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地域に根付くものづくりの形「齋藤染物店」

埼玉県・秩父市に拠点を構える「齋藤染物店」。明治6年に創業され、約140年間藍染めののれんや袢天(はんてん)を制作し、地域に根付いたものづくりを展開されています。今回は齋藤染物店へ訪問し、お話を伺いました。

丹精込めて作られた美しい色調

齋藤染物店は、140年前に創業されました。主に、藍染の半纏やのれんの製造・販売や、「秩父紺七」というブランドとしてバッグやてぬぐいの製造・販売も行っています。また、最近の活動として、半纏の生地を裂いて織り、バッグなどの小物を製作されています。

齋藤染物店では、藍染めの工程をすべて手作業で行なっています。まず、下絵を切り抜いて型をつくり、染める準備をしていきます。染めない部分(模様になる部分)を糊でふせ、その後、乾燥させた反物を藍がめに入れて染めます。この作業を「かため」と言い、染める作業を何度も繰り返すことで、濃い色を出すことができます。

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「かため」を終えた反物を天日干しし乾燥させ、再び藍がめの中に反物を沈めます。そして、引き上げて空気に触れることで、藍が発色するようになります。最後に糊を洗い落とし、天日干しして乾かせた生地を縫製し、商品が完成します。

このように藍染めにはいくつもの工程があり、丹精込めて作られた藍色は、まさに職人たちの感性によって成される美しさです。

地域に根ざした「循環」とものづくり

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もともと、祭りの衣裳や仕事着としての半纏を作っていた齋藤染物店。秩父にもいくつか紺屋がありましたが、今では埼玉においても数軒のみと、大きく減ったそうです。その背景には、藍染の半纏の需要が減り、「銘仙」という着物の生地の需要が上がったことで、染めから織りへと地域の産業が移行していった秩父における時代の流れがあるといいます。

そうした藍染め文化自体が縮小する中で、今もなお藍染めのものづくりを続けている齋藤染物店。埼玉県・秩父市には「秩父夜祭」という、2016年にユネスコ無形文化遺産に登録された冬の祭りがあります。その祭りでは、特定の半纏を着ていないと屋台を引けない文化があるため、藍染め半纏の需要があるそうです。このように、秩父という地域の風土や文化といった「循環」の中で、藍染めは今もなお地域の人々に愛されているのです。

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まさに、藍染めは地域から地域へ向けたものづくり。老若男女に向けて、現代の生活に馴染むような「藍染め」にしていきたいと、齋藤さんは語っていました。

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古くから日本でも人々に親しまれてきた藍染め。今では、工場自体が少なくなり文化の伝承が厳しい印象があります。

今回、齋藤染物店を取材する中で、地域に根付く「祭り」という文化と「ものづくり」の文化が混ざり合うことで、変わりゆく時代の中でも不変的なエネルギーを感じました。廃棄されてしまう藍染めの布を裂織の生地にし小物を製作されるなど、新しいことにチャレンジし続ける齋藤染物店。いかに変化する時代に溶け込むものづくりをし続けていくか、という情熱を感じる時間でした。

地域に根付く文化は、古今東西様々な土地にあるはず。TSUNAGUでは引き続き、そうした日本の文化を探っていきます!

【参考】
・齋藤染物店「制作工程
・さいたまつり 埼玉のまつり公式紹介サイト「秩父夜祭


Written by Mari Kozawa

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