ライフル協力詰の例と細かい解説
新ルール「ライフル」の検討がfmzaでできるようになったので、1図作ってTwitterにアップロードしました。Twitterでは略解のみでしたので、noteで詳しい解説を試みます。
ライフルルールだけでなく他のルールの理解に役立つ考え方に触れながら、最終的には本問の解答手順を理解することを目標とします。
まず最初に問題と略解を記します。
問題
ライフル協力詰 5手 2解
【協力詰】先後協力して最短手数で受方の玉を詰める。ただし、透かし詰は詰みとは認められない。
【n 解】解が複数あり、指定された n 個の解を求める出題形式。
【ライフル】駒を取ったとき、取った駒が元の位置に戻る。
1) 駒取り時、駒が戻るまでを一手とみなす。駒を取った瞬間だけ「自玉への王手」となったり、「行き所のない駒」になったりしても構わない。
2) 生駒による駒取りで「現位置」「駒取り地点」のいずれかが可成地域にある場合、成・不成を選択できる。
ライフルルールの詳細:
http://k7ro.sakura.ne.jp/rifle.pdf
解答
(解1)31飛成、52玉、41角生、51玉、52角成迄
注:生=不成
(解2)82飛生、31玉、32飛生、41玉、42飛成迄
少し遠回りする解説(駒を取る)
一旦ライフルのことは忘れて、「駒を取る」ことと「詰み」について見つめ直します。
将棋や普通詰将棋で「駒を取る」ときに起きていることを細分化します。攻方の駒Aが玉方の駒Bを取るとき、駒を取る着手は下記から構成されます。
(0)(前提)駒Aの利きに駒Bがあるとき、駒Bを取れる
(1)駒Bが攻方の駒台に移動する
(2)駒Bが居たマスに駒Aが移動する
(3)駒Aが成れる駒であって、駒Aの移動前のマスまたは駒Bが居たマスが可成地域の場合、駒Aの成/生を攻方が選択する
大雑把に言うと、駒取りの際には「取られる駒の移動」と「取る駒の移動」が一手として行われます。
上記のうち(2)のみを下記の通り変更したルールがライフルと言えます。
(0)(前提)駒Aの利きに駒Bがあるときに駒Bを取れる
(1)駒Bが攻方の駒台に移動する
(2)駒Aは移動しない
(3)駒Aが成れる駒であって、駒Aの移動前のマスまたは駒Bが居たマスが可成地域の場合、駒Aの成/生を攻方が選択する
駒取り前後で駒Aの位置は変わりません。同じことですが、通常ルールの駒取りの感覚に寄せて表現すると、
(2)駒Aは駒Bの居た位置に移動し、すぐに元の位置に戻る。
となります。
脱線しますが、(1)を変更したフェアリールールに例えば「キルケ」、(2)を変更したルールに「アンチキルケ」があります。
では、具体的にライフルルール下で攻方14歩が玉方13金を取る場合を確認しましょう。
(0)前提として、14歩は前に1マス進めるので13金を取ることができる
(1)13金を取ると、金は攻方の持駒に移動する
(2)14歩は13に移動し、すぐに14に戻る(つまり14から動かない)
(3)14歩成または14歩生を選べる
歩を成った場合と成らなかった場合の、着手前後の局面は下記の通りです。
13歩成/14と
13歩生/14歩
なお、駒を取る着手は「/」を用いて「駒を取る移動/戻る移動」と表現します。「13歩成/14と」で一手を表します。
少し遠回りする解説(詰み)
次に「詰み」の定義を再考します。
通常ルールで下図は詰みです。なぜならば、いかなる玉方の手も王手を外すことができないからです。
フェアリールールでも適用できるように、「詰み」を正確に定義しようとすると、下記のように書けます。
下記を満たすとき、玉方の玉は詰みである。
(0)玉方の手番である。
(1)玉方の玉に王手が掛かっている。
(2)玉方に合法手が存在しない。
同じことですが、(2)は「玉方に王手を外す合法手が存在しない」と言った方が分かりやすいかもしれません。
結局王手を外せなければ詰みなのですが、ルールが複雑になると詰みかどうか混乱する場合があり、そのときは定義に立ち返ると頭を整理できると思います。
では、ライフルルール下の詰みを考えてみましょう。
例えば左下図は普通詰将棋では詰みですが、ライフルルールでは詰みではありません。なぜなら、「12玉/11玉」で金を取れるからです。その場に居たまま駒を取るので「居食い」と呼ばれることもあります。
次に、冒頭の問題の解1の詰め上がりを確認しましょう。下図の通り、馬と龍の両王手になっています。もし馬を取ると玉は51の地点に戻るので(52玉/51玉)、龍による王手を外せていません。他の手も王手を外すことができないので詰みとなります。
52馬に紐が付いていなくても詰みになるのは通常ルールとかなり感覚が異なりますね。
解2の詰め上がりも両王手の詰みの形です(詳細は省略)。
ここまでの考察から、ライフルルールでは、「居食い」されても王手が継続されることが詰みに必要だと分かります。つまり、ライフルルールではほとんどの場合下記3パターンの詰みの形になります。
(1)両王手
(2)王手駒を支える線駒も間接的に王手している
(3)桂吊るし
注:線駒=飛、角、香
(1)(2)は玉に居食いされても王手が継続します。(3)はそもそも居食いができません。
(1)と(2)をまとめて「重複度が2以上の王手」と言った方がいいかもしれません。
詰み?詰みじゃない?練習問題
ライフルルールの詰みに慣れるための練習問題(3問)を用意しました。ライフルルールでそれぞれ詰みでしょうか。答えはコメント欄に記載します。
問題1
問題2
問題3
冒頭の問題の解説
冒頭の問題に戻ります。
ライフル協力詰 5手 2解
ここまで読まれた方なら、「82飛成、31玉、32龍」では詰んでいないことが分かるかと思います(32玉/31玉で不詰)。
ライフルルールの詰みの3パターンを思い出しましょう。5手しかないのでできることは限られており、実は両王手で詰ますしかありません。そしてさらに、両王手ができる手順は下記の2つしかありません。
(解1)31飛成、52玉、41角生、51玉、52角成迄
(解2)82飛生、31玉、32飛生、41玉、42飛成迄
最後に
第135回WFP作品展にてライフルの出題が予定されています(2021/9/20)。ぜひチェックしましょう!
Web Fairy Paradise:
http://www.dokidoki.ne.jp/home2/takuji/wfp.html
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