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私は誰かのツネタになれているのだろうか?

この時期になると、友達について考える。
会おうとしなければずっと会えない友達。
少しずつ環境の変化とともに付き合いが変わっていく友達。
新しい友達ができる分、古い友達との関わりが少なくなっていくような気持ちになる。
「私にとって友達とは何なんだろう」と年末に近いこの時期によく考えることがある。
考える理由は、年末というものは『なかなか会えないけど「忘年会しよう」という魔法の言葉で疎遠になっていた友達とも会える時期』だからである。
しかし、それは昨年までの話。
今年は忘年会どころか、外にも出ることが難しいのかなと思うと、東京に住んでいる理由がうすーくなっていく。
人と会えない東京は、私の中では魅力が半減する。
だからなのか、古くからの友達とのつながりが今年は多かった。
「なんだ、同じ場所にいなくてもリモートでいつでも同じ時間を共有できて会話もできるんだ。」って気づいた。この環境のおかげ。
だからより友達って何だろうと考えた。
私は友達にとってのどんな友達なのだろうか。
友達なんて深く考える必要もないかもしれないけど、毎日深く考えないから考えたくもなる時期だった。

話は変わるけど、ここ一か月ではまった詩人がいる。その人の明るさに惹かれ、人間性を知りたくてエッセイを図書館で借りた。
借りっぱなしの本は、読書の秋フェア中の私には読む優先順位は低く、ソファーの上で放置されていた。
先に読んだのは課題図書である「くまの子ウーフ」。
ウーフを読み終わった後に1番印象深いことはツネタという存在である。
きつねのツネタはどことなく意地悪な感じがするけど、ウーフの核心をつき、どきっとさせる。
ツネタはにわとりが卵を産むから卵でできていると答えたウーフに
「ウーフ、すると、きみはいったいなにでできてるんだい。」
と質問をする。
ウーフは困る。そして、ウーフの出した答えを否定することなく、ツネタはウーフはおしっこを出すから、おしっこでできているんだと言う。
人を困らせながらも自身に考えさせるきっかけを与えるツネタ。
そんな存在、私にはいるのだろうか。
いや、そういうことではなくて、私は誰かのツネタになれているのだろうか。
それを言葉にしたくてもなかなかまとまらずに、気分を変えたくてソファーに放置されているエッセイを手に取った。
「友達」についてのエッセイだった。
なんてタイムリーなんだろう。
私は知らず知らずのうちに友達を深く考える罠に引っかかっていたのだ。
しかも、自分で借りた本だから自分でつくった罠に自らはまってしまったようなものだ。
その本には著者が色々な場面で出会った友達がたくさん出てくる。そして、友達と同じくらい本もたくさん出てくる。「王子と乞食」「巌窟王」「孔子」…友人に紹介されたり、好んで読んでいたり、様々な場面で出会った本だ。
その本を読みながら電車に乗り、高校時代からの友達と遊んだ。

ふいなことから本の話題になり、彼女は「はてしない物語」をもう1度読もうと思っていると話した。
社会人になりたての頃、「モモ」にはまりミヒャエル・エンデにはまり、「はてしない物語」にはまった。そういえば小学生の頃ファルコンって呼ばれたことも思い出した。
私がはまっていることを伝えたら彼女も読み出して、気づいたら彼女の方が早く読み終わっていた。
そこで最近読んだ本は?という会話から、「巌窟王」を読んだという。
私はびっくりした。
読んでいたエッセイの中に「巌窟王」が出てきた。
私はその本を読んだことがなかったのでとても気になっていた。
こんなにつながることはあるのだろうか。
ウーフを読まなければ「巌窟王」のキーワードまではたどりつかなかった。
運命を感じ、次に読む本を「巌窟王」に決めた私は、彼女に「くまの子ウーフ」を読んで感想文を書こうとしていると話をした。
「で、どういうテーマで書こうとしているの?」と聞かれたので、
「ちょっといじわるなところがあるけど、友達の核心をつくような話をしてくるツネタっていう存在に、自分はなれているのかな?をテーマに書こうと思う。」と答えた。
「まぁ、十分ツネタ要素はもっていると思うけどね。」

一生のうちには必ず会うべき人には会えると聞いたことがある。

きっと本に出てくる登場人物も会うべき人に含まれるのだ。
私にとってウーフもツネタも会うべき人だったのだ。

私の周りにある見えない世界が、それぞれに糸でつながっていて、お互い引っ張り合って目の前に現れる。
ツネタの要素をもっているなら、どんな人の前でもツネタのような存在でいたい。いじわるなことを言っても、ウーフとツネタは友達だと思う。

多少いじわるなところがあるかもしれないけれど、それもまたいいところだと胸を張って過ごしていこう。

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