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ビリー・ジョエルのヒット曲を最高の選曲と音質の『ビリー・ザ・ベスト』で聴く方法

お気に入りのアーティストのアルバムを全て揃えたい、というのは、ファン心理であれば当然のことでしょう。

もちろんそうするのことができるのであれば、それに越したことはありませんが、あいにく私たちは音楽にばかりお金を掛けるわけにはいきません。

そこで、最少コストで、そのアーティストのことを十分に知ることのできるアイテムとして、ベスト・アルバムを聴く、ということが、非常に有効な手段となってきます。

そして、ベスト・アルバムの中には、その選曲の妙から、ごく一握りですが、オリジナル・アルバムよりはるかに優れたベスト・アルバムというものが、確かに存在するのです。

今日は、そんな数少ないベスト・アルバムを1枚紹介しましょう。

それは、ニューヨークの吟遊詩人、ビリー・ジョエルのベスト・アルバム『ビリー・ザ・ベスト1&2(Greatest Hits VolumeⅠ&VolumeⅡ)』です。

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ビリー・ザ・ベスト1&2

収録曲

Disc1

1.ピアノ・マンPiano Man
(全米25位)

73年11月にリリースされ、全米25位まで上昇したビリーにとって初めてのヒット曲。

71年に発売されたデビュー・アルバム
コールド・スプリング・ハーバーCold Spring Harbor)』リリース後、泣かず飛ばずの状態が続いていたビリーは、ロサンゼルスやサンフランシスコのバーでピアノ弾き語りをして生活していました。

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ピアノ・マン

おそらくその時の経験を元に書かれている、バーに集まる様々な人物をピアノ奏者の視点から描いたこの曲の歌詞は、まるで映画のワンシーンを見ているかのよう。

この曲のタイトルにふさわしいアタック音の深い余韻が心地よいピアノと、効果的に挿入されるハーモニカ、そしてどこまでも伸びていくようなビリーのボーカルが堪能できる永遠の名曲です。


2.キャプテン・ジャックCaptain Jack

シンセサイザーとピアノに乗って歌われるビリーのボーカルが素晴らしい1曲。
バンド・アンサンブルも鉄壁で、途中で挿入されるスワンプ・ロック風のギター・フレーズが曲にアクセントを与えています。

(以上2曲、アルバム『ピアノ・マンPiano Man)』収録)


3.エンターテイナーThe Entertainer
(全米34位)

74年に発売されたサード・アルバム『ストリートライフ・セレナーデStreetlife Serenade)』からシングル・カットされ全米34位を記録したビリーにとって2枚目のTOP40ヒットです。

ギターのカッティングとシンセサイザーが小気味良いリズムを刻むアップテンポなナンバーとなっています。

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ストリートライフ・セレナーデ


4.さよならハリウッドSay Goodbye To Hollywood
(全米17位)

76年のアルバム『ニューヨーク物語Turnstiles)』からのシングル。

発売当時は、アルバムとともにヒットせず、このシングルも全米TOP40にはランクインすることができませんでした。

後に、初期の曲を収録した81年のライヴ・アルバム『ソングズ・イン・ジ・アティックSongs in the Attic)』にて再演されたライヴ・バージョンが同アルバムからシングル・カットされ全米17位まで上昇するヒットとなります。

当時人気絶頂だったビリーのコンサートの模様を収めたこのライブ・バージョンは、観客の熱狂ぶりも手伝ってスタジオ・アルバム・バージョンを遥かに凌ぐグルーヴ感を得た最高のテイクに仕上がっています。


5.ニューヨークの想いNew York State of Mind

アルバム『ニューヨーク物語Turnstiles)』収録曲。

シングル曲ではないものの、コンサートで歌い継がれ、今ではビリーの代表曲の1つとなっています。

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ニューヨーク物語


6.ストレンジャーThe Stranger

7.イタリアン・レストランでScenes from an Italian Restaurant

8.素顔のままでJust the Way You Are
(全米3位)

9.ムーヴィン・アウトMovin' Out(Anthony's Song))
(全米17位)

10.若死にするのは善人だけOnly the Good Die Young
(全米24位)

11.シーズ・オールウェイズ・ア・ウーマンShe's Always a Woman
(全米17位)

77年に発売され、ビリーの名を一躍有名にした大ヒット・アルバム
ストレンジャーThe Stranger)』。

このアルバムからのファースト・シングル「素顔のままで」はビリーにとっての初のTOP10ヒットとなり、グラミー賞最優秀レコード賞と最優秀楽曲賞の2部門を受賞します。

