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大河ドラマ「光る君へ」第十八話「岐路」所感

久々にネタバレアラートです。今回は「宮廷の諍い女」最終回までのネタバレを含みます。

宣孝さま!

 ウェルカムバック!ようこそおかえりあそばしました。この、平安貴族にしてはちょっとロックな、でも小器用な感じがいいですよ。蔵之介さんがいい味出してます。この人かさわさんがまひろの側にいてくれれば、このドラマがちょっと明るくなります。

中の関白家、定子中宮さま。気づくの遅いよ。

 道兼、道長と、二回の関白(内覧)選定で敗北する伊周。ここに関わる女性として、詮子女院さまと定子中宮さまがいますね。そして、格の違いがハッキリ出ます。まぁ「それぞれのパパが好きだったか嫌いだったか」はあるかと思いますが、ここ何回かの定子中宮さまは、一条帝より実家が大事な感じが否めませんでした。正直、敗因はここにある気がしなくもない。何より、道隆兄が関白になった時点で、伊周をちゃんと育てるべきだったんです。「傲慢ボンボンボーイ」じゃなくて「若いのに人徳者」として。道隆兄の急死があったとはいえ、関白に選ばれなかったから「人望を得られませ、精進なさいませ」みたいなことを伊周にやっと言い出す定子中宮さま。いや遅い。本当に一条帝を思うのであれば、将来右腕になるはずだと思っている兄には、もっと早くから周囲の信頼を集めるような人であってほしいと苦言を呈するのが道理でしょう。それに「帝も兄上も大切」と、同列においてはいけません。だから一条帝に「嫌いにならないで」なんて言わせてしまうんです。つまり、一条帝からしたら「伊周を関白にしなければ、定子は自分を嫌う(伊周の地位のほうが、自分への愛情より大事な)のではないか」という疑念を持っているのでしょう。それに、伊周より道兼・道長の方が年長者で政治力もあり、周囲の信頼もまだあるということに気づいている一条帝が、よくこれで定子中宮さまを嫌いにならなかったな、とさえ思います。
 一方、母詮子女御さまは、話に理が通っています。この人はいつでもそうだったのですよね。一見嫁いびりをしているだけかのように思われた定子中宮への厳しい態度も、彼女が中の関白家の父子にちゃんと物言わないまま、父子が増長するようなことが起こっていたからじゃないでしょうか。証拠に、道隆の摂政就任自体に、詮子女院さまはさほど反対していないように見えました。大嫌いな兄上だけれども、少しはまともにしてくれたらと思っていたかも知れないのですが、道隆は一条帝を囲い込んで、長男と共にむちゃくちゃし始めた。それを定子は諌めもしないとなれば「お前も一緒じゃ💢」ってなりますよね。一条帝の政治がちゃんとできるようにするために、道兼・道長の選択は正しかったわけですし、これまでの厳しい詮子女院さまの子育ても、正しかったわけですよ。それに詮子女院さまは「一条帝」と「円融帝」のことしか言いませんでした。円融帝のこと、やっぱり嫌いになり尽くせなかったんですね、詮子女院さま。二人の女性を目の前にして、愚帝になれない賢い一条帝の心のうちを考えると切ない。
 そう思わせるキャラ設定、定子中宮さまの「絶妙に中の関白家っぽいのに、最後に兄を見捨てる感」の演技、素晴らしい。

道兼はこれでいいのか 

 「こんな悪人が」はどんな悪人でしょうか。正直、史実上の悪事「花山院の退位事件」近辺のことだけなら、つまり兼家にやらされた(とドラマではなっている)ことだけなら、今回「いい最期だったね」と言えたと思います。が、せめて自分が殺した人の家族が誰だったか(一度は優しい言葉をかけてくれた為時の北の方)ということぐらいは知って、ちゃんと悔いて死んで欲しかった。まるでそのことは忘れたかのような死に際。道長も、最後にそれだけは言っても良かったんじゃないかしら。
 まぁでも、復讐や報いを受けさせるなんてことは簡単にはいきません。殺人となると、現代はちょっと話が違いますが、ちやはが公には「病死」となっている以上、厳しいでしょうね。そういう意味で、リアリティがありすぎます。
 明子女王さまが、兼家パパの死を境に、すっかり毒気が抜けて幸せそうな感じでよかったと思うし、まひろたちももう一区切り本当につけていければと思うのですが、ドラマとしてはやや物足りなさがあるのが今の所の感想です。中国宮廷ドラマ「宮廷の諍い女」では、最後に全ての悪行だけでなく、主人公熹貴妃(や他の妃たち)の気持ちや秘密まで全部皇帝に伝えて、復讐しきります。リアリズムはないかも知れませんが、最後に自分がしたことの本当の報いを知って苦しみながら死んでいくのが、仇の役目かな、と思っていました。もっと言えば、このドラマ意外と「呪詛」とか「毒殺」とかから藤原家が守られすぎている。道隆も道兼も、史実上の記録は「病死」だけれど実は……みたいなことはないんですね。去年の大河がそれくらいやったせいか、期待していたのに(をい)。兼家パパだって、明子女王さまの呪詛は跳ね返って明子女王さまの人格をリセットした感じがしました。晴明だけでなく、そういう意味でこの家全体が強かったみたいな感じさえします。為時やまひろが、ちゃんと報われたと思う前に逝ってしまった道兼。こうこれ以上、恨むことさえできないところへ行ってしまったのです。
 だから、道兼の「こんな悪人が」にどこまで意味を持たせるかが、ちやはのお話をちゃんと終わらせられるかにかかっているのですが、道兼がちやはのことを知った形跡が一つもない。花山院(そういえば円融院の毒もこの人だった)のことだけで十分極悪人の意識持っちゃってますから。

さわさん!アゲイン

 今度はパパのお仕事で意図せずお別れと。さわさんこれきりなんでしょうか。公式HPにはインタビューが載っていたらしいので、寂しいです。

 最後の六条廃屋で再会するシーン。ネット上には色々と解釈があるようですが、個人的には「一緒にはなれないけれど、かといって愛さなくなったわけではない。」という意見です。史実ではこの後紫式部は結婚しますが、まあこういう恋愛ってその気持ちをどこかに置いておいて、現実的にいい旦那になってくれそうな人と結婚できるものですよね。

今回もお付き合いいただき、ありがとうございました。

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