見出し画像

ドラキュラ対策は万全ー採血ができない―

「きれいな肌」「絵画みたい、血管が見えなくて」
二人がかりで私の腕に触れながら言う。嬉しくない。
ひじの内側を指で軽く押される。何回も押される。なんとかしてプロなんでしょう、と心のなかで言う。
もう針を2か所も刺されている。今度こそ血を出してほしい。白衣姿の二人は私の血管を探している。

ここは病院。只今採血の真っ最中である。血液なんて針を刺せば取れそうなものだが、今日の私の血管は恥ずかしがってなかなか出てこない。
「あった! けど細いな~。あ、いなくなった」
医師の言葉に、血管って動くの?と内心で驚く。

ちなみに採血用の針は真空タイプの物を使っている。ご覧になったことがあるだろうか。


やっと見つけた血管に針を刺しても、頑固な血管は血を差し出すのを拒んでいる。血管は針を刺されて、針を動かされても血を渡さない。本体と違い根性がある。本体としてはやめて、血を取らせての一言しかない。
3か所目を刺されて、針を動かされる。しかし頑として一滴もでない。私は血も涙も無くなったのかと思いたくなる。もしかして私生きてない?、と小説ネタになりそうな空想が湧いてくる。

「今日はダメですね」と医師が言う。え? 2人がかりで3か所も刺してるのに血が取れないなんてことがあるんですか?
私はよく分らない申し訳なさを感じて恐縮する。すみません、私の血管が言うことを聞かなくて。私が悪いんですかね・・・

でも、検査なしですか
今までは採血できてたのに、同じ医師か看護師が取ってくれたのに。
今日も血圧は正常で、朝から水をたくさん飲んで検査にきたのに。

採血ができなかったことが落ち込む理由にはならないと思う。理性ではそう思うが、病院からの帰り道はしょぼーん(´・ω・`)。私の血管、欠陥ですか? 私は医師の指示に素直に従ってちゃんとお薬も飲むのに、血管は反抗期かしらん。


実はここ数年、採血がスムーズにいかない。急激に太ったので血管が脂肪に埋まったと思っている。昔は普通にあっさり採血ができていた。
やはり、痩せねばならぬ。これでは点滴も刺せぬ。うーむ。

比べて夫の腕はあの医師が狂喜しそうなくらい、くっきりと血管が浮き上がっている。ちょっと怪我したら大出血になるんじゃないかと心配するレベルだ。ああ、夫の腕を借りたい。あの腕なら1回であっさりと採血が終わるだろうに。うらやましい、うらやましいぞ! 
夫もまさか、血管に嫉妬されるとは思わなかっただろう。

今ならドラキュラに咬まれても出血しないだろう。吸血コウモリも蛭も怖くないぞ、わっはっは。
ここで謎がひとつ。蚊にはよく刺されるのだが、はたして血は吸えているのだろうか。


お読みくださりありがとうございます。これからも私独自の言葉を紡いでいきますので、見守ってくださると嬉しいです。 サポートでいただいたお金で花を買って、心の栄養補給をします。