるのと、満腹中枢を満たす二種類のサプリがメインです。」

「えっ!?米や肉は?」

「稀に食べますよ。ただ…私達の時代は食糧難でして…。」

「大変ですね…。」

「いえ、生まれた時からサプリですから。慣れてますよ。長々やり取りありがとうございました。」

「もし良かったら、わからないことあれば何でも聞いて下さい。」

「ありがとうございます。」

やり取りから、三日経っても音沙汰はなかった。
なんとなく、気になり…
良春から、こんなメールを送ってみた。

「こんにちは。カニ食べました?」

「はい。何とか…。身は美味しかったのですが…茶色いぐちゃぐちゃした部分は、嫌でした。」

「カニ味噌のことですか?」

「カニ味噌って言うんですか?ほとんど残しちゃったからお店の方に悪いことしちゃいました。」

「次は、何を食べに行くのですか?」

「うなぎですね…。」

「抵抗ありますか?」

「はい…蛇のような生き物…本当に食べれるんですか?」

「蒲焼きといって、タレかけて食べるんですよ。美味しいですよ。」

「はぁ…。頑張って食べてみます。」

うなぎの話をしていたら、食べたくなり買いに行った。

いつ、うなぎを食べに行くのかは聞いてなかったが…
あれから一週間が経つ…
また気になって、良春の方から連絡した。

「うなぎ食べました?」

「はい。とても美味しく頂きました。」

「今度は、何を召し上がるのですか?」

「イカです。」

心なしか…避けている?
素っ気ない定型文のような文面から、そう感じた良春は、ありきたりな挨拶をしてやり取りをやめた。

だが、良春の勘違いだったようだ。

未来人と名乗る彼女から、メールが来たのは二日後。

「あのう、イカのお刺身頂いたのですけど…イカ焼きってのを食べるには、どこで食べれます?」

なぜか舞い上がって返信した。

「イカ焼きは、夏に祭りとか海の家とかで売ってますね。」

「夏にならないと、食べれないのですね?」

「ちょっと待って下さい。ネットで調べてみます。」

時期が悪かった。
イカ焼きを食べれる店はあったが…
新型ウイルスの影響で、閉じていた。
もう一つの方法として、自分で作ることだ。

材料と調理法を送信してあげた。
既読はつくが…返事がこない…。

分かりづらかったか?

違った。

「ご丁寧にありがとうございます。でも私、料理一切出来ないんです。ごめんなさい。でも一応イカは食べたことになるので、報告書作ります。」

何とか、イカ焼きを食べさせてやりたい!
刺身も旨いが、全くの別物だ。

(そうだ!俺が作ればいい!!)

良春も、料理は得意ではなかったが…
ネットで買ったイカ焼きセットは、
イカの姿焼きを焼いて、付属のタレを塗るだけの簡単な物。

味見してみる。

「うん!イケる。」

早速、画像も載せてメールした。
「あのう。イカ焼き作りましたので、よろしければ食べますか?」

「わざわざありがとうございます。嬉しいですが…次のマグロの調査に入っていますので…。」

「気にしないで下さい。また何かあったらいつでも言って下さいね。」

もしかしたら、イカ焼きを渡すついでに…
彼女に逢える…ことを期待していた方が強かったかも知れない…。

良春は、ここ最近ずっと彼女のことばかり考えていた。

そう_。

未来人と禁断の恋に落ちた話_。

この物語はフィクションです。

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