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大河ドラマ「光る君へ」第二十五話「決意」所感

付け届けありきの世の中

 正しいかどうかは別にして……いや、令和の今では正しくないんですが。少なくとも、為時パパの信条理想からは「受け取ってはならないもの」です。
 ただし、今回は為時パパも思うところがありましたね。上等な紙、当時は高級品です。貴族は毎日のように使うかもしれませんが、実際作っている職人にとっては、必要ないもの。材料や実力で税以上に作ったものは、本来自分たちで売って生活の費用に充てるものです。ただ、職人たちに売るアテがない場合、もうついでに引き取ってくれ、てなもんです。国守様には褒められ、何かしらの優遇をしてもらえたかもしれない。あと、これは某Youtuberの解説動画で「あ、それもあるね」と思ったのですが、国守様が余剰の紙を売り捌く時には、地元の商人に頼む、あるいは卸しますね。そうすれば、商人や紙を運ぶ人たちも潤うし、そうやって地元にも貢献できる。なるほど。税が貨幣でない以上、そういうこともあり得るのですね。
 ドラマに立ち返って。為時パパ、途中まではいい感じでしたよ。二千の税が納められなければならないから、一枚たりとも横抜きしてはいけない。余剰分が間違いならば、返してやろう。うんうん、お金や米ならそれでいい感じですよね。ただ、紙となると、上記のような問題が発生します。ただ税に関することを粛々とすればいいというものでもない、というのが当時の地方行政なのかな、と思いました。為時パパ曰くの「うまくやる」ということができないですし、為時パパ、ちょっと政治家には向いてないのかも。今ある問題をただバチン!と断ち切ってしまうのではなくて、どうしたら問題のない形に変えても後々までみんながちゃんとWinWinを続けられるか、それが大事なのですね。
 あと、単純に余剰分の中から、為時パパが買い取ることはできないんでしょうか。娘があんなに欲しいって言っているし、都よりずっと安く買えるはずだし。自分が国守の給与でもらっている米やら何かで支払って、正当に買う。フェアトレードじゃあござーせん?自分の給料で買ったものなら、堂々と娘にやって、自分も使えるでしょうに。職人も、自分たちの生活に必要なもので支払ってもらえたらよかったのにね。まぁこの場合、商人たちや何かはちょっと潤いませんが。いや、余剰三百を全部買い取って、百を自分たち様にして、後を商人たちに買ったのと同額で卸せばいいのか。はい、すみません妄想でした。

都に帰ってきたら、諸々変わっていた!

 とにかく、みんなくっついてた。いとも、あんなに尽くした殿への思いをあっさり忘れて、福丸へ。富や容姿の美しさやまして和歌の実力でもなく「私のいうことをなんでも聞いてくれる人」だからいい。つまり今風にいえば、いとさんのことを大事にしてくれるってことですよね。このいとさんの夫を選んだ基準、後々の紫式部にとって、または源氏物語にとってのキーポイントになる気もします。
 ってか乙丸!先週あんなに全国民を感動の渦に巻き込んだ乙丸!まぁいいけど、先週の今週で娶る?ここは補完エピが欲しいですね。少なくとも、先週のまひろに「乙丸、私宣孝様に嫁ぐの。これから私を守ってくれる人が一人増えるから、あなたも少しだけ自分の幸せを考えなさいな」くらい言わせて欲しかった。二十年必死に姫様を守ってきたことを告白した次のシーン(琵琶湖のシーンではすでに奥さんいた)でもう奥さんいたら、「をおぉおい?!」ってなるやん。容易に想像できますよ、でもそれはカケラだけでも入れ込んでくれないと、乙丸の奥さんにあんま感動できない。だってこれだと、重荷が下ろせたから結婚に向かえたというのは、乙丸の人柄に頼り切った妄想で確信ないでしょ。例えば他にも、乙丸があの時調子のいいこと言っただけで、実際んなこと考えてなかったって解釈だってできてしまうわけで。誰かが、あるいは姫様に語ったことでの自分の罪悪感の昇華を思わせるカケラをマジでください。乙丸が、所詮誰がにどつかれて吹っ飛ばされる役回り、ということが言いたいのかもしれませんが、もう少し可愛がってやって欲しいな。
 そして、惟規くんは周りをカップルに囲まれて飲み会が一気に訳わからない世界になってしまう。
 周りに急に結婚ラッシュが来る時、ありますよね。私は二十代半ばで来ました。一年で三件の結婚式に出たこともありましたし。東日本の震災より前のもありました。私は未婚ですが、それに乗っかるように結婚された方もいらっしゃるでしょう。なんなんでしょうね、あれ。別にいいんですが、星回りとかそういうのを信じたくなった出来事でもありました。目に見えないムーブメントで、人生の滅多にないイベントが重なる何かが……。
 まひろは知りませんが、道長の子どもが増えてました。字幕でわかるのですが「父上〜」とお出迎えした可愛い女の子は彰子ちゃんではありません。少なくとも倫子様のところに四人、前回でしたか?明子女王さまのところに三人いたし。男性ってこれができる人が多い気がします。これって何かと言いますと「心の奥には本当に愛する人がいるけれど、妻を娶って子どもを作り、奥さんを大事にして穏やかな家庭を作る」ことです。女性は妻の立場で、あるいは「本当に愛する人」の立場で、その不一致を受け入れられない人も結構多い。男も女も全員そうだとは言いませんが、そのイメージが、あらゆる後宮ドラマを作り出しているのかな、と思います。位の高い男性や帝位にある男性は、子孫を残すことも考え、政治的なことも考え、そして女性個人への愛情も考えているから、ハーレム状態でもうまくできるし、女性たちもうまくできると思っている。でも、女性は「私を一番愛して、それをみんなにわかる形で示して(つまり一番いい妻にして)」ってなもんですかね。だから、一夫一婦制って女性にとっては安心な制度。結婚前に女の戦い終わっていますし。

