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【Case Study】大分と福岡のつながりを育み、交流が生まれる「紡ぐマルシェ」

PROJECT

「紡ぐマルシェ」

ISSUE

人口減少・超高齢化といった国全体の大きな課題に対し、内閣府が主導して取り組む、「関係人口創出・拡大のための対流促進事業」。

「紡ぐマルシェ」は、内閣府が推進する関係人口の創出・拡大モデル事業として採択されたもの。
イベントでは、参加者同士の心の距離を近づけることによる、地域・コミュニティ間の関係構築について実証を行いました。

本プロジェクトを契機に、地域共創活動に取り組むNEXCO西日本と事業パートナー連携協定を締結。
ツナガルの持つノウハウや実行体制と、NEXCO西日本が持つ高速道路インフラのアセットを掛け合わせ、関係人口創出・拡大を目的としたイベントプロデュースを行いました。

OVERVIEW

開催概要
名称:紡ぐマルシェ
日時:
・2023年10月14日(土曜) 11:00 - 18:00
・2023年10月15日(日曜) 11:00 - 16:00
会場:ガーデンズ千早 内 ちはや公園 (福岡県福岡市東区千早3丁目6-37)
出店者:大分県中津市・佐伯市・竹田市を中心とした飲食・物販事業者・生産者
主催:ツナガル株式会社
共創パートナー: NEXCO西日本九州支社
協力:ガーデンズ千早・中津市・佐伯市・竹田市

コンセプト
大分県のたくさんの「美味しい・楽しい」と、千早エリアの「未来」を紡ぐ2日間のマルシェ。食文化や地域と「つながり」を育み、想いを寄せ合う空間にようこそ。
このマルシェの主役は「人」。自然を紡ぐ料理人や生産者から豊かな恵みの循環を学びましょう。そして、福岡のまちを紡ぐ人と共にコミュニティが生まれます。2日間で生まれる物語を紡ぐのは、参加する皆さんです。

SOLUTION

実施期間:2023年6月~10月
コミュニティリサーチからイベント当日運営までの工程を、約4ヶ月間で実施しました。

関係人口を作ることを目的に、二つの地域のあいだに新たなコミュニティが生まれるプロセスをステップ化して設計しました。
以下に、取り組みの具体的な注力ポイントをご紹介します。

①コミュニティリサーチ:コミュニティ選定と課題ヒアリング

共創プロセスの設計にあたっては、各ステークホルダーの課題やニーズといったインサイトを深く知る必要がありました。
そこでツナガルは、趣旨に賛同するコミュニティを選定し、キーマンにインタビューを実施。そのフィードバックをもとに、イベントを通じて提供する関係各者それぞれへのベネフィットを設計しました。

②共創オンボード:ビジョンの策定、その共有と浸透

プロジェクト関係者全員を招集したキックオフミーティングを開催。
「紡ぐマルシェを通してどういった価値変化、行動変化を作りたいか」「地域の活動に共感する、応援したくなる状態とは」といったテーマに対して意見交換をし、全体の目線合わせを行いました。

さらに、「紡ぐマルシェ」の目指すビジョンを以下2点に策定。
プロジェクト関係者が、自らの役割を明確に理解してコミットメントできるように、ビジョンの共有と浸透を丁寧に実施しました。

■「関係」を育む体験型マルシェ
人々の移動の可能性を拓き、グローバル×ローカルのつながりを持つツナガルとNEXCO西日本が共同で九州の食の魅力を提供。「人生を変える出会いづくり」を中心とした体験を提供し、食や食文化が持つ感動を共有し、コミュニティ形成を目指します。
■共創体験がつくる「熱量資源」
地域の食に関するワークショップや地域をテーマにした絵本づくりなど、「食」をきっかけに双方への交流意欲を引き出します。これを「熱量資源」として捉え、交流・支援・購買・共創といった長期的な関係性を構築します。

③プロローグ:交流や対話から互いを知る機会を提供

ツナガルでは、関係人口創出をはじめとするコミュニティ同士の繋がり形成支援において、「共感」「ギブアンドテイク」という視点を大切にしています。

互いのパーソナリティーや活動背景を知ることは、共通点に気づくきっかけとなり、相手への関心を高めます。

また、対等な関係性は、相手を知ることから生まれると考え、複数回の交流の場を設け、現地訪問や交流イベントを実施。
互いを知る機会を提供し、持続的な交流における内発的動機づけを与えました。

