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大河ドラマ「光る君へ」第二十六話「いけにえの姫」所感

夫のあり方

 今回の第二のテーマでしょう。かなり対照的。
宣孝さま:いざという時に妾のまひろを身を挺して庇い、屋敷や家財道具の修繕新調にはお金を惜しまないしスピーディ。毎回のようにプレゼントを渡してきて愛情表現満載。ただし、彼のためだけの歌やその才をまるで見せ物かのように男に見せびらかして自慢し、やだって言ってもやめてくれそうにない。にも関わらず妻や妾の他にも若い女と遊んでいて、こちらがちょっとヤキモチ妬いたら、元彼のことでいじって地雷踏んでくる。災害で親のない子に施しをしたら「穢らわしい」と言う。
福丸:前回言及されたように「なんでも言うことを聞いてくれる」けれど、いざという時には妾をほっぽり出していってしまう。けれど、災害の後片付けや何かは手伝ってくれるし、身分で人を見たりしない人。地震の時、多分本妻の元へ走ったんでしょうね、福丸。ただ、それをいとさんや周囲に感じさせはしなかった。
 どっちがいいとか、どっちが正しいとかそう言うものではないかと思いますが、こういう男たちが、平安の妾たちの前にいた、とでも言いたいのでしょうか。
 宣孝さまの一言(左大臣はそんなのが嫌で云々)も「地雷やね〜、ドラマ上言っちゃいけない一言ってやつか〜。」とは思いますし、まひろは言われて、カッとなったようですが、正直少女漫画のようでちょっと引きました。お互い分かっていたことでしょうに(まひろが妾で、宣孝さまは女好きであっちゃこっちゃに手ぇ出して、ドラマの上ではまひろの思いはまだ道長にあることを宣孝も知っている)。これでまひろがキレたと言うことは、その一言が図星だと本人も思っている(自分の思いだけを通そうとしたから道長に嫌われた)からなのではないでしょうか。そして今もまた、まひろは自分の思いだけを通そうとしているように思えました。いとさんの言った通り。
 そして宣孝さまだけでなく、まひろの言い方よ「自分が嫌だから文を返して他で見せないで」ではなく「他の女の人が嫌でしょうから、殊更に私を自慢しないでくださいませ。文も懸命に書いたものですが、未熟にて恥ずかしいので、誰にも見せずお返しください」と言えばいいだけのこと。私でもわかる。弟くんに言われたように、ノンフィルターで何もかも言い過ぎです。黙っておくと言ったことまで何もかも。オブラートに包むとか、あるでしょう。それに、道長が好きな「不実」なまま宣孝と結婚したはずなのに、そもそも清水の市の女に嫉妬する権利あるのかな。

いとさんには分かって、まひろには分からないこと。

 ズバリ愛情、でしょうか。よく言われます「恋は下心 愛は真心」。相手の心を下に捨て置かなくなった時に、自分勝手な恋は相手を思い遣ることのできる愛に変わるのでしょう。よく見ると、宣孝さまはずいぶん譲歩してくれています。でも、宣孝さまとて人なのです。寛大な宣孝さまの十分の一でも自分を譲ってみては。いとさんは年長の女性としてそう言いたかったのではないかと思います。なんか、フツーなのですが。それも何かピンときていない様子のまひろ、かつて夫がいて子もいて(物語開始前に病死)、長年殿を思い、今また妾でも大事にしてくれる福丸と一緒になれたいとさんとは大違いですね。