晴明は全てお見通しか、はたまた影の帝王か。

 私はこのドラマ、呪詛は上手くいったかわからんけれど予言は当たる、という解釈で見ています。晴明はまさに今回、予言を連発。まぁ、日食はちゃんとカレンダー見れば科学的にわかることだし、帝が政を蔑ろにしている今、堤の不備による大水や、政が行きどどかなかったり災害の後だったりの民の体が弱って伝染病が蔓延すること(おそらく対処も後手)、火事は頻繁に起こっている…これくらいは予言すること難くないと思います。予言が商売の晴明なら(をい)。地震はひょっとしてまぐれかもしれませんが、晴明に予言の才があるか、他の災害がブワッと出れば、地震がなかったことくらい誤魔化せるかな。兼家パパ同様、道長に政権が渡ることを是とするのですから、彼が自分の思ってもいない「娘」という宝を使え、と背中を押します。道長、分かっててすっとぼけたか、嫌過ぎて目を逸らしたか、姉の詮子女院さまの結婚生活知ってるからね。まぁ、史実での道長がこの後このアドバイスに従うことを知っている視聴者にとってはアツいセリフです。
 ただ、この予言。晴明は相手を選んで話しているからには、位などなくても世を操る手段として使っているように見えるのはちょっと言い過ぎでしょうか。出世欲のなかった道長に、ここまでやらせたい。もちろん、兼家パパの時代から付き合いのある自分の利益も兼ねて。位を極めないことで、政治の面倒臭いことや人付き合いは道長たちにさせて、自分は予言とアドバイスによって影で彼らを動かす、楽しそうですね。

一条帝、爆走中

 定子さま、周囲の批判や圧に疲れたのか、伊周を引き寄せることに不安を示します。でも、結局帝に対して、帝のことを考えたことは言いません。政は相変わらず蔑ろにし、中宮の元に通い詰めです。当然、皺寄せは家臣道長・行成に、非難は中宮に。えっと、女院ママンのお見舞いにも行けばちょっと心情変わるんでは?と思いますが、前回の恩赦が効かなかったことを認めたくないのか、それとも定子が戻ってくることに賛成してくれれば後はどうでも良いのか、ほったらかしです。
 これだけ道長に押し付けておいて、彼の辞表は受け取りません。まぁ道長がいるから政権がもっているというのを、一条帝が重々分かっている、というのを分かっていての辞表なので、家康の「腹を切る切る詐欺」のようなものかと思いますが(笑)。史実では、この頃腰をやってしまい、もう激務に耐えられんので、という体裁をとったようですが、内実はこういうことで、ドラマはストレートにやったという気がします。

宣孝さまの牽制

 ネットでは、道長に対する牽制というヒートアップした感想が結構出てますが、私これ、まひろに対する牽制かな、と思いました。まぁ、道長に言った時には楽しそうでしたが、道長を気ぃ悪くさせてこの人にいいことありません。けれど、忘れえぬ人に自分が結婚したことを伝えたと聞いたまひろは、この時点で宣孝に「俺が夫だぞ」と牽制されていますね。まひろ自身がどう口にしようと、それはもう一種の遊びで楽しんでいる宣孝さま。甲斐あって、まひろはちゃんと宣孝さまを受け入れましたね。都で色々確かめると言ったまひろ。本当に確かめたかったことは、確かめられました。表向きとはいえ、道長は自分の結婚に祝いの品まで送ってきた。もう「一緒に逃げよう」とも「今からでも俺のところに来てくれ」とも言わない。宣孝さまの勝利です。まひろ、そろそろちゃんと区切りつけて忘れえぬ人は過去の人にしましょう。女性としては、これ以上忘れえぬ人云々で結婚してもなおウジウジしていてはよろしくないわよ。
 史実を知っている以上、全力でまひろを手に入れた宣孝さまには、一日も早く幸せな日々を始めてもらいたいものです。

 物語も後半に入りましたね。紫式部(藤式部)の宮中編が始まらないけれど。
また、後半に入ったのだから、そろそろダーク道長が始まってもいいと思う。鎌倉殿の義時のように、主役級の主人公側の人物が黒かったからといっていかんわけじゃない。むしろその方がすっごい話になるというのは、三谷さんが証明していますね。

その他


・琵琶湖を渡る船の船頭さんの、ものすごい白髪。誰かが二役してるのかな。仙人みたいな白髪白髭。
・宋から来た鸚鵡、実資のところにいた!ただね実資よ、「宮中のことは鸚鵡の前でも語るなかれ」と言いますよ。ご注意を。
・なんだか今回てんこ盛り。
・宣孝さま〜!史実ずらしてもいいから最後まで登場してくれないかしら(無理か)。

長々とお付き合いいただきありがとうございました。

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