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WFP第187号を読んで

WFP作品展

前口上

「玉のない詰将棋」の話。

詰みではなくステイルメイトや千日手が目標の場合、非王手可の条件を付ければ玉は無くても困りません。実際、『笑える将棋作品展』 に玉が一切登場しない詰将棋を投稿しました。

現時点で公開されている fmza では、「非王手可」の条件と「ステイルメイト」や「千日手」を併用することはできませんが、今後のバージョンアップで可能になるようです。

フェアリー詰将棋で登場する目標は詰み、ステイルメイト、千日手がポピュラーですが、やろうと思えば何でも目標にできます。例えば……

  • 歩を成る

  • 先手玉が51の地点に到達する(つまりトライ)

  • 特定の駒を取る

  • 駒柱を作る

「非王手可」というフェアリー条件に触れると、フェアリー詰将棋・推理将棋・将棋パズルを明確に区別することは本質的ではないと思い至ります。

すべてがフェアリー詰将棋!

158-4

自作。かなり難しいと思いますが、手順に一定の納得感はあると思います。

Fairy of the Forest #76 解答発表

76-03 三角淳 協力詰 93手

ピンされた攻方馬をライン上で動かし、少しずつ局面を変化させていく作品。

2手目46玉を指した局面で、もし37桂と19香がなければ、73馬、45玉、63馬と進めて収束に入れます。

37桂と19香を消去するためには、2手目46玉の局面で受方47と・受方38馬・攻方65歩の3枚が邪魔。そして、65歩を消去するために設置した56歩も邪魔になるのでこれも消す必要があります。

邪魔駒の37桂と56歩は元々配置されていた駒ではなく、手順の中で打った駒です。特に、初手に打った37桂が消えるのは26手目であり、すぐには消去できないのが面白いです。

特筆すべきは受方38馬のどかし方。下図は26手目37玉の局面です。

ここからやりたいことは、73馬・83馬の往復で王手しつつ、受方玉を右上図の矢印のように動かして19香を消去することです。しかし、受方38馬がそのルートを塞いでいるので、玉を26に移動させて「27歩、同馬」の交換を入れる必要があります。

しかしながら、左上図から73馬、26玉、27歩、同馬と進めた場合、攻方の馬の位置が悪いため馬で王手ができなくなります(左下図)。これを解決するには、右下図の矢印のように遠回りする必要があります。

具体的には、右上図から
73馬、47玉、83馬、46玉、
73馬、45玉、63馬、35玉、
53馬、25玉、43馬、26玉(左下図)、
27歩、同馬、53馬(右下図)
と進めます。

右上図で37玉は、これもまた馬での王手ができなくなるので、逆回りで37に戻る必要があります。

37玉がわざわざ遠回りして26に移動し、復路も遠回りして37に戻ります。

こんなにも面白い趣向手順が簡潔な配置とルールで実現できるとは!

ちょっと早い2024年年賀詰作品展 結果発表

第6番 たくぼん 強欲協力自玉詰 44手

「たつ」から「1」の立体曲詰で、しかも煙詰。

強欲ば自で煙らすのは作ってみたいのですが、こんなにうまいこと逆算できないんですよねぇ。。

今月の手筋

「残夢剣」は目を引く命名。名前だけを考えると、「残夢剣回避」や「残夢剣拒否」が頭に浮かびますが、いい感じの図は得られていません。

透明駒コンクール 結果

(3)springs 協力自玉詰 4手(透明駒 1+1)

普段はそこまで丁寧に投稿用紙は書かないのですが、透明駒のように機械検討できないルールの場合は、完全性の説明も投稿用紙に書くようにしています。

(8)久保紀貴 協力自玉詰 10手(透明駒 5+0)

詰工房で図を見せていただいたと思うのですが、ちょうど席を外していて解答を聞けていませんでした。

透明駒にまだこんなアイデアが眠っていたとは!

(9)馬屋原剛 詰将棋 17手(透明駒 1+0)

41X、同玉、63馬で、何を合駒しても早く詰むと思ったら透明駒合があった!

すぐに41Xとせずに1歩捨ててから41Xとする狙いも面白いのですが、54歩の配置で作意と3手目54馬の紛れを切り分けている点や、43の地点が空いているから43桂・43飛の可能性が生まれている点も面白いと思いました。

レトロ雑記

課題:不確実な局面

レトロ協力詰では基本的に攻方王手義務を前提に逆算する必要があります。攻方の手を戻すときは、王手を解除するように戻し、受方の手を戻すときは、受方玉が王手にさらされるように手を戻します。

よって、出題図でまず攻方の手を戻す場合、出題図では受方玉に王手が掛かっている必要があります。

普通のレトロ協力詰の場合、出題図からまず攻方の手を戻すのにも関わらず、出題図で受方玉に王手が掛かっていなければ、問題に不備があることになります(不詰)。

ところで、現局面のある駒の利きやある着手の合法性が過去の局面に依存するようなフェアリールールがあります。駒全マネ禁や駒全マネ取禁、All-in-Shogi がそうです。直前の指し手次第で、可能な着手が変わります。

レトロ協力詰は着手を戻すので、上記のルールと組み合わせたときに何か不都合が起きそうな気もします。しかし、個人的には特に困ったことは起きないのではないかと思います。

