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あしたから ものづくり起業

会社をつくって、あっという間に5ヶ月が経過しようとしている。商品はまだない。現在、アラフォー以降の大人女性向け商品の開発真っ只中で、七転び八起き、三歩進んで二歩下がる。いや、もしかしたら一歩進んで二歩下がってないか?状態の日々である。
だが、これがものすごく楽しい日々である。
最近(といっても数ヶ月前)読んだ「あしたから出版社」に影響をうけた私が「あしたから ものづくり起業」という名で自分の備忘録のためのnoteを更新する。

原点

多様な親子と出会う場所

20代の頃から「ジェンダー」「教育格差」という社会問題に関心があった。それは自分の生い立ちや両親の過去、興味のままボランティアや地域活動という名であらゆる方と交わり、対話し、繋がってきた経験から出てきた問題意識であった。

そんな中、妊娠中の2019年に一冊の本に出会う。それが教育コミュニティ活動を始めるきっかけとなった【世界を変えるSTEAM人材 シリコンバレー「デザイン思考」の核心】である。そして、現在もお世話になっている一般社団法人SKYLABO共同代表 ヤング吉原麻里子氏との出会いの一冊だ。

この書籍で初めて「STEAM」という言葉を知る。元々ガジェット好きだし、未来のテクノロジーやそれらを使ったサービスを日々ウォッチし、利用することが趣味だった私は、この書籍の内容に感銘を受けたのである。
この「STEAM教育」はどうやら日本でも政府をあげて取り組んでいく教育らしいことを知る。学習指導要領改訂などの情報にふれていく中で、もうすぐ生まれてくる子どもとの関わり方や自分の生き方について再考した。

そして2020年、子育てする場所・経済的状況に関わらず「良質な教育アイデアを各家庭に合った形で取り入れる」ことを目指すコミュニティ【STEAM KIDS JAPAN】を始めた。

コロナ禍で始めた教育コミュニティ活動は、今年で5年目。
当時は、何処にも行けない不自由さ・子育てや教育に対する不安など、あの時期独特の不安感を少しでも軽減したいという理由でスタートした。

ここに集まる子どもたちは、興味の対象も表現方法も様々で、それを支える保護者のみなさんは全員魅力的。コミュニティを通じて多様な親子と出会い、対話し、自身の価値観をアップデートしている。昨年は地域の中でワークショップやオフ会を開催し、現在もじっくり育てている大切な場所である。

新しいチャレンジ

そんな中、テクノロジーを少しでも学んでみたくなった。運営するコミュニティをより充実させるために、コンテンツだけでなくシステムを作ってみたいと考えた。最初は独学で色々やってみるものの、フルタイム会社員で毎日ワンオペ育児していた私は時間がない。今思えば突拍子もないのだが、思い切って仕事を辞め、プログラミングスクールに通うことにした。なんとなく「子どもが小さい今しかチャンスはない」と思った。
フルタイムで働きながらワンオペ子育てする生活や、自分のキャリアに関しても、迷いや焦りがあった。現状を打破したいという一心で新しいチャレンジに進んだ。

夫には、軍資金があること、仕事を辞めても私が負担する分の生活費はなんとかなりそうなこと、スクールに通う半年間は子育ても二人で乗り切って欲しいこと(厳密にいえば土日は夫にワンオペ育児を引き受けてほしいこと)を伝え、応援してもらうことになった。

そうして、自分のキャリアや子育て生活に関して言語化できないモヤモヤや焦り、違和感を解消するための期間をつくることにした。

この半年間は、まさに寝食を忘れ没頭した期間であった。在学中に出会った仲間と共に「こどもの成長を飾る」バーチャル美術館【エノニワ】というプロダクトをつくった。


エノニワの根底にある価値観

このプロダクトは「子どもの作品」と「当時の声」を一緒に飾ることができる場所。端的に言うと、日々溢れる子どもの工作や絵を別空間に保管しておくためのものであるが、物理的なものを電子的データに変換し記録しておくための【便利ツール】ではない

働く母親たちの「子どもとの日々を大事にしたい」という想いとともに湧き上がる「申し訳なさ」や「自己嫌悪」。
それら負の感情を、子ども作品と声を記録・整理する過程で浄化し、自分を肯定できるもの。子どもの成長史を振り返ることで「今」を実感できるもの。

