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ネコ鮮・ネコネコ鮮の改名について

ネコ鮮・ネコネコ鮮というフェアリールールの名称を考え直す機会が来たようです。

さんじろうさんは WFP第187号・188号 にてネコネコ鮮協力詰の作品群を発表されていますが、そこでは「鮮」を省いて「ネコネコ協力詰」、または「NK2協力詰」とルール名を記述されています。

名称に「鮮」という語が残っているルールは、最早ネコ鮮とネコネコ鮮しかありません。確かに「鮮」という一字は、無ければ無いで困らないと思います。

追記
さんじろうさんが「ネコネコ協力詰」や「NK2協力詰」のように記述されていたのは、「鮮」は無くても困らないから省くという意図ではなく、「鮮」という字がルール名に使われた推定理由から、「鮮」という一字をルール名から何とかなくしたいという意図でした。

WFP第188号に掲載されている第157回WFP作品展の解説にて、神無七郎さんはネコネコ鮮の改名案を挙げています。

まず、安X(安南、安北)やX面(対面、背面)に比べ、ネコネコ鮮は名称からルールの内容を類推するのが難しいという問題があります。安XやX面だけでなくネコネコ鮮も、共通した性質を持つルールであれば共通性のある名称にしたいというわけです。

ネコネコ鮮では、縦に並んだ駒はその所属を問わず性能が変わります。敵味方関係なく、いくつかの駒が所定の位置にあれば性能が変わるというのは、ネコネコ鮮と点鏡に共通しています。それゆえ、ネコネコ鮮と点鏡は同じルール群に属するとし、具体的な名称案として「ネコ鏡」という案を挙げられています。

つまり、安X、X面、X鏡を下記のように定めるという案です。

  • 安X:所定の位置関係にある味方の駒から利きを写し、現在の利きに置き替える

  • X面:所定の位置関係にある相手の駒から利きを写し、現在の利きに置き替える

  • X鏡:所属とは無関係に所定の位置関係にある駒から利きを写し、現在の利きに置き替える

ネコネコ鮮を「ネコ鏡」と呼ぶなら、ネコ鮮は「安ネコ」になりそうです。

所属不問を表す接尾辞として点鏡の「鏡」を使うのは、個人的には違和感がありました。そこで、ネコ鮮・ネコネコ鮮を含め、能力変化系のルールの名称を再考してみようと思います。

まず、性能変化が起きるときの「位置関係」に着目した分類も考えられそうな気がしました。安南や対面は駒同士の局所的な位置関係で性能変化の仕方が決まりますが、点鏡は駒同士の局所的な位置関係では性能変化の仕方は決まらず、全域的な位置情報が必要です。

つまり、例えば下のような部分図を見せられたとき、安南なら王の性能が銀になっていると分かります。また、下記の駒たちを盤上でどのように平行移動したとしても、性能変化の仕方は変わりません。

安南

しかし下図で点鏡と言われても、王や銀の性能が変化するかどうかは判断できません。全体図を見て、「54王・56銀」の配置なのかどうかを知る必要があります。また、下記の駒たちを平行移動すると、性能が変わったり変わらなかったりします。

点鏡

ネコ鮮・ネコネコ鮮に限らず、性能変化系のルール名の抜本的な変更を視野に入れ、「所属」と「位置関係」の二軸で現存のルールを分類すると下表の通りとなります。ただし、下表ではすべてのルールを記載しているわけではありません。

6グループに分けられました。それぞれに適する接頭辞または接尾辞を決めればOKですね。

「安」は味方同士でなんだか安全な雰囲気が出ています。「面」は敵同士で相対している雰囲気があります。「安」と「面」はそのまま使えそうです。

しかし「鏡」はどうでしょう。所属を問わないことをこの一字に託せるでしょうか?

「点鏡」は、5五の地点について点対称の位置にある駒同士の利きが入れ替わるルールです。「点」も「鏡」も、性能が変わる駒同士の位置関係を説明しています。

少し話は変わりますが、プロブレムには「Circe Power Transfer」というフェアリールールがあります。

Circe Power Transfer
A unit (except a king) moves as the unit occupying its home square at the time (if such a unit is present).

THE FAIRY CHESS CLASSIFICATION (V.0.2, 30.07.2021)

詰将棋用に考えれば、例えば19の地点に銀(所属は問わない)があるとき、盤面右半分にある攻方の香は銀の利きに変わる、というものです。Circe Power Transfer は先ほどの表では点鏡と同じグループに分けられますが、これを「~鏡」と名付けたいとは思いません。

しかしながら、6種類の接頭辞・接尾辞を考え、そしてさらにそれを使っていくというのは現実的ではないと思います。そこで、下記の命名規則はいかがでしょうか。

局所的な位置関係で性能変化の仕方が決まるルールについてのみ、接頭辞・接尾辞を決めます。所属不問で性能が変わる場合は「鮮」を使うとします。

人間から見れば「鮮魚」に敵も味方もない、というこじつけを用意しています。もっと良いこじつけ、もしくはもっと良い接頭辞・接尾辞がありそうな気はします。何か思いついた方は是非お知らせください。

「安」「面」「鮮」の意味を明確にしたので、例えば「安南」の変形として「南面」や「南鮮」が自然に考えられます。

目下の問題はネコ鮮とネコネコ鮮。代わりに「縦折」という言葉を使って
 ネコ鮮 → 安縦折
 ネコネコ鮮 → 縦折鮮
とするのはどうでしょうか?
省略して「安縦」「縦鮮」としても良いかもしれません。

縦に連なった駒たちを下図のように半分に折り、重なった駒の性能が入れ替わるというイメージです。

「縦折」は「横折」という新ルールへの自然な類推を意識しています。

縦折・横折ではどっちがどっちだか分かりにくいという問題がありそうですが、縦折りスマホと横折りスマホを思い浮かべればよいかと思います。

縦折りスマホの一例
https://www.samsung.com/jp/smartphones/galaxy-z-flip5/buy/

横折りスマホの一例
https://www.au.com/mobile/product/smartphone/scg22/


「縦折(縦)」「横折(横)」の導入と「安X」「X面」「X鮮」の再定義を行いました。これらによって何か不都合が生じていないかを確認するために「安X」などの「X」の分類も行い、駒の局所的な位置関係によって性能が変化するルールの全体を見渡しておきましょう。

まず東西南北があります。

  • :1マスに駒があると、その駒の利きになる。

  • 西:1マスに駒があると、その駒の利きになる。

  • :1マスに駒があると、その駒の利きになる。

  • :1マスに駒があると、その駒の利きになる。

「安北2」のようなルールがあります。安北は1マス上の駒を参照しますが、安北2は2マス上の駒を参照して駒の利きが変化します。

  • 東nマスに駒があると、その駒の利きになる。

  • 西nマスに駒があると、その駒の利きになる。

  • 南nマスに駒があると、その駒の利きになる。

  • 北nマスに駒があると、その駒の利きになる。

例えば「北 = 北1」です。

安騎や騎面に使われる「騎」。ある駒を起点として特定の位置を指しています。位置を駒の利きで示していると考えれば、任意の駒に拡張できそうです。

  • :駒Aの利きは、駒Aから八方桂の位置にある駒の利きになる。複数ある場合はそれらを合成した利きになる。

  • :駒Aの利きは、駒Aがいるマスから駒Pが利く位置にある駒の利きになる。複数ある場合はそれらを合成した利きになる。

ちょっと立ち止まって考えると、P=Aの方が自然なルールに感じます。つまり、上記は下記の拡張だと思えます。ただしルール名は仮です。

  • :駒Aの(本来の)利きに駒があるとき、駒Aの利きはその駒の利きになる。複数ある場合はそれらを合成した利きになる。

次は対面、背面について考えてみましょう。対面と背面は、以下のように言い換えることができます。

対面:駒Aの敵駒があるとき、駒Aの利きはその駒の利きになる。
背面:駒Aの敵駒があるとき、駒Aの利きはその駒の利きになる。

したがって、対面=南面、背面=北面  対面=北面背面=南面 です。
向かい合うこと(対)や背中合わせであること(背)は、並んだ駒の所属が異なるときにだけ意味を持つので、東西南北を使用した方が汎用性があります。

今回新たに名前を考えた「縦折(縦)」「横折(横)」は下記の通りです。

  • 縦折に2つ以上の駒が隣接したとき、それらの駒の利きは線対称に入れ替わる

  • 横折に2つ以上の駒が隣接したとき、それらの駒の利きは線対称に入れ替わる

以上より、既存の性能変化系のルールのうち、駒の局所的な位置関係で性能変化の仕方が決まるもの(安X、X面、ネコ鮮、ネコネコ鮮など)は、1つ以上の 東n、西n、南n、北n、P(Pは駒名)、射、縦折、横折 と1つの 安、面、鮮 を組み合わせて表現できます。

下表の赤字は名称に差異がある既存のルールです。 

現時点で気になっている点をまとめると以下の通りです。

  • 所属不問を表す接尾辞「鮮」の代替案は無いか。所属を問わない場合、「安南面」のように「安」と「面」の両方を付けるのでもいいかも。もしくは何も付けずに「南」としたときは所属不問とするか。

  • 「安」だけ接辞で「面」と「鮮」は接辞だが、統一した方がいいか。

  • 上表をすべて適用すると、慣れ親しんだ「対面」や「背面」が廃止または別名の扱いになる。「ネコ鮮→安縦」、「ネコネコ鮮→縦鮮」だけの改名に留めた方がいいか。

  • 「点鏡」のように、局所的な位置関係では性能変化の仕方が決まらないルールに関する命名は個別に決めるのでいいか。個別に命名することにして、「安点鏡」「点鏡面」「点鏡鮮(=点鏡)」とするのでもいいかも。

ご意見、ご感想などございましたら、コメントやTwitter、メール等でご連絡いただけますと幸いです。

追記

所属不問を「全X」で表し、ついでに敵同士を「対X」で表すことにすれば、すべて接頭辞に統一できます。
安南対南全南 の要領です。これは結構いい感じな気がします。

表にすると下記の通りです。

所属不問の場合は接頭辞なしにすると、点鏡ルールと整合性が取れます。
安南対南の要領です。色々考えましたが、現時点では私はこれがよいと思います。

ネコ鮮・ネコネコ鮮をどのようなルール名に変えるとしても、「鮮」という字を使わないのが必須条件だと思います。

私はさらに、性能変化系のルール名の命名規則まで決めたいと思っています。安南、対南、南のように接頭辞を使うことにすれば、性能変化系のルール名称は下記の構文図に従うことになります。

ただし、上図の「基本ルール」は駒の所属に依存しないようなルールとします。

そして、新しい性能変化系のルールを考えることは、

  • 新しい「基本ルール」を考える

  • 新しい「駒の所属に関するオプション」を考える

  • 新しいオプションを考える

のいずれかになります。

最後の「新しいオプション」について例を挙げます。例えば安南は下記で説明されるルールです:

【安南】
駒Aの1つ下に味方の駒があるとき、駒Aの利きはその駒の利きになる。

安南では、駒Aの利きが真下の味方の駒の利きで上書きされます。「上書き」ではなく利きを「追加」するルールを考案したとしましょう:

【ルール名称未定】
駒Aの1つ下に味方の駒Bがあるとき、駒Aの利きはAとBを合成した利きになる。

将来にわたって性能変化系のルール全体で整合性を取るためには、上記のルールに名前を付けるのではなく、「利きを追加する」というオプションを設けるべきです。

構文図は下記の通りとなります:

つまり、考案したルールは下記になります:

【加安南】
駒Aの1つ下に味方の駒Bがあるとき、駒Aの利きはAとBを合成した利きになる。

このように、性能変化系のルールを命名する際の基準を定めて運用すれば、ルール間で名称に不整合が起きるのを防止することができます。

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