WFP作品展の場合、注釈なしで作品が出題されたときのルールの解釈の仕方が明示されています。例えば、特に指定がない限りは初形局面の合法性の判定に逆算可能性を要求しません。原則、出題図の初形に要求される事項は以下の通りです:

[初形に対する省略時条件]

  1. 攻方手番であること

  2. 標準の駒種、駒数であること

  3. 二歩・行き所のない駒がないこと

  4. 手番でない方の玉に王手が掛かっていないこと

上記の考え方を参考に、特に指定されない限り、初形の局面はポンっと突然与えられた局面であり、過去の指し手は存在しないとしてみましょう。そうすれば、駒全マネ禁や駒全マネ取禁、All-in-Shogiを使用した作品の初形局面で、駒の利きや着手の合法性が定まらない状況は起きません。

では、話題に上がっている局面を見てみましょう。

a)の初形は受方の手番です。13銀により受方玉に王手が掛かっています。

b)の場合、初形は攻方の手番です。「初形に対する省略時条件」の4の通り、初形で受方玉に王手が掛かっていてはいけません。これを満たすには、受方の銀の着手を戻すような逆算をする必要があります。実際、例えば11銀を駒台に戻す逆算をすれば、逆算図から受方が11銀を打って初形に至ったので、b)の初形では受方玉に王手が掛かっていません。

上図は、盤面は同一なのに手番が異なるだけで、ある駒の利きの有無が変わり(王手が掛かっているかどうかが変わる)例になっています。

駒全マネ取禁ルールだけでは、特に指定されない限りは初形局面から遡って考えない(と決めた)ので、手番の違いで着手の合法性が変わることはありません。

しかし、駒全マネ取禁とレトロ協力詰が組み合わさると、初形局面の1手前の局面を考えざるを得ないので、初形局面における着手の合法性が変わることがあるわけです。

第20回フェアリー入門 出題

安南協力詰 11作、安南詰 2作の計13作の出題です。安南詰が少なかったので、自作を追加しています。

協力詰・協力自玉詰 解付き #20

20-1 駒井めい 協力詰 5手

一瞬、11王→21で32歩が省けるかと思いましたが、そうすると龍がそっぽに行く手がなくなってしまうのですね。

20-2 springs 協力自玉詰 6手

ピンされている攻方駒の交換。

最初は右下隅で 馬→龍 や 龍→馬 を作ろうとしていたのですが、うまくいかなかったので 12角→13金 になりました。位置も駒種も変わっているので、できればどちらかは同じにしたいですね。

似たようなテーマに Blocking piece replacement があります。ば自でやってみたことがあります。

出口信男の修正図(6)(7)

出口信男 Kマドラシ協力詰 17 手

15パズルのように駒がスライドして鶴の巣ごもり。楽しい。

実験室の悲劇(第24回)

今年は『詰将棋年鑑 2022-2023』の Judge と「暁フェアリー」の担当業務に加え、支部主幹の大会で懸賞出題するフェアリーの準備もあるので休む暇がなさそうです。

>支部主幹の大会で懸賞出題するフェアリー
え!!!!!!!!

【第一部】試作 占魚亭 点鏡協力自玉詰 6手(ツイン)

攻方の右王は左王にして、受方の左王は右王にするツイン。

一見、右左を入れ替えただけに見えますが、結構手順が変わって面白いです。

衝立推理の紹介(誤植修正版)

衝立推理とは大雑把に言うと、先手から見た衝立将棋の棋譜が与えられ、そこから一局すべての棋譜を復元するパズル。

推理将棋の場合、条件を組み合わせて手順を一意にしますが、衝立推理の場合は棋譜をいじって手順を一意にすればいいので、推理将棋に比べてコントロールしやすいように感じました。

本質的に推理将棋や Proof Game ではできないが、推理将棋では可能なことを考えてみたいですが、そのためには衝立将棋や衝立詰に慣れる必要がありそうです。

使わなかった作品展

No.1 占魚亭 協力詰 5手(3解)(Queen 1+1)

確かにフェアリー入門にピッタリでしたね……!

「詰将棋メーカー」好作選(2023年11・12 月)

ルール説明だけで2ページあって、フェアリーの多様性を感じます。

普通詰将棋の詰将棋メーカー好作選もそろそろ考える段階なのかもしれないなぁと思ったりしています。

NK2協力詰超短編の研究

カピタンの初出は通巻2号(1976年8月)で、フェアリー詰将棋のルールの中でもかなり古い方です。駒の位置関係が変わればそれに応じて、くるくると駒の性能が変化するわけで、猫の目のように変わり身が早いことからネコネコの名称がついたと紹介されています。

猫の気まぐれな性格がネコネコ鮮というルール名の由来だと予想していましたが、猫の目だそうです。

超短編双玉詰将棋コンクール 協力詰部門の作品紹介

springs 協力詰 4手(受先、2解)

作り直さなきゃなぁというのを思い出しました。

年賀詰紹介

4.金少桂

うまい出題方法ですよねぇ。楽しめました!

緩募!ナンマイダ~コンテスト(再掲)

部門A(標準駒数)は結構キツそうで、個人的には神無三郎さんの図を待ち気味。

部門Bに希望がありそうですが、私は煙らす力が足りないので、誰か煙つよつよの方お願いします。。

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