「子育て期を豊かにする。」エノニワは、このような価値観のもとにうまれた。

言語化できない日々

課題は何か。

半年間のスクール生活を終え、仮説検証フェーズに入ったのが2022年。この一年は自分の言語化力のなさに嫌気がさした。いろんな方に壁打ちをして頂き、ひたすらにデプスインタビューの日々。
私が抱く問題意識の抽象度が高く、ユーザー課題の言語化までの道がとても遠く感じた。母親が感じる「罪悪感」や「自己嫌悪」の根本原因は何か、突き詰める作業の繰り返しであった。

当時のインタビューログ

インタビューから仮説を再設定し、モニター検証したのが「エノニワおしゃべりレター」というサービス。親子コミュニケーションの質と満足度を高める・子どもの自己理解を助けるツールとして、誰でも簡単に利用できるLINEを使ってサービス運用した。

予想以上にモニター参加してくださる方がいて、モニター期間終了後も有料で継続利用してもらえたのは自信になった。さらにインタビューと課題仮説の検証を繰り返した。
先述した「こどもアート美術館エノニワ」の構想は一旦寝かせることにして、顧客の声を徹底的に聞いた。

ピッチでうまれた問い

投資家へのピッチをいろいろ経験した。といっても、投資相談というよりアイデア壁打ちの側面が強く、経験値を増やすため・言語化するために時間を頂いた。
ピッチでは様々なフィードバックを頂いた。その中で私に新たな問いを与えてくれたものが以下だ。

⚫︎ 子育てってそういうものだから、解くべき問題ではないのでは?
⚫︎ 女性はすぐにイライラする生き物だし、諦めるしかないのでは?

私の問題意識である「子育て中における【母親の罪悪感】」に対するフィードバック


女性たちとの対話の中で、大なり小なり子どもへの罪悪感は確かにある。しかし、この罪悪感はずっとあるものではなく、波のように訪れる。
「感情」なので当たり前なのだが、さざ波のときもあれば大波のときもある。

この母親の罪悪感、そのきっかけとなるイライラや自己嫌悪の波は、個人の気質や性格によるものなのか、それとも別の原因か。
この「原因」こそが解くべき問題の正体である。

そして、この原因は「子育て領域」で解決できるものなのか?
感情に関する原因の解決策は子育て領域ではなく、メンタルヘルス系の領域ではないか・・?
そんな疑問から、再度自分の問題意識の深堀りと、考えつく原因の洗い出し、モニター検証、インタビューを繰り返す果てしない日々は続く。

↑アクセラレーターでメンターになっていただいた、G’s先輩起業家のnote。定期的に読み返して、果てしない道を進む原動力にした。


事業領域の決定

原因不明の体調不良

あるとき、胃腸が悪くなり、嘔吐と下痢を繰り返す毎日だった。倦怠感も激しかったため、最初はコロナ後遺症か?と思った(2021〜2022年の2年間で3回感染した。)

あまりにも毎月繰り返すので、重い腰をあげて病院へ。血液検査、内視鏡など一通り検査をした。甲状腺がひっかかり再検査、のような期間もあったが異常はなく、結局原因はわからなかった。

とりあえず大量の薬と抗生剤をもらった。喘息症状、アレルギー症状も重なっていたので薬の量がエグい。過敏性腸症候群かな?ということで毎月診察して様子見ましょう、と言われた。
これまで風邪一つひかない丈夫な身体だったが、息子経由で小さな風邪やノロ、インフルなど、もれなくうつった。加齢のせいか、必ず長引く。
病院通いは続き、薬は普通に飲み忘れるのであった。
とにかく、毎月繰り返す厄介な症状が胃腸炎と倦怠感。これだけはつらすぎる。ある時はママ友に息子をお願いして夕方ベットに横になったりもした。幼児持ちワンオペで体調不良が続くと生活が回らない。身体を早くなんとかしなければ、と事業検証はセーブして療養期間に入った。

あらゆるログから原因らしいことに気づく

そこから、身体を回復させるために考えつく限りの方法を試した。「まずは睡眠改善」ということで寝具を新調し、睡眠データを取った。
マインドフルネス系のアプリやサービスもたくさん試したし、ジャーナリングもやった。リラックスする香り系も色々やった。
もちろん毎日運動を習慣化し、データを取った。
病院の食事指導もうけた。とにかく胃腸症状を軽くするために和食中心で、料理本片手に「栄養バランスを考えたごはん」を徹底した。発酵食品、乳酸菌、消化に良いレシピなど、胃腸に良いものはなんでも試し、人生でいちばん健康的な日々であった。
しかし、それでも胃腸炎は繰り返し、一年近く何も変わらない状態だった。

ある時、月経が数ヶ月遅れていることに気づく。
妊娠?そんなことはなさそうだが。と思い、ふとルナルナのデータを見る。これまでの月経周期グラフを眺めていると、胃腸炎症状がひどい時と月経周期がぴったり当てはまることに気づく。月経前後、特に倦怠感がひどく起き上がれない日のログとも重なっていた。
「生理もこないし、一体自分の身体はどうなってるの?」
「もしやPMS?ホルモンバランス?」と早速婦人科を予約した。

女性ホルモンってすごい

婦人科では症状が出た具体的な時期、最後の月経、妊娠希望の有無を聞かれ、一応妊娠検査をする。結果は陰性。
胃腸炎の直接原因かは何ともいえないが、PMSでは吐き気や倦怠感などが出ることもあるらしい。薬の種類については、年齢的にもそろそろ二人目を考えたい時期であったため、低用量ピルではなく漢方を希望した。

変わらず食事療法にも取り組んでいたが、新しく薬膳やハーブティーなど、女性ホルモンバランスを意識したものを取り入れていった。そこから数ヶ月、少しずつ症状は改善し、体調が回復していく。

婦人科受診は続けていて、妊娠希望ということもあり一通り妊活についての検査やホルモン薬について説明を受けた。
体調が回復して落ち着いた頃、排卵検査や注射、黄体ホルモンを促す薬の処方など、妊活準備に入るも薬がまったく合わない。吐き気、頭痛、腰痛、腹痛….これには驚いた。

女性ホルモンについてこれまで学んでこなかった。学ぶ機会もなかった。
生理がくる・生理前にイライラする・妊娠中は悪阻がひどく情緒不安定になりがち、というようなことは経験済みだったが、まさか風邪ではなく女性ホルモンの影響で頭痛や吐き気などの身体症状が出るとは知らなかった。
更年期になったら、私の身体は一体どうなるのだろうか…恐ろしい。

事業検証再開

体調が回復した私はエネルギーにあふれていた。女性ホルモンさえ味方につけたら、仕事のパフォーマンスは爆上がりするのである。
さて、事業検証を再開していこう!とエンジンがかかっていくのだが、あらゆる仮説を洗い出し、新しい仮説として「母親の罪悪感の波と女性ホルモンの関係」を加えた。
あの吐き気や倦怠感がないだけで毎日が爽やかだし、息子の反抗期も笑顔で乗り越えられるのである。

同時に、前職で一緒に勤めた40代女性の顔が浮かんだ。当時、彼女はある時からミスが増え、仕事中の眠気と戦っているように見えた。常に体調が悪そうで頻繁に外出していた。そして遅くまで残業していた。
妊娠中だった私も悪阻と戦いながら仕事をしており、毎日いっぱいいっぱいで、彼女の仕事をフォローどころか、非効率な仕事の仕方を問い詰めてしまった。そんなことを思い出した。

そう、更年期である。今思うと彼女はホットフラッシュがつらそうだったし、デスクで頭を抱えていた。
当時の私は20代。「更年期」という言葉は知っていたが、具体的な症状まで知らなかった。同じ女性であったのに彼女のことを理解できなかったのである。

そうして、子育て期の女性と更年期前後の女性、つまりあらゆる年代の女性へのインタビューを再開した。その中で、改めて女性にまつわるあらゆる課題を言語化。20代から学んできたジェンダー・女性学を学び直して深堀していった。
社会構造的な問題、子育て期の課題、夫婦間におけるモヤモヤ、時間がない現状、キャリアに焦る気持ち…もう一度、たくさんの女性と対話し、ライフステージやライフスタイル別の悩みを整理した。

そして、事業領域を「子育て」でなく「女性のヘルスケア」に決めた。

やっと創業

プログラミングスクール卒業から2年。
2023年10月にやっと会社を登記した。あの時につくったプロダクト【エノニワ】の構想は今でも広がるばかりではあるが、エノニワの根底にある価値観を引き継ぎ、新しい事業領域でチャレンジする。
事業計画をひき、借り入れし、ものづくりで創業することにした。

社名は「あなたの女性ホルモンを味方につける」という意味を込めて「EsY(エシー)」。めちゃめちゃ単純だけど、エストロゲン(Estrogen)とあなた(You)の造語である。

やっとスタートした。


次回は、ものづくり起業のドタバタを記録する。


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