素顔のままで」のヒットの効果もあり、アルバムは1,000万枚のセールスを上げ、オリジナル・アルバムの中ではビリーにとって最大のヒット作になりました。

このアルバムからは、先の「素顔のままで」に続き、

ムーヴィン・アウト」、
若死にするのは善人だけ」、
シーズ・オールウェイズ・ア・ウーマン

がシングルカットされ、いずれもスマッシュ・ヒットとなっています。

(以上6曲、アルバム『ストレンジャーThe Stranger)』収録)

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ストレンジャー


Disc2

1.マイ・ライフ(My Life)
(全米3位)

2.ビッグ・ショットBig Shot
(全米14位)

3.オネスティHonesty
(全米24位)

78年に発売され、ビリーにとって初の全米No.1アルバムとなった
ニューヨーク52番街52nd Street)』からのシングル・ヒット3曲です。

オネスティ」は、アメリカよりも日本において特に人気の高いナンバーで、日本盤の『ビリー・ザ・ベスト1&2』にのみ、アメリカ盤収録の「ドント・アスク・ミー・ホワイ(Don't Ask Me Why)」に代わって収録されています。

アルバムのレコーディングでは、ジャズ・フュージョン系のミュージシャンを多数起用するなど、前作とは異なるサウンド・カラーを持たせることに成功しました。

本アルバムで、ビリーは、グラミー賞の最優秀アルバム賞と、男性ポップ・ボーカル部門の2部門を受賞しています。

(以上3曲、アルバム『ニューヨーク52番街(52nd Street)』収録)

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ニューヨーク52番街


4.ガラスのニューヨークYou May Be Right
(全米7位)

5.ロックンロールが最高さIt's Still Rock and Roll to Me
(全米1位)

ジャズ・フュージョン色の強かった前作から一転して、ロック色の強い仕上がりとなった80年発売のアルバム『グラス・ハウスGlass Houses)』からのシングル2曲。

前作に引き続き、2作目の全米No.1アルバムとなった本作からの第2弾シングルとして発売された「ロックンロールが最高さ」はビリーにとって初の全米シングル・チャートの1位を獲得しています。

アルバムは、グラミー賞の男性ロック・ボーカル部門を受賞。

(以上2曲、アルバム『グラス・ハウスGlass Houses)』収録)

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グラス・ハウス


6.シーズ・ガット・ア・ウェイShe's Got a Way
(全米23位)

81年に発売されたライヴ・アルバム
ソングズ・イン・ジ・アティックSongs in the Attic)』からの第2弾シングル。

このライヴ・アルバムは、ビリー自身の意思で、敢えて大ヒットアルバム『ストレンジャー(The Stranger)』よりも前の4枚のアルバムから選曲されています。

初期の隠れた名曲が、最高のライヴ・パフォーマンスにより新たな生命を吹き込まれて見事に蘇った傑作ライヴ・アルバムです。

(アルバム『ソングズ・イン・ジ・アティックSongs in the Attic)』収録)


7.プレッシャーPressure
(全米20位)

8.アレンタウンAllentown
(全米17位)

9.グッドナイト・サイゴン~英雄達の鎮魂歌Goodnight Saigon
(全米56位)

82年に発売され、全米7位を記録したアルバム
ナイロン・カーテンThe Nylon Curtain)』からのシングル3曲。

本作は、今までのビリーの作風とは異なり、当時のアメリカの社会問題を扱ったメッセージ色の強い歌詞と、中期ビートルズを彷彿とさせるサウンド・プロダクションが際立つ作品となっています。

発表当時、ビリーは、このアルバムについて、「僕にとっての『サージェント・ペパーズ』」とコメントしていました。

(以上3曲、アルバム『ナイロン・カーテンThe Nylon Curtain)』収録)

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ナイロン・カーテン


10.あの娘にアタックTell Her About It
(全米1位)

11.アップタウン・ガールUptown Girl
(全米3位)

12.ロンゲスト・タイムThe Longest Time
(全米14位)

83年のアルバム『イノセント・マンAn Innocent Man)』(全米4位)からのシングル3曲。

50、60年代のオールディーズやモータウンサウンドをベースにしたポップ・テイスト溢れる本アルバムからは、上記3曲以外にも、

イノセント・マンAn Innocent Man)」
(全米10位)、

夜空のモーメントLeave a Tender Moment Alone)」
(全米27位)、

キーピン・ザ・フェイスKeeping the Faith)」
(全米18位)など、

多数のヒット・シングルが生まれています。

(以上3曲、アルバム『イノセント・マンAn Innocent Man)』収録)

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イノセント・マン


13.オンリー・ヒューマンYou're Only HumanSecond Wind))
(全米9位)

14.ナイト・イズ・スティル・ヤングThe Night Is Still Young
(全米34位)

アルバムの最後を飾るのは、当時の最新シングル2曲です。

オンリー・ヒューマン」は若者の自殺をテーマにした作品。
アレンジは当時(85年)の流行の音で、シンセサイザーをフィーチャーしたエレクトロ・ポップ風のサウンドとなっています。


『ビリー・ザ・ベスト1&2』を聴く時に、気をつけるべきこととは?

