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6月のうろうろ読書記録。

 いや〜〜Twitterまともに見られませんね!(2023/7/2 21:00現在)。仕方がないのでnoteを開いて、月が変わったから先月のまとめが書けるじゃないよと気がつきました。もう来月にはこのルーティン忘れてそう。

 とはいえやれる限りはやっていきます。では2023年6月の読書記録。

内田百閒『摩阿陀会』『まあだかい』

左からちくま文庫、福武文庫『まあだかい』、単行本『摩阿陀会』

 5月29日は百閒先生のお誕生日だったんですよ!
 百閒先生のお誕生日といえば、先生を慕う元生徒たちに囲まれて飲めや歌えやの大宴会となっていた「摩阿陀会」。発端となった百閒先生が還暦に自ら祝い事をした0年目から、翌年の元学生主体になってから百閒先生の最期まで続く、年に一度の宴会についての随筆を集めたのが、内田百閒『摩阿陀会』(単行本、百閒先生の没後にまとめられたもの)、『まあだかい』(福武文庫、ちくま文庫)です。

 もともと福武文庫とちくま文庫しか持ってなかったんですが、5/29の当日に摩阿陀会のことを考えたり再読したりしているうちに、単行本も……欲しいな……とふと思ってポチッて届いた頃にはもう誕生日ではないわけですね。でも百閒先生も最初の年は8月までお祝いしてたから……(※一度に招ける人数が限られていたため、都合を合わせて何回にも分けて還暦の盃を交わしていた)

 来年再来年と、5月29日が来たときに「こういうまとめ記事がありますよ!」とサッとお出しできるものを作っておきたいので、この本についてはまた別にまとめたいですね。言うだけはタダ。

 まあしかし、百閒先生て、ほんと元学生たちに慕われてるよな……と、これらの本を読むと改めて軽くびっくりしますね。現代とは先生と学生たちとの結びつきも違うとはいえ、なんでだろうなあ、どういうところがそうさせるんだろうなあ、と、読むたびに考えてしまうし、その理由をいくつか思い浮かべては他愛もなく想像していくのが楽しい読書ですね。

北村孟徳『めぐる盃』

 とか考えてたら、登録したきり音沙汰がなかった日本の古本屋の探索本リストからお知らせが来て、北村孟徳『めぐる盃』に巡り合えました。なんてタイミングのいい……!

 北村孟徳は百閒先生の元生徒で、摩阿陀会の主要メンバー。招待状である「摩阿陀会回文」を書いていた人でもあります。なのでこの本にもその招待状の文章が巻末にまとめられているし(単行本の『摩阿陀会』にもあります)、それを書くのに苦労した話や、百閒先生との思い出話もいろいろと載っていました。この本はまだしっかり読みきれてないので、またまとめ記事を書く際に改めて。

夏目伸六『父の法要』『父・漱石とその周辺』『続父・漱石とその周辺』

夏目伸六の本3冊

 日本の古本屋サイトをうろうろしている時に見つけて、そういえば『猫の墓』と『父・夏目漱石』は持ってるけど他のは知らなかったな〜と思いついてまとめ買いした3冊です。夏目伸六は夏目漱石の次男で、子供の時はそうでもなかったけれども、大人になってからは百閒先生とも親しくしていた人。というわけでここにも百閒先生情報がちらほらと混じっています。それをひとつひとつ拾っていくのがァ……楽しいんだァ……(ゲヘヘ)

 伸六氏の本は文春文庫から出ている『父・夏目漱石』が現在でも手に入りやすい本だとは思いますが、まだ幼かった息子の目から見た漱石エピソード半分、人から聞いた(もしくは漱石本人の書いたものから紹介した)漱石エピソード半分という感じで、結構もともとの漱石好きが読むと「まあまあ知ってる」になったりするんですよね。元ネタ既読だから……。

 なのであんまり深追いはしてなかったんですが、百閒先生の序文と蓄音機エピソード目当てで手に入れた夏目伸六『猫の墓』は、結構漱石とは関係のない伸六さんの個人的な随筆が入っていて、むしろそっちの方がいきいきしていて面白いじゃん! もっと読みたい! と考えを改めました。

 で、今回手に入れた三冊も、伸六さんが夫婦で開いた「夏目」という名のバーに来る漱石好きな客とのエピソードや、歳を取った漱石門下の人々との話、文春に入社したときのとこなんかがとても面白くって、やっぱり伝聞より本人の人生から来る話だよな……と。

 この3冊と『猫の墓』『父・夏目漱石』で夏目伸六の本はたぶん揃った……のかな? 全集の出てない作者のものは、後年文庫化されてもとりこぼしが多かったりするので、単行本は買える時に買っておくくせがつきました(もっとマイナーな人だったり、厳密に収集するなら単行本未収録の雑誌掲載とかもあるわけですが、まあ全員そこまで追ってはいられない……)。

石垣りん『朝のあかり』

 中公文庫の公式TwitterがRTしていた感想ツイートを見て興味を持ちました。というかお恥ずかしながらそこで初めて認識した作家(詩人)です。岩波文庫の棚になんかずっとあるな〜新刊だな〜と認識していた詩集の人だ! と気がついたのはこのエッセイ集を買って読み始めてからでした。

 戦前・戦中・戦後と通して銀行で働きながら詩作をし、長く親兄弟と暮らし、未婚で生きた女性のよしなしごと。労働について、男と女の地位や立場の違いについて、移り変わる戦後の世相を眺めながら綴る、芯の通った文章が いや〜〜好きですね…………。

 男女の格差や未婚の女に向けられる世間の目が、残念ながら今とそう変わらないところもあれば、いやさすがにここまでのことは……今はなかなか……という部分もあり、100%今と同じでないからこそ安心して読めるんだよなぁ、という個人的には思ったり(それはそれでどうかとも思いもしますが)。

 ともあれ、詩人の書いた、地に足のついた散文というのはやっぱりいいなぁ……と自分の好みを改めて感じました。あんまり浮世離れしたものは好きではなくて、この「詩的でありながら地に足がついている、けどやっぱり詩的」な塩梅がいいんですよ。草野心平とかもね、そういう感じで好きです。(石垣りんも「歴程」同人なんですね? wiki見てへえーとなった)

 今やってる岩波文庫のブックカバーキャンペーン対象に『石垣りん詩集』もあるので、帯のある店を探して書いたいと思います。なんか最寄りの店では応募券の帯がついてなかった……。

柴田勝家『走馬灯のセトリは考えておいて』

 ハヤカワのKindleセールにつられて買った、本屋の店頭で見た時からちょっと気になっていた本。面白かった〜〜!!

 面白かったんですけどそれ以上に何から何まで「好きなやつ!!」だったので、これから作家買いしようと思います。セール中にもう一冊既刊買っておこう。

 このnoteをご覧の皆さまにはおわかりでしょうが、ふだん基本的に明治大正昭和初期をさまよっていて、最近ようやく戦後にも手をつけ出したような本読みをやっているので、現代作家の本を読むたびに「100年ぶりに現代に戻ってきた……」みたいな気持ちになってます。いやまじで。

 この本は現代よりもうちょい先の未来の話だったりもするんですが、だいたい書いてあることが「われわれの知ってる時代だ……」であり、だけど現実によく似ていながらどこか違う進み方をした世界の話で、その知ってる世界とフィクションの設定の塩梅がものすごーーく好みでしたね。好きです。

 上記の石垣りんの本と続けて読んだんですが、だいぶ違うものなのに個人的に「好き」と感じる質感が似ていて、そういうこともあるんだなあ……と勝手に面白がっています。


 さて、それではまた来月にでも、7月分をまとめられますように。あとTwitterがなんとか生き返ってくれますように!