阿部詩選手の姿から感じる日本人らしさ

早くも前半戦が終わったパリオリンピック。
メダルを取ったシーンよりもある意味注目されたのが柔道、阿部詩選手の個人戦敗退後の行動です。

この号泣している姿にフランス人が多く占めていると考えられる会場の観客からはエールのように「ウタコール」が起きました。
その一方で、日本国内では批判の声も少なからず上がっており、阿部選手のSNSには誹謗中傷コメントが届いてしまっているようです。

人目をはばからず号泣する姿をみっともないと考えた人が意外と多いんだなと思います。
確かに、勝っても負けても感情を表に出さないところが日本人の美徳みたいなところはあると思います。
現に柔道や相撲といった日本の国技では感情を出すことを良く思わない人が多いです。

感情を出さないところが日本人らしさというのは私も同感ですが、その一方で今回の阿部選手の様子はとても日本人らしいと思いました。

オリンピックや他の世界大会の舞台で負けてあそこまで取り乱す外国の選手を見たことがあるでしょうか?
私は日本人選手では過去に負けて取り乱す選手は見た記憶はあるものの、外国人選手で負けて発狂するように号泣する選手を見た記憶がありません。

阿部選手の泣いている姿は負けたことが辛く、悔しくて泣いているというより、人生において自分が想像もしていなかった不幸なことが目の前で起きてしまったのを見て発狂している感じを受けました。
逆に言えばそれだけの努力をしてきたということでしょうし、金メダルを取ることに文字通りすべてをかけてきたのだと思います。
この泣いている姿をみてどれだけの努力をしてきたのだろうかと戦慄しました。

阿部詩という人間のプライベートを私は一切知らないので、もしかしたら柔道をやりながらもしっかり趣味の時間や恋人との時間もバランスよく謳歌しているリア充であるかもしれません。
ただ、おそらくは人生において今回のオリンピックだけでなく、これまでも大きな目標のためにいろんなものを捨ててやってきたのではないかと思います。

全てを投げ捨ててでも自分の目標を取りに行く部分は日本人の特徴ではないかなと思います。
欧米の選手だと、一流のアスリートでもスポーツは職業ではあるものの人生の一部でしかないとする考え方が一般的なように見受けられます。
日本人の一流アスリートは自分の欲望や私生活を投げうってでも目標を達成する、勝ちを取りに行くことを良しとする部分があると思いますし、最近までは家庭を顧みずに仕事にまい進することを求められているような風潮もあったように思えます。

ある意味狂気的なのですが、その狂気があるからこそ、一定の領域までは表情を崩さず振舞っていても、ある閾値を超えた時にダムが決壊したように発狂する姿が出てくるのではないかと思います。

その狂気に対してみっともないと考える日本人がそれなりにいたということですが、会場で「ウタ」コールを送ったフランス人の方が日本人の精神性を理解していたのではないかと思いました。

パリオリンピックにおける柔道競技は昨日終了しました。
阿部兄弟は28年のオリンピックを目指すと早くも宣言がありました。
4年後は兄、一二三選手のオリンピック三連覇と兄弟揃っての2度目の金メダルに期待したいです。

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