この『ビリー・ザ・ベスト1&2』のCDは、以下の3種類がラインアップされています。(なぜストリーミング配信ではなくCDを取り上げるのかは、後ほど説明します。)

①1985年発売の初盤CD(非リマスター盤)(CD番号:CSCS 5071~2)

②2003年発売のリマスターCD(CD番号:MHCP110~111)

③2004年発売紙ジャケリマスターCD(CD番号:MHCP-546~7)

ここで、皆さんに気をつけていただきたいのが、

この『ビリー・ザ・ベスト1&2』を聴く際には、敢えてTSUTAYA等で置いてある2003年のリマスターCD(②)をレンタルせずに、

1985年発売の初回盤のCD(①)をレンタルする
または
日本でのみ販売している2004年の紙ジャケリマスターCD(③)

を購入するようにして欲しいということです。

それは、2003年のリマスターCD(②)をお勧めできない2つの理由があるからです。


【2003年のリマスターCDをお勧めできない2つの理由】

(1)元々貴重なシングル・バージョンで収録されていた7曲がアルバム・バージョンに差し替えられてしまっているから

(2)2003年リマスターCDは、音質面で劣っているから

以下、その理由の詳細について、説明していきましょう。


収録曲の一部が差し替えられた2003年リマスターCD

実は、この『ビリー・ザ・ベスト1&2』は、最初(85年)の発売時(①/CD番号:CSCS 5071~2)には、以下の7曲が、シングル・バージョンにて収録されていました。

キャプテン・ジャック
さよならハリウッド」(ライヴ・シングル・バージョン)
素顔のままで
マイ・ライフ
ビッグ・ショット
プレッシャー
あの娘にアタック

これらのシングル・バージョンは、アナログの7インチ・シングルでしか聴くことの出来ない大変貴重なバージョンでした。
つまり、この『ビリー・ザ・ベスト1&2』は、初心者向けの単なるヒット曲集ではなく、マニアにも嬉しい別テイク(上記のヒット曲の貴重なシングル・バージョン)が収録されたアルバムだったのです。

ところが、理由は定かではないのですが、何故か、2003年のリマスター盤(②/CD番号:MHCP110~111)の発売時に、これらのシングル・バージョンが、全てアルバム・バージョンに差し替えられてしまったのです。

こうして、リマスター盤では、これらの貴重なシングル・バージョンを聴くことの出来ない状態がしばらく続いていましたが、ここで、奇跡が起きます。

何と、2004年に、日本のみで発売された紙ジャケのリマスターCD(③)に、これらのシングル・バージョンが収録されたオリジナル・マスターが使用されたのです。

もちろん、日本盤なので、「ドント・アスク・ミー・ホワイ」の代わりに「オネスティ」が収録されており、厳密には、USオリジナルの仕様とは異なりますが、何はともあれ、この紙ジャケリマスターCDの発売により、これらのシングル・バージョンが、リマスター音源にて聴くことが可能になりました。

こうして、現時点では、この2004年発売の

ビリー・ザ・ベスト1&2(紙ジャケット仕様)』(③)
(日本盤のみ発売)

を手に入れることが、シングル・バージョンを含んだオリジナル仕様で、『ビリー・ザ・ベスト1&2』のリマスター音源を手に入れる唯一の方法となっています。

したがって、繰り返しになりますが、以下の3種類ある国内盤(日本盤)の『ビリー・ザ・ベスト1&2』のうち、リマスターされている③を選ぶのがベストの選択で、もし不可能であれば、同じ音源(=マスターを元にしたCD)で、かつリマスターされていない①を選べば良い、ということになります。

①1985年発売の初盤CD(非リマスター盤)
(CD番号:CSCS 5071~2)

②2003年発売のリマスターCD
(CD番号:MHCP110~111)

③2004年発売紙ジャケリマスターCD
(CD番号:MHCP-546~7)


1曲目の「Piano Man」に音揺れが存在する2003年リマスターCD

また、②2003年のリマスターCDは上記の他にも音質面で、致命的な欠陥があります。

それは、アルバムのDisc1の1曲目「ピアノ・マン」の4:31の部分に音揺れが存在することです。

恐らくは、リマスター時(2003年)のマスターテープの劣化によるものだと思われますが、私が実際に確認したところ、①と③のCDには該当部分(4:31)に音揺れは存在しませんでした。

