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タカオちゃんの”おてつじゃま”
今は、コロナ禍で外出を極端に自粛しているが、去年の今頃は、タカオちゃんだけを自宅に残して、頻繁に買い物などに出かけていた。家を留守にすると、たまにタカオちゃんが、私のことを思いやって、いろいろと家のことをしてくれる。
溜まった新聞を片付けなくてはと思っていたら、古い電気コードで縛って雨ざらしの軒下に置いてくれていた。新聞の回収日までには、まだ随分と日がある。きっと、たっぷりと雨を吸うことだろう。電気コードの紐では、回収してもらえないだろうけれど。
洗い物を放ったまま出かけた時は、タカオちゃんが洗っておいてくれた。マグカップの底には、コーヒーの汚れがついたまま。油まみれのスポンジで洗ってくれたらしい。洗い終わったすべての食器が、油でベタベタしている。
「お茶碗、洗ってくれたの?ありがとうね」
私はタカオちゃんにそう言いながら、食器をすべて流しの中に戻した。
ある時は、30年来使ってきたグラスの内側に、ぐるりと傷がついていた。どうやらすべての食器を金だわしで洗ったらしい。その日から私は、金だわしを流しに置くのをやめた。
タカオちゃんの思いやり活動を尊重するだけでは、どうもうまくいかない。
そこで、タカオちゃんに仕事をお願いしてやってもらおうと、オリヅルランの植え替えを頼むと、すぐに作業してくれた。
ところがその夜から、オリヅルランはどんどん何かに食われ始めた。まるで、カイコが桑の葉を食べるがごとく、日増しに葉っぱが減っていく。
数日後、植物店に相談すると、害虫がまじるので、畑の土で植え替えをしてはいけないと教えてくれた。観葉植物用の土を購入し、結局もう一度、私が植え替えなおした。
「タカオちゃんは5歳、タカオちゃんは5歳、タカオちゃんは5歳」
いくら魔法の呪文を唱えてみても、85歳が5歳に見えることはない。認知症の父のお手伝いは、まるで“おてつじゃま”。迷プレー、珍プレーは、今日も更新中である。
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