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より良いパンを、日々追い求めて/地元密着型の「丸山パン」

2018年5月にオープンした「丸山パン」。古民家を改装したこのパン屋を営むのは、丸山裕介さん・かのこさんご夫婦です。駐車場から、木のブランコや放し飼いの鶏を眺めながら庭を進むと、明るい音楽が流れる店内へと辿りつきます。今日はいったい、どんなパンが出迎えてくれるのでしょう。

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地元で愛されるパン屋を目指して

お二人が出会ったのは、東京の調理師専門学校でのこと。裕介さんは料理人、かのこさんはパン職人になりたいという、幼い頃からの夢を一途に追いかける二人でした。卒業後はそれぞれレストランやホテルなどで修行を積み、数年後に裕介さんの出身である山梨に戻ってくることとなります。

「最初は実家の農業を継ぐつもりだったのですが、やはり自分たちの夢を叶えたいという想いが強くて。周りからの要望も多かったので、まずはパン屋を始めることにしました」

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店舗探しをする中でたまたま見つけたのが、大正8年築の一軒の古民家でした。土間を広げてパン売り場をつくるなど、店舗として使えるよう自身でリノベーションを行い、100歳近い家に新たな息吹を吹き込みました。そしてオープン以来、老若男女問わず多くの人が訪れる場となっています。

「毎日来ても飽きずにゆっくりいられる、地域に密着したお店を思い描きながら、日々パンを焼いています」

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その思いは、ずらりと並ぶ何十種類ものパンからも感じ取ることができます。もちもちサクサクふわふわ、惣菜系からお菓子系など、賑やかなパンの姿はいつまでも眺めていられそうです。

一つ一つのパンに、広く深く向き合う

幅広いラインナップには、自分たちが食べたいと思うものを軸に、お客さんからのリクエストも取り入れています。休日には他のパン屋を巡って、新商品のタネを拾ってくることもあるそうです。

しかし、ただ闇雲に種類を増やしているわけではありません。種類の豊富さを横の広がりとするならば、各種のパンには考え抜かれた縦の深さがあります。それは広く浅くではなく、広いながらも深いパンづくりです。

「それぞれ適するものが違うので、小麦粉や酵母の種類はパンによって使い分け、焼き方も変えています。天然酵母には旬の果物の切れ端を入れたりするので、季節によってパンの風味も微妙に変化します」

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何度も通っていると、商品名は同じでも、パンの形やトッピングが以前と異なっているのに気づくこともあります。その変化は一つ一つのパンにきちんと向き合っているからこそのものであり、現状に満足することのない、尽きぬ探究心の表れといえるでしょう。

「作るうちに、イメージが変わってくることがあります。日々試行錯誤しながら、より良いパンのあり方を探っています」

特にこだわりがあるのは、石窯で焼き上げる「食パン」だそうです。石窯はたまたま譲り受けることになったようですが、たまたま見つけた古民家といい、どちらも偶然のようで必然的にお二人の元にくることになっていたのかもしれない、と思えてきます。

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石窯でパンを焼くには、薪を集めるところから始めなければなりません。燃す際も、電気オーブンのように細かい温度設定ができないため、薪の状態や太さを見て火力を調整する必要があります。

「手間はかかりますが、石窯だと短時間で中まで火が通るため、外はパリッと香ばしく、中はもちもちの仕上がりになるんです」

これだけでも魅力的ですが、それは食パンの一面でしかありません。聞けば聞くほど、いくつもの食パンエピソードが出てきました。

かのこさんが修行していたホテルのシェフから、お墨付きをもらった食パンであること。
パンの耳はしっかり目の方が生地と合うので、強めに焼き上げていること。
塩気をきかせているので、クリームなどと合わせると甘さが引き立って相性が抜群であること……。

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ちょっとした裏話やこだわり、オススメポイントなど、食パンについて語れる引き出しはいくつあるのでしょう。それはきっと食パンに限った話ではなく、すべてのパンに対して、商品POPには到底書ききれないような魅力の引き出しがたくさんあるのだと思います。

「クロワッサンも、市販のバターシートは使用していません。通常よりバターを多めの配合にしていることもあって、毎日シートを手で伸ばして織り込んでいます」

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一つ一つのパンへの深い愛情を、すべて開けてのぞいてみたくなりました。

大人の夢を描きながら、パンづくりを一心に

一通りのパンを用意するのに、作業は朝3時頃から始まり、日中は接客をしながら翌日分の仕込みを行うそうです。遅い時は20時頃まで手を動かし続け、忙しい中で丁寧にパンと向き合うのは決して楽に思えませんが、

「パンは生き物なので、毎日変化する表情に合わせて、微調整してあげるのが面白いです。何よりもお客様に喜んでいただけるので、パンづくりは楽しいですね」

と、朗らかに語ってくれました。古民家の中はパンのいい香りと共に、子供の頃からの夢の中に生きるお二人の、幸せそうな雰囲気に満ち溢れています。

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「広い古民家を利用して、みんなが集まる機会をつくりたいです。子供向けのパン作り体験など、やってみたいですね」

将来的にはレストランや地域資源の活用など、パン屋の枠を超えてやってみたいことも多々あるようです。しかし、パン屋としてのスタートもまだ切ったばかり。しばらくの間は、精一杯パンづくりを極めていくといいます。

「今後は山梨のフルーツを使ったパンも増やしていきたいです。楽しい団欒のひと時に、私たちのパンがお供できたら嬉しいです」

今日もまた、古民家の広い空間に、パンをつくる音が鳴り響きます。

丸山パン
営業時間/10:00〜18:00
定休日/日曜・月曜
所在地/〒405-0033 山梨県山梨市落合288
電話番号/080-1186-7900

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文・写真=おがたきりこ

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