従って、ここからはあくまで推測になりますが、

①と②は異なるマスターテープから作られており、

①=1985年の日本でのマスターテープ
→ビリー・ザ・ベストの米国オリジナルのマスターテープをコピーし、「ドント・アスク・ミー・ホワイ」を「オネスティ」に差し替えたもの

②=2003年リマスター時に新たに作られたマスターテープ
→個々のアルバムを切り貼り(コピー)して新たにビリー・ザ・ベストのマスターテープを作成し、それをリマスターしたもの。その作成時に元のアルバム『ピアノ・マン』のマスターテープが劣化しており音揺れが生じた

③=①を元にリマスター作業を行った
→2004年時点で、①のマスターテープの保存状態が良く、『ピアノ・マン』の該当部分に音揺れが生じていなかった


以上のことから、音質面でも、①または③を選択すべきであることが分かります。

ちなみに、この紙ジャケリマスターCD(③)はAmazonにて2,850円で販売しています。(2017年8月時点)

この値段で購入し、MacのiTunesにて非圧縮音源にてリッピング後、同じ価格でAmazonにて販売出来れば、実質的には2,850円×15%(Amazonの手数料)=427円というレンタルCD並の価格で、ビリー・ジョエルの最高の音源を手にれることが可能になります。

(紙ジャケは限定盤で、市場に出回っておらず希少価値があるため、購入した価格で再出品したとしても、売れる確率は高いと私は踏んでいます)

また、そこまでお金を掛けたくないという方は、TSUTAYA等でレンタルされている①を見つけてきて、リッピングすればいいだけです。
(ちなみに渋谷駅前のSHIBUYA TSUTAYAには、①の在庫(レンタル)が存在しました。)

さて、ここまでは、この『ビリー・ザ・ベスト1&2』を最高の選曲(シングル・バージョンを含む)と(音揺れの無い)最高の音質で聴くために選ぶべきCDについて解説してきましたが、ここからは、CDではなく音楽ストリーミングサービスにて、最高の選曲と音質の『ビリー・ザ・ベスト1&2』(①または③のバージョン)を聴くための方法を解説してみたいと思います。


音楽ストリーミングサービスで『ビリー・ザ・ベスト1&2』を最高の選曲と音質で聴くための方法とは?

それでは、ここからは、音楽ストリーミングサービスにて、『ビリー・ザ・ベスト1&2』を、最高の選曲と音質で聴くための方法を、お伝えしていきます。

ここまでの記事を読んでいただければお分かりになると思いますが、現在、日本の市場に出回っている『ビリー・ザ・ベスト1&2』の音源(マスター)が以下の2種類になります。

②2003年発売のリマスターCD用の音源(マスター)

③2004年発売の紙ジャケリマスターCD用の音源(マスター)

このうち、1曲目「ピアノ・マン」の4:31の部分に音揺れが無く、数曲が貴重なシングル・バージョンで収録されている③の音源を採用している音楽ストリーミングサービスを探し出すことがポイントになります。

それでは、主な音楽ストリーミングで、②と③の音源(マスター)のどちらを採用しているかを検証していきましょう。

「②2003年発売のリマスターCD用の音源(マスター)」を採用している音楽ストリーミングサービス

Apple Music

Google Play Music

・Spotify

LINE MUSIC


「③2004年発売紙ジャケリマスターCDの音源(マスター)」を採用している音楽ストリーミングサービス

AWA

・Amazon Prime Music


何と、驚くべきことに、AWAとAmazon Prime Musicにて③の音源を採用していることが判明しました。

つまり、音楽ストリーミングサービスのうち、AWAとAmazon Prime Musicを選べば、音楽ストリーミングサービスでも、『ビリー・ザ・ベスト1&2』を、最高の選曲と音質で聴くことができます。


今回の記事のまとめ

◎ビリー・ジョエルの『ビリー・ザ・ベスト』は、全盛期のビリーの作品群の中から、最高の選曲で構成された、文字どおりベスト・アルバムです。

◎ただし、2003年リマスター盤を選んではいけません。

◎CDでは、オリジナルのシングル・バージョンを収録した音揺れの無い85年盤(上記①)か2004年の紙ジャケCD(上記③)を選ぶのがベストです。

◎音楽ストリーミングサービスで、2004年の紙ジャケCD(③)のマスターを採用しているのは、AWAAmazon Prime Musicになります。


この記事を参考に、皆さんが、ビリー・ジョエルのヒット曲を最高の音質で聞くことができれば、筆者としてこれに勝る喜びはありません。


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