朝靄

朝靄

              


刺すように冷たい空気に揉まれながら
朝靄に包まれた世界の始まりを行く

世界の始まりは、いつだって冷たい
冷涼な空気は、何一つ余計なものを含んでいなくて、
心もからだも始まりの水で満たしていく

早起きの鳥が鳴きかわす声
まだ太陽の明るさに慣れていない控えめの空
一度として、同じ日はないことを知っている
草木たちが、
新たな世界の始まりに体を震わせながら
この世界への賛歌を合唱している

このどこか神聖な世界に、
私という存在が参加してもいいのか戸惑い、
知らず知らず息をひそめながら
私は朝霧に包まれた世界の始まりを
ひそりひそりと歩み続ける

歩を進めながら
草木と鳥の合唱に耳を傾けているうちに、
私の奥底からそれと同じ種類の血が湧き上がってきて
いつの間にか私も口ずさんでいた

私の歌と、
草木と鳥の密やかな声が混ざり合い溶け合い
空へ、空へと
駆けのぼっていく
薄青く霞んだ空が、
私たちの歌をどこまでも受け止め、
未だ見ぬこの世界の主まで届けてくれる
その瞬間、私はまた生き始める

刺すように冷たい空気に揉まれながら、
私は今日も
朝霧に包まれた世界の始まりを行く


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