晴明のこだわり

 占いの結果なんてどうとでも言えますが、晴明の出した占いの密書には「とりあえず天皇が悪い」的に書いてあったらしく。朕のせいなのか……って、どう見てもそうでしょう。史実ではもう少し他の女御のもとにも通い、政治もしていたそうです。そして、ネット上の感想には「史実ではもっとちゃんとしてたんだから一条をあそこまで愚帝に描かなくても」という声があるそうですが、そこじゃなくて「一度髪を切って出家を宣言した定子を中宮のまま据え置き(還俗していたとしてもありえん)、時には内裏に入れ、定子に子ができる」これもまた史実ですし、ここが大事。おそらく(ドラマ上)晴明が「道長の娘を入内させる」ことにこだわった理由であり、当時も今も「一条帝が賢帝とは言われない」理由なのだと思います。
 今の時代、今の皇室なら、全然構わない。一人の女性を愛していくのはむしろ美談と言われています。令和の今上天皇陛下が、今上皇后陛下との婚約できるかできないかというときに「小和田さんではダメでしょうか」とおっしゃって、それがもう決め手になったという話や、昭和天皇陛下が香淳皇后陛下の血筋に色覚障害の方がいらっしゃるのではという危惧があっても「良子で良い」とおっしゃって決まったという話は美談です。
 ただし、平安中期の天皇はそうはいかないはず。何より神道の現人神として、国そのもののような存在だった天皇が、一人の女性にこだわることの愚かしさ、ましてそれが「誰も文句を言えないような立場と人柄」ならまだしも、むしろ「みんなが疑問に思う(仏教に帰依しようとした)立場と人柄(天皇の寵愛を最大限に抱え込んで遠慮もせず、実家をあれだけ取り立てたのに実家が没落したら赦しをこうても一緒に責任をとろうとはしない)」ならねぇ。
 晴明の属する陰陽道は、どちらかというと神道に近い立場をとります。また、天皇がその宗教性を大事にしてくれて、政治に生かしてくれないと成り立たないお仕事でしょう。そうなると一度髪を下ろした女性など、本来天皇とまみえてはならないはず。冷静に見えますが、ちょっと怒っているのでは、と思いました。
 それに、彰子ちゃんの幸せを考えている道長に「個人の幸せは知らん」と言い切ったのも「藤原なら娘の幸せより神の国の朝廷を考えよ」という一言に聞こえました。

詮子女院さまが代弁

 えっと、みんなが思っていたことではないでしょうか。道長がキレイすぎたのです。ほぼ何も失わずに地位と家庭を手に入れ、兼家パパ詮子女院さまのように何かを差し出すことはしていませんでした。この時代の天皇家の特殊性があったように、実質摂関家の藤原北家本流である道長の家の特殊性もできつつあったのかもしれません。倫子さまも説得しなければいけない。
 血を流して、ブラックになって、それでいいよ。それでも視聴者は喜んでついていくよ。倫子さまには「生贄」だという言い方で説得できたからよかった(裏でむつこママのファインプレーもありました)し、協力してくれるって感じだし、娘とも今後色々あるけれど兼家パパの遺言通り「家」も守れるし、国や朝廷にとってもいいのだよ。兼家パパが全てを捧げたのが「家」だけでなく朝廷でもあったことが分かるからいいの。
 説得力がありすぎます、女院さま。
 あと、藤原の娘の宿命である入内が、天皇の血を引く源の娘である倫子さまの「不承知」に繋がるのもなんだかな。倫子さまも最初は「入内したくない、娘にも入内させたくない」という手前が一番の考え方。藤原家の娘だった母上さまや女院さまは分かるけれど、言われるまで倫子さまには分からなかったのかもしれませんね。

その他

・田鶴は憎たらしい物言いだけれど母上を真似した「これ」は可愛かった!
・実は彰子ちゃんが一番ことを分かっている、なんてことがあったりして。覚醒回が楽しみ。
・行成よく言った。でももう、定子中宮の立場なんてあったもんじゃない。
・F4ではなく四納言の飲み会。
・定子中宮の余裕具合が凄すぎる。
・道長と会わせたいか知りませんが、石山寺のくだりが唐突でちょっとよくわかりません。
・次回予告、赤染衛門さまですか?また拝見できるのですか?
・倫子さまと母上さまのシーン「内裏に入ったからとて不幸になるとは限らない」実際、遵子さま(円融帝皇后)や定子中宮は、女としては幸せでしょう。
・「もう入内?」と思ったら裳着だった。
・惟規、姉上のこと分かっているなら清水の市の女のこと言わないくていい。姉上、可愛く怒れない人だから。
・女たちの愚かしさが目立った回。

今日もお付き合いいただき、ありがとうございました。

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