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透明駒習作2

問題

協力詰 1手 透明駒 1+0
※出題図は実戦初形から到達可能であることを仮定する

ルール説明

【協力詰】
先後協力して最短手数で受方の玉を詰める。
無駄合の概念はなく、すべての合駒が有効。

【透明駒】
位置・種類が不明の駒。着手の合法性、攻方王手義務を満たせる可能性があれば、それを満たしているものとして手順を進めることができる。

透明駒のルールの詳細は、例えば下記リンクに記載の情報をご確認ください。

解答

26と 迄1手

後述しますが、レトロ解析により攻方の透明駒は35の地点か駒台のどちらかにあるということが分かります。もしそれが分かれば、18の地点に攻方の透明駒はいないので 26と の1手で詰むことが分かります。また、26飛では37玉が可能で詰んでいません。Xでは38歩(49角に合駒)で詰んでいません。

通常の詰将棋(伝統・フェアリー)では、初形に逆算可能性は要求されません。例えば下図は14角成の1手詰です。下図が先手番ということは直前に後手が何か指したはずです。

盤上に後手の駒は玉しかないので、直前の一手は玉を13に動かした手のはずですが、13玉はどこから来たのでしょうか?
23や24には先手の駒があるので、23や24から13玉と動いた可能性はありません。また、11王がいるので12や22の地点から13に玉が来た可能性もありません。さらに、もし14にいた玉が13に動いたとすれば、14玉の局面で実現不可能な両王手が掛かっていたことになるので、14から来た可能性もありません。よって、出題図は直前の後手の着手が存在しない局面です。したがって、実戦初形から双方が指して出題図に至ることはできません。

ただし、出題図の直前の着手が存在することや出題図が実戦初形から到達可能であることは、詰将棋の完全性には含まれていない条件です。そのため、上記の詰将棋は詰将棋として完全です。

今回、下図の注釈に記載の通り、出題図は実戦初形から到達可能であることを仮定しています。この仮定を使いつつ出題図に至る手順を考察することで、攻方透明駒の可能性を絞り込むことができます。

再掲

まず、上図の直前の着手は27玉だったことが分かります。玉がどこから来たのかを考えます。不可能な両王手が掛かっていたことになるので、26から来た可能性はありません。29王がいるので、8段目から27に移動した可能性もありません。よって、27玉は17から来たか37から来たかのどちらかです。

37玉は17から来たと仮定します。17玉の局面で16と・19香の両方で王手が掛かっていてはいけないので、18に攻方透明駒があって19香の利きを止めていたはずです。18の攻方透明駒は17玉に王手を掛けていないので、角・桂のどちらかです。出題図で27玉に王手を掛けてもいけないので、攻方透明駒は18桂に決まります。

出題図の27玉は17から来たと仮定

上図のさらに1手前を考えると、攻方が16とと指したことが分かります。もちろん成駒は駒台から打つことはできないので、16のと金は盤上から動いてきたはずです。27から16に来たとすれば、27との時点で王手が掛かっていたことになり、これは不整合です(正確には、27との1手前の後手の手が王手放置だったことになる)。したがって、26とが16に動いたと分かります。

出題図の27玉は17から来たと仮定

ここまでで分かったことを一旦まとめると、以下の通りです:
出題図の27玉が17から来たとすれば、上図から「16と、27玉」の2手で出題図に至った

さらに上図の直前の後手の手を考えると、17玉が16から来たか27から来たかのどちらかです。もし17から来たとすれば、その直前の手は26との王手です。26とは37から動いた可能性しかありませんが、36飛の利きが通っていていてはいけないので、26とは26の地点にあった後手の駒を取ったはずです。しかし、上図で先手に持駒はないので矛盾します。よって、上図の17玉は16からは来ていないことが分かりました。つまり、上図の17玉は27から来ました。

出題図の27玉は17から来たと仮定

さらに上図の直前の手を考えると、先手が16とを26に動かして王手を掛けた可能性しかありません。

出題図の27玉は17から来たと仮定

さらに上図の直前の手を考えます。もし上図の27玉が37から来たとすれば、その直前の先手の手は36飛です。36飛と指す前に34飛が37玉に王手を掛けていてはいけないので、36飛は駒取りのはずです(攻方透明駒が18桂に確定しているので、35に攻方透明駒がいる可能性が消えていることに注意)。しかし、上図で攻方の持駒がないことに矛盾します。よって、27玉が37から来た可能性はありません。したがって、上図の直前の手は17から玉を27に動かす手です。

出題図の27玉は17から来たと仮定

上図は出題図から5手逆算した局面ですが、これは出題図から1手だけ逆算した局面と同一です。よって、出題図からの逆算は玉とと金が往復する順しかありません。一方、出題図は実戦初形から到達可能であるという仮定から、出題図からうまく逆算すれば実戦初形にすることができるはずなので、矛盾が生じました。この矛盾は出題図の27玉が17から来たと仮定して生じたので、「出題図の27玉が17から来た」という仮定が間違っていたことが分かりました。

再掲

したがって、出題図の27玉は37から来た可能性しかありません。

上図の1手前は先手の36飛ですが、この手が不整合なく成立するのは以下の場合です。
① 攻方の透明駒が35にあった(36飛は盤上の移動でも駒打ちでもよい)
② 受方の透明駒が36にあって、盤上の飛車がそれを取った

上図の76飛の配置はあくまでも一例です。ともかく、出題図の直前の手が37玉を27に動かした手である可能性があり、比較的自由に逆算を続けることができます。

出題図での攻方透明駒の所在について、
 ①:35の地点
 ②:駒台
となります。

以上より、冒頭に記載した「攻方の透明駒は35の地点か駒台のどちらかにある」ということが分かりました。

ちなみに、初手Xは盤上の移動に限れば35馬を動かす王手しか可能性がないので詰みますが、上記の②の可能性があるため詰んでいません。

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