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桃農家のイメージ5選

桃と聞いてどんなイメージを持ちますか?

自分が桃農家だと伝えると、

「桃!くだものの中で一番好き!」
「柔らかくて扱いが大変そう…」
「桃って痒くなるよね~」
「桃栗3年って本当に収穫するまで3年かかるの?」
「収穫以外は何してるの?」

こんな言葉が返ってくることが多いです。
桃の良いイメージ、そうでないイメージがあると思います。
ひとつひとつ書いてみましょう。

①【桃!くだものの中で一番好き!】

まずは何といっても桃好きの多いこと。

世の中に桃嫌いな人はいなんじゃないかと思うほど、話す人話す人みんな桃が好きだと個人的に感じます。
たしかに柔らかくてジューシーで甘くて少し酸味もあって香りが強くてピンクで可愛くて・・・と並べてみると唯一無二感はありますね。

かくいう僕もそんな桃に魅了された一人なのかもしれません。ただ一般的に桃好きと言われる人と違うのは、「商材」としての桃が好きなことです。

いつもお伝えするのが、僕自身は桃を「食べる」ことは苦手だということです。

軽いアレルギーを持っているのもありますが、味見をしたとしても喉を通すことはほとんどありません。もちろん味の違いはわかりますが、個人的には桃の味が苦手なので、誰かに食べてもらって美味しいと言われて初めて嬉しい感情が湧いてきます。

実際桃農家の後継ぎをしたのも、自分はそう思ってないのに他人にとっては魅力あるものだと気づいたからです。

当たり前に昔から身近にあったものに価値がある。これはある意味チャンスでした。

桃の人気は高い

②【柔らかくて扱いが大変そう…】

これもかなりの確率で言われます。
そしてこれは実際にそうで、商品としての桃は扱いに気を遣います。

ただ、桃が柔らかくなるのは品種によりますが収穫10日前ほどからで、それまではかなり硬いまま育ちます。摘果した桃を人にぶつけるとかなり痛いです(そんなことしてはいけません)

硬くて青い桃は収穫間近になってくると地の色が抜けて白っぽくなり、そこに陽が当たると日焼けをして赤く色づいてきます。この頃になると虫に刺されたり、鳥に突っつかれたり、獣に食べられるようになるので、桃農家としては最大級の警戒を図ります。

その中でも無事にやりすごした桃(実際にはいろんな工夫でやりすごしますが、この内容は省略します)はまだそれほど柔らかくない状態で収穫されます。
みなさんに言われるような柔らかいから指の跡とかついて大変でしょう?というほどの状態ではありません。

そんな状態のものを収穫してしまうと一般的に販売することが出来る熟度を超えてしまっているので、いわゆるB品や家庭用と言われるランクに落ちます。
これはすぐに食べるにはちょうど良い場合が多いので買う人にとっては嬉しいのかもしれませんが、売る方としては単価がガタ落ちなので嬉しくはありません。

通常流通する(スーパーなど)桃は比較的硬い状態で収穫されたものなので、味は乗りにくいですが日持ちはしやすいです。

桃農家の所で直接食べる桃が美味しいのは、熟度がしっかり進んだものを新鮮なうちに食べられるからなのです。

収穫直後の桃は最高!

③【桃って痒くなるよね~】 

桃を触ると肌が痒くなる経験ありませんか?

桃農家をしていると少なからず痒みに悩まされます。
顔、首、肘の内側、手の甲辺りが特に痒くなります。

これはアレルギーからくるものではなく物理的な外傷のようです。
桃は実が育ってくる過程で「もうじ」と呼ばれるうぶ毛が生えてきます。(ちなみに毛がないものを一般的にネクタリンと呼びます)

これによって日焼けや雨、葉などの擦れから実を守っているのですが、その毛はとても細かく、皮膚が薄い部分では奥まで刺さり、炎症を起こした状態になります。それによって痒みを引き起こしているのです。

桃の収穫時期は暑いので汗をかきます。汗をかくと桃の毛が付着しやすくなり、痒みを発症しやすくなると体感として感じます。

痒くなったら、さっと石鹸で洗って流すかいっそのことシャワーもしくはお風呂に入るのが手っ取り早いです。

僕自身、夏は収穫後、選果後、寝る前とシャワーを浴びてなんとか凌いでいます。

小さい実でも立派な毛じ

④【桃栗3年って、桃は収穫するまで本当に3年かかるの?】

購入した苗を秋に植えたとします。その苗が育ち始めるのは来春から。枝葉が伸びてそこに実になる芽が付きます。そして来々夏にその芽が育ち実になるので、購入してからおよそ2年弱で収穫ができます。

種から育苗した場合は、さらに接木した後の期間も必要なので+1,2年かかります。

ただその時点では収穫できるのはせいぜい数個でとても小さな実がとれるだけです。これは木がまだ大きく育っていないためです。

では実際何年経てば立派な桃がたくさん収穫できるのでしょうか。

これは木の仕立て方や桃の収穫する大きさにもよるのですが、一般的には4~6年です。
ここまでくるとある程度の大きさの桃が数百個収穫することができます。

つむぎ果樹園の場合はもう少し長い5~7年で計算しています。というのも、飛騨地域は暖かい時期が短く光合成量が稼げないので、主要産地と比べて枝が伸びるのが遅いためです。その分木の寿命は長い傾向はあります。

およそ5年、木が育って売れる桃がしっかり収穫できるようになるまでコストをかけて管理しなければなりません。

どこの産地でもこの時間を少しでも短くしようと様々な工夫や取り組みが行われています。

たくさんの実を成らせるまでの道のりは長い

⑤【収穫以外は何してるの?】

桃の収穫時期以外の作業をざっくりと書いてみます。

摘蕾
摘花
摘果
袋掛け
袋外し
反射シート
収穫
施肥
剪定

その間に草刈り、防除、鳥獣害対策、灌水管理などなどがあります。

地域や農家によって多少のズレや細かい作業はありますが、一般的にはこんな流れです。

収穫期は確かに大事な時期ですが、それ以外の作業の重要度も高く、どの作業も収穫量や質、味に直結します。

つむぎ果樹園がある飛騨地域は冬に雪が多く、長期間の農閑期があるため、冬の時期は次期の準備や計画、戦略を練る時間を多く作っています。

冬は雪景色

【最後に】

桃が好き、桃は大変、桃は時間がかかる、辺りのイメージが一番強いのではないかと思います。
贈ると喜ばれるからありがたいけど、通年して収穫できないから大変だねとも言われます。

それが桃は高くても仕方ないという理由になっているのかなと。
ただそれを大変だからという理由で価格を上げるのは違うと思います。

少しでも可視化できるとこは可視化し、そうでないとこはバックストーリーとして伝えていかねばならないと思います。

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