④コミュニティ形成:役割を定義し相関関係を整理

プロローグで引き出したそれぞれの役割やニーズを根拠に、ステークホルダーマップを作成してプレイヤーの相関関係を可視化しました。

また、各ステークホルダー間の利害関係の仮説を立て、「誰と誰に関係性を作れば目指す成果に結びつくか」を整理し、相関関係を再定義しました。

➄祭りとしてのマルシェ:コミュニケーションプラットフォームの導入でイベント出店者・一般来場者間の交流を促進

本イベントでは、ツナガルが新規開発したプロダクト「関係マイレージ」を導入しました。

「関係マイレージ」は、マルシェなどのイベントにおける出店者・一般来場者間の関係性構築を可視化し継続性を高めることを意図したツールで、
「出店者一覧」の画面から、出店者のプロフィールやSNS、活動の背景などのメッセージが閲覧できます。

こうしたコミュニケーションプラットフォームの活用で、出店者と一般来場者のあいだに会話が生まれるきっかけの創出や、イベント以後の交流が促進されることを狙います。

⑥コミュニティ活動の継続:取り組みの自走化

イベント開催翌月の2023年11月には、第2弾となる「紡ぐマルシェvol.2〜別府編〜」が実施されました。

これは、「地域住民と九州の各地のコミュニティを結ぶ活動を引き継ぎたい」という想いから、ガーデンズ千早主催で横展開されたもので、取り組みの自走化に成功した事例となりました。

RESULT

出店者:20事業者
マルシェ参加者:2,000人
関係マイル登録数:70
コラボレーションプロジェクト数:3
交流会実施回数:4回(※そのうち現地ツアー実施1回)

COMMENT

西日本高速道路株式会社九州支社 地域共創担当部長 
濱野昌志さん

ー「紡ぐマルシェ」はNEXCO西日本とツナガルの連携初となるイベントでした。成果への所感をお聞かせください。
複数地域と連携して進めるプロジェクトに参加するのは、NEXCO西日本にとって今回が初の試みでした。
活動のなかで見えてきたのは、広域的な連携をもつことによる相互作用やコラボレーションの可能性です。
「熱量資源や関係の強さをもって行動変容を起こせるかの可能性を探りたい」というのが当初の期待感としてあったのですが、
目的をもって地域で活動している人たちとつながることによって、新しい価値が生まれる兆しを感じられたことが一番の収穫でした。

ー取り組みを通じて得られた価値変容はありましたか?
今回の取り組みで知り合った、地域で活躍する方々は、高速道路でいうところのインターチェンジやサービスエリアのように、人を集めるパワーを持っていると感じました。
これまで高速道路は「地域」と「地域」をつないでいるけれど、地域なかの「誰」と「誰」をつなぐという発想はしてこなかった。
そこにツナガルが「ヒトをつなげる機能」という高速道路の強みを引き出してくれたことによって、人を基点とした新しいかたちの高速道路道路の可能性を感じました。

ー今後の展望についてお聞かせください。
NEXCO西日本が次のステップとして取り組みたいのは、「紡ぐ」こと。
関係人口や交流人口と呼ばれる人たちに対して、「紡ぐ」という言葉をポイントに置きながら活動していきたいです。
取り組む意識を「作る」から「紡ぐ」に変化させていく。
つまり、心を通わせる、織り成すのような意味合いで、高速道路や地域と地域を紡いでいきたいと思っています。

さらに、ツナガルがNEXCO西日本の新しい価値を特定し引き出してくれたように、NEXCO西日本としてもツナガルの良さや価値を表現し、互いのハード・ソフトの強みをかけあわせた共創事業を、九州を基点に行っていきたいです。

IMPRESSION

ツナガル株式会社 プロデューサー 
竹林謙 (「紡ぐマルシェ」プロジェクトオーナー)

このプロジェクトの根幹には、私たち自身が地域事業者への尊敬と憧れを持っているところが起点になっています。

地方で育った私は、「都会の大企業に就職すること」が成功だと思っているところがありました。
しかし、あるとき私の認識とは異なるかたちの生き方を実践している人がいることに気づいたんです。

それは、地域に住まい、地域の中で生業を生み出す方々の存在でした。
「田舎だから何もない」でなはく、地域に広がるフィールドと無限の可能性に気づき、価値転換を生み出しています。そんな存在が憧れでもあり、心の中では同志でもあります。

現代はVUCAと言われる先行き不透明な時代。
企業に雇用されているから安心できる、というわけではありません。生き抜いていくには、自分自身でプロデュースする力を身に着けることが必要です。
そして、こうした不安定な時代を個で生き抜く先駆者として、都市の人たちが地域事業者の方々の活動から得られる学びは大きいものになると思います。

「紡ぐマルシェ」では、都市で暮らす人と、地域に根ざす人をつなげました。
すでに地域間交流ははじまっていて、つながることで生まれる相乗効果を実感しています。
今後も、立場やバックグラウンド関係なく横のつながりを作る活動を、地域を越えて広げていきたいと考えています。

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