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大河ドラマ「光る君へ」第二十七話「宿縁の命」所感

やっちまったな。

 NHKよ、本当にそれでいいのか?と言いたくなる賢子=道長の子展開。
前記事で「視聴を検討するレベル」だと書きました。検討もしました。結論、視聴も所感記事も継続しますが、今回から、イヤだなと思ったことも批判的なことも、遠慮なく書くことにしました。大河ドラマの方があれだけ事前に批判の多かったまひろと道長の子を出してきたんだから、覚悟の上でしょうよ。脚本の方も大物ですが、知らんがな。たとえこの先私が物書きとして世に出られたとしても、そんな大物と会うこともないでしょ。今の生活圏にいない人だし。ということで、この石山寺からの賢子道長の子に話題に関しての文句は、後ほど。

一条帝と中宮定子が、後宮ドラマのいいムーブ

 帝の執拗とも言える愛情がエスカレートしてきましたが、中宮定子はもう自分の独壇場だと確信を得ていますので、「子を産める身分」云々の殊勝な発言。今更感か、か弱さを見せる演出か。「もう行くところがない」と言った口でよく言うわ。ああ、言っておきますが、この定子さんのキャラ付けに対しては、文句ありません。美しさを保ちながら、この微妙にちゃんと敵役をイケる定子ちゃんと高畑充希さん、素晴らしいです。
 こういう関係が一条帝と道長や詮子女院さまとの関係をギクシャクさせていくのは後宮ドラマの常道ムーブではないでしょうか。こうやって帝周りがおかしくなって、中宮に批判が集まるというところが、物語の展開起点にならないと。こういうところ、ちゃんと押さえているはずなのにね。
 一条天皇、ツッコミ入れらしてください。「母上の言われるままに生きてきて、公卿から後ろ指を刺される帝になった」とのたまわりましたか?あなたがママンの言うこと聞かず「唯一のわがまま」と自分で言った「定子中宮への偏愛」が公卿から後ろ指刺されているんですよ。そして「母上から逃れたくて」定子のところ走ったわけではなく、義父がママンを追い出したがために、あなたは定子と一緒にいるしかなくなったのですよ。彰子入内も、女院さまが帝にゴリ押しするシーンあったか?帝が自分で「許す」って言ったところしか見てませんが。それに「母上の慰み者」になる暇あった?即位してからは定子と中の関白家があなたの周りにいて女院さまブロックされてましたけど。後、このシーン帝の一人称「朕」と「私」が混在していますから、ママンの前では「私」で良いのでは?あんまりごとの言いようで、詮子女院さま、本当においたわしかったです。所詮十九歳男子、ものの言い方も本当に大事なものを守るためにどう振る舞えばいいかも、まだまだ未熟なのでしょう。行成の言葉も何にも効いてないね。この後、定子中宮も亡くなりますが、その後目が覚めてももう遅いってことでしょうね。

彰子入内の、滑稽さを描きたかった?

 彰子女御さまが可哀想だから、すんなり入内させてあげて。そして、これまで達観してほとんどのことをすんなりこなしてきた倫子さまも、久々の登場で若干天然キャラにシフトしたのかと言える赤染衛門さまも、道長の奮闘もドタバタも、イマイチギクシャクでうまくいっていないのが面白かったといえば面白かったですね。屏風(花山院の歌をだれか教えて)も、一条帝には睨まれて終わったし。必死に豪華な入内・女御宣下にしようとすればするほど、おとなしく地味な彰子ちゃんとのギャップで滑稽になっていく。その割に、滑稽さが甘いのはいかがなものか。もっと、道長が悶絶するくらい躓きまくって「はぁ?」とか叫ばせてそれでもゴリゴリ進んでいく道長に周りがアワアワするところ描けばいいのに。石山寺のシーン要らんかったし、ここが描きどころだったのにね。

宣孝様

 本当にまひろのことを愛しているのは、この人ですよね。あの、夜の「お前の子は誰の子でもわしの子」発言がすごく注目集めて「宣孝器がでかい」ってことになっていますが、辛いでしょうよ。「別れるなぞと二度と申すな」って言った後、少し唇震えてましたよ、宣孝様。
 前回から地雷踏むように、道長のことを殊更に持ち出してきていた宣孝様ですが、まひろに暗に「分かってるよな、俺の妻やぞお前は。とりあえずこれからは俺の妻として振る舞ってくれや」という警告を送っていたのでしょうね。道長がまひろを好きでいることは最大限に利用できるからそれでいいけれど、まひろは、少なくとも行動に移すようなことは、してほしくなかった。可能性があったから警告し続けた。でも、まひろは「不実」をまた冒したことを告白した。それでも、もう手放せない。自分の子として忸怩たる思いを持って育てる代わりに、まひろは絶対手放さない。もう切ないおじ愛……。ストレス溜まって睡眠時無呼吸になるんでしょうよ。史実だと、もうすぐこのイケおじ亡くなってしまいます。この無呼吸が原因だとしたら、宣孝様の突然死の元凶はまひろの不実ですわね。まひろはちゃんと宣孝様の死を悲しめるんでしょうか。ちゃんと源氏物語を書くようになるんでしょうか。

石山寺ゲス不倫→まひろの娘=道長の子 についての文句

 言わせてください。
 大河ドラマをなんだと思っているんですか。正直、民放の夜枠だったらとっても楽しく見られたと思います。全然構わなかった。私はそもそもあまり見ません。なぜって、こういうレベルの低い話になるから。でも、NHK大河でやるのなら、考えてよ。学校で習いませんでしたかね「TPOにふさわしい」って言葉。史実と違うことだけをこんなに声高に叫んでいるわけではなく、史実として変えてはいけないところを(賢子と紫式部の人権問題)冒してしまっていることと、史実と大事な資料(源氏物語)とこの展開との間に齟齬がありまくると言うことに対して、歴史ドラマとしての難があると言わざるを得ません。
 まず、何よりも道長よ。まひろをずっと好きなのはいいですよ。一生まひろを愛してください。けれど、石山寺で人妻を抱くのはやめよう。そんなところで汚くならなくていいから、早く政治的なことで腹括れ。どこが「クリーン道長」よ。石山寺も怒りの呟きがあったらしいじゃないですか。寺でんなことすんなって。
 えっと、あるYoutuberさんが「ゲス不倫」という言葉を使っていました。その言葉には大いに賛成ですが、その後「女性脚本家だからですかねぇ」と仰っていました。それにはひと言言わせてください。女だからじゃありません。女性にとってもこの展開は不快です。おかしいと思います。
 次。「この頃は性に対して奔放だから、こんなこともある」とか「当時は通い婚だから、むしろ間男いるのが普通」なんてご意見を散見します。んじゃ、反論を。そもそも「一夫多妻」というのは、その家に多くの子ども持つための婚姻制度ともいえます。ただね、DNA鑑定もないこの時代、どうやって子どもの両親を確定させますか?母親は、出産直後のすり替えみたいな何か特別な事件でもない限り「産んだ」という事実で確定できます。でも、父親はそれこそ母親の申告一つな訳で。そのために、母親と婚姻関係にある男性を一人にしておく必要はあるのです。だから「多夫多妻」ではなく一夫多妻。つまり女性の方が罪深いですよね。夫がいるのに不倫するのは。
 そして、まひろのモデルが紫式部であり、源氏物語を描いた人であるということなのでしょうが、前記事に書いた通り、このまひろに源氏物語を書く資格はもはやないわけで。というか、本当に源氏物語を読み込んだんでしょうか。源氏物語での「藤壺(光の君の父の後妻)」は、光の君からのアプローチを拒み続け、それでも強引に……ですよ。実家ですから空蝉のようにはいきませんし。上級貴族の娘であったか弱い藤壺が力づくの光に勝てるわけもなく。宮中でできた子は産むしかない。まひろとは全然違う。紫式部はそれを作品中で「最大の罪」とし、光の君にその後様々な罰を与えていきます。藤壺は罪に苦しんで落飾し光とも会えなくなるばかりか、光は父帝桐壺との間にも決定的な溝を自ら作ります。父帝は光の身を守るために臣籍降下させた人なのに。加えて、常に物語に暗い影を落とし、紫の上を正室にできなかったばかりか、正室に迎えた女三の宮にできた子も他の男との子で、彼は自分の罪を決して拭うことができない。もし、紫式部自身に夫以外の子を作った経験があったとしたら、こんな話書けます?紫式部は「たとえ強引に抱かれた末のことだとしても、罪深いこと」だと描いています。女性にそれを拒み切る腕力がなかったとしても、最低だと。
 まひろはどうよ?自分からダッシュしましたよ!たとえ子ができなかったとしても、この時点でだいぶ紫式部とは別人です。
 もっといえば、源氏物語でよくない結果を生む恋愛として、たとえ夫が亡くなっていたとしてもいいや夫と結婚前だったとしても、他に男性がいる状態で光の君と付き合った女性は不幸になるし、光の君はそれで呪われたり流罪になったりするんですから。紫式部や、当時の感覚として「女も複数の男とOK」はあり得ないのです。私は歴史の専門家でもなければ平安文学の専門家でもないですが、これくらいのことは分かります(一応、日本文学士)。ほんと、誰かおかしいっていう人いなかったのかな。先だって、どこぞのミュージシャンのミュージックビデオで、コロンブスがらみの騒動がありましたけれど、ほぼ同じ。
 源氏物語をちゃんと読み込んでいない人、作品から作家や時代の感覚を掴めない人の所業ですよ。脚本段階で誰も突っ込んでくれる人がいなかったのが不幸ですね。せっかく「名作大河」になれるはずだったのに、主人公の恋愛をおかしくしたために、評価が下がってしまっています。一条帝と同じでしょうか。

もう、妄想に逃げる…。

 妄想していいですか?これ、実は違っていたなんてこと、ないですよね。まひろは「月のもの」がない期間を明言しませんでしたし、宣孝様の来訪がない期間も明言されていません。直前に来てたよね。灰被り事件のすぐ後でしょ、石山寺行ったの。妊娠初期って不正出血あるらしいことも聞きますし。
 それに「師走」=十二月に生まれるはずだった子、十一月はじめに生まれていません?皇子誕生と同じくらいになってるでしょう?
 まひろも宣孝様もみ〜んな「道長の子」だと思っているけれど、後々よく考えてみたら、あれ?みたいな。次回、お仕事から帰ってきた宣孝様が名前つけた夜に「それにしても早かったのう、正月の時の子か?」って言う、まひろ「あれ、そしたら、ちょっといと?!」なんて……。ないわな、ミチカネの風呂敷もあんまり回収しなかったし、広げっぱなしのところが多いドラマだから。
 まぁ、もう満足でしょ。もう道長とまひろの色恋云々は終わりにして、本格宮廷ドラマに移行してくださいな、と切に願うばかりです。

その他

・晴明「やってしまえばよい」このドラマ何回目?前回は中宮定子が伊周兄を関白か内覧か何かにしようとした時だったような。
・晴明「一帝ニ后」にこだわる前に、ちゃんと道長の不調の原因を占ってあげて
・倫子さま「彰子の興味があるのは何?」みたいなこと言ってましたけど「猫」ではないでしょうか。猫ちゃんを撫でていた時だけ、ちょっと表情が明るかったように、見えました。
・「道長が心底愛しているのはまひろだ」ということが、早く倫子さまや明子女王さまにバレてほしい。倫子さまには何食わぬ顔で、まひろが愛した道長と倫子さまの娘である彰子にまひろを支えさせ、彰子を見せつけ続けられるまひろ。そして、六条の御息所ばりに明子女王さまの生き霊に取り憑かれてほしい。
・いや、次回予告で道長の元へ飛んでいくまひろが生き霊か?
・彰子女御様、早く覚醒しましょ。

今日も長々とお付き合いいただき、ありがとうございました。

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