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リモート飲みデビュー~「いつ会える?」で今日会える~

きっかけはもう”衝動”としか言いようがない。

一日誰とも話さなくたって平気だし、最近はおつまみを自炊して宅飲みを極めている。”自粛耐性”は人一倍あると思っていたけれど、デスクの端に置いたコップの中で煎茶の黄緑色がじわじわとお湯に溶け出していくのを眺めながら、ふっと芽生えてしまった。酔いに身を任せ、互いに寄りかかるようにして語らったあの夜をもう一度味わいたい。


そんなわけでついに「リモート飲み」デビューしてしまった。

はじめは恥ずかしさもあったけれど、実際やってみるとこれが楽しい。そして、ちょこっとだけ「これからの人との付き合い方」が見えてきたような気がする。興味はあるけど勇気が出ない!という人のためにもその模様を書いてみる。


▶「いつ会える?」で今日会える

思い立ってすぐに後輩ちゃんにお誘いのメッセージ。
「久しぶり!そっちは大丈夫?」この一言で突然の連絡も不自然じゃないから、こんな状況も悪いことばかりじゃない。やりとりしてみれば互いに相当ストレスが溜まっていたようで、LINEの吹き出しはどんどん長くなる。これはもうリモート飲みするしかない!

「何時ぐらいならOK?」

近いうちにできたらいいかなあ、と軽い気持ちで聞いたら、

「今日なら22:30くらいから大丈夫です!」

まさかの即日予約
気持ちが熱いうちに約束できるのはリモートの強み。お店の予約もいらないし、集合場所までの往復の時間もかからない。満席で入店できないとか、頼んだ料理が遅いとか、そんな心配も不要。10分あれば充分会えちゃうので、都合を合わせやすい!予定を入れたはいいものの当日になってだんだん面倒くさくなっちゃう私にはもってこいなわけだ。

▶解散時間を決めておくとスマート

別れが惜しくて、飲みに行くといつも駅のホームで2本も3本も電車を見送ってしまう。終電の心配がない分、だらだらするのが目に見えていたので、あらかじめ解散時間を決めておいた。ちなみにスマホの充電は満タンから90分で30%ぐらいまで減った。イヤフォンを使うなら最長でもこのぐらいがおすすめ。

▶日頃の行いが大切

予定があると張り合いが出る。
ストックの白ワインを開けて、おつまみはこの前買ったしいたけがあるからバター醤油炒めでどうだ。部屋着は無難なパーカーにしておこう。あれこれとスケジューリングしていると、充実感で胸がいっぱい。こんなときめき久しぶり!能天気に帰宅して、ふうと一息。ぐるっと家の中を見回して、一気に血の気が引いた。

あれ?通話できる場所なくない?

バリバリに料理するつもりでいたが、リビングとダイニングはテレビ好きの両親が占拠。自室は妹と共有だし、そもそも人様に見せられるような状態じゃない。寝室はWiFiが入りにくい上、飲食物を持ち込むのに抵抗が。もうこれはお風呂でするしかないのか、と直前になっててんやわんや。

結局、玄関でセッティング。
あても缶のスパークリングワインとナッツで妥協。

リモートしてまで飲みたいの?って思われたら恥ずかしいなあ、なんて考えていたのが恥ずかしい。人に見せられない家に住んでいることの方がよっぽど情けない。日ごろからきちんと掃除はしておこう。実家暮らしの方はキレイでWiFi環境が整った部屋を先に用意しておきましょう。

▶何気ない動きで会話している

使用したのはLINEビデオ通話。LINEを利用している人なら新たに登録する必要もないし、WiFi環境があれば無料(WiFiがないと通信容量を一気に食うので、ちゃんと受信できているか定期的に確認)!イヤフォンを使う場合、充電はフルで。ブックスタンドでスマホを立てかけられたので、なくてもいいけどあると快適。

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準備万端で、いざ約束の時間。後輩ちゃんから電話をもらい、ついに「リモート飲み」開催!

序盤はカメラの位置や通信状況を確認しながら、こわごわと。こういうツールがあると知ってはいても、実際に体験するのは初めて。相手の家ってどんな感じ?とじろじろ見ちゃったり、お互いすっぴんでちょっと新鮮だったり。普段どうやってしゃべっているんだっけ?と妙にドギマギしたけれど、飲み食いが始まれば視線の逃げ場ができて、緊張感もしゅるしゅる小さくなっていく。

電話やLINEで十分じゃないかって心のどこかにはあった。だけど、相手が身を反らせたり、机に突っ伏したりして笑ってくれると、ものすごく安心する。普段は意識していなくても、ちょっとした体の反応で「あなたと一緒に過ごす時間が楽しいです」という気持ちを伝えあっているんだなあ。言葉にするにはあまりにも気恥ずかしいもんね。「そのとき〇〇さん、こんな動きするんですよ!」なんて話題も説明いらず!

▶リモート飲みはいいこと尽くめ、だけど日常と隣り合わせ

何を食べて何を飲んでも割り勘を考えなくていい。いつもは車の人も飲める。安上り。終わったら歯磨きしてすぐ寝れる。酔ってスマホを忘れることもない。

リモート飲みは思いのほかメリットがたくさん。久しぶりに大切な誰かと話せばひとときでもこの果てのない不安から解き放たれる。もしかしたら今後もこのフットワークの軽さを活かせば、大切な人が本当に苦しい時や溜まっていたものがあふれだした瞬間に、そばにいられるかもしれない。

ただ唯一のデメリットは、

接続が切れた後、ちょっぴりさみしい。

いつもならぐずって別れても、帰りの電車で思い出してにやにやしたり、次に出かけるプランを考えたり、余韻が私を楽しませてくれる。だけどリモートは解散した途端に、日常のど真ん中に連れ戻される。

▶やっぱりちゃんと会いたい。だから自分を守る。

あの子に会うために選んだアクセサリー。
早めに来たのに無意識に作っちゃう待ってないよって顔。
「あ、これおいしいね」って合わさる視線。
他のお客さんの笑い声に耳がふわふわと遠くなっていく感覚。
最後に残った1個を譲り合う気遣い。

静まり返る部屋で、こういう些細なことが恋しくなる。いつも何気なくすましていた当たり前が、どれだけかけがえないか。

やっぱり、ちゃんと会いたい。

だからこそ今は、自分を大切に。

前よりも前向きな気持ちで”対策”や”防止”という言葉に向き合えそうな